ナンカイイタチシダ
オシダ科 オシダ属 Dryopteris varia
生育している環境:上部はタブノキの大木の樹冠に覆われ南側が開けた明るい、乾燥気味の急斜面に1株生育。付近にはほかのホシダ・オオイタチシダの仲間も生育。
観察された特徴:葉柄基部には披針形~糸状、赤味を帯びた黒褐色の鱗片が密に生える。葉の大きさは40~50㎝、葉は厚く光沢が無い(※光沢のある個体もあるそうです)。羽片は基部は広いがその後急に細長く伸び、先のほうは一般に鎌形に曲がらない。最下羽片後側(下側)基部小羽片は発達する。展開したばかりの葉は紅色を示す。胞子のう群は中間につき、包膜は白色。
ナンカイイタチシダには2倍体有性生殖種と3倍体無融合生殖種がある。今回顕微鏡下では観察した胞子嚢8個のうち7/8個体が胞子数は28~32個、1/8個体が60個程度確認できた。胞子数が28~32個のものは胞子の大きさ・形は整い、無融合生殖種と言える。
生育確認数:1地点。1株。大磯町 高麗山。
(1)海を見下ろす乾燥気味の斜面に生育するナンカイイタチシダ
(2)ナンカイイタチシダ、葉柄基部の鱗片
(1)胞子数32個程度・形が整っているナンカイイタチシダの胞子
(2)胞子数60個程度・胞子大小あり・いびつな形が混ざるナンカイイタチシダの胞子
(1)ナンカイイタチシダ、胞子を上から見た形
(2)ナンカイイタチシダ、胞子の横の形
以下の前葉体画像については観察会同行の方が栽培・撮影・解説されているものです。
胞子を採取した葉 2017年2月19日
(1)ナンカイイタチシダ、羽片裏側
(2)ナンカイイタチシダ、胞子嚢群
2017年2月22日播種
2017年7月24日 前葉体確認
2017年7月24日 ナンカイイタチシダ前葉体。 観察
もじゃもじゃ状態です。
2017年8月30日 前葉体
2017年8月30日 ナンカイイタチシダ前葉体。 観察
もじゃもじゃの先端が前葉体風に変化してきています。
(2)ナンカイイタチシダ、前葉体から成長する胞子体?
(3)ナンカイイタチシダ、前葉体から成長する胞子体?
2017年12月23日 胞子体確認
(1)ナンカイイタチシダ、前葉体から発芽した胞子体
2018年5月12日 観察
沢山出てきているので、近々植え替えてみます。
2018年8月12日 観察
(1)ナンカイイタチシダ1
(2)ナンカイイタチシダ2
2018年11月11日 観察(植替え)
(1)ナンカイイタチシダ1
(2)ナンカイイタチシダ2
2019年7月15日 観察
(1)ナンカイイタチシダ1
(2)ナンカイイタチシダ2
表面が緑色に覆われてきたので、表面だけ水苔を入れ替えた。
2020年5月20日 観察
(1)ナンカイイタチシダ1
(2)ナンカイイタチシダ2
2020年8月17日 観察
(1)ナンカイイタチシダ1
(2)ナンカイイタチシダ2 観察対象外(右)で胞子葉(矢印)が確認できた。
(1)ナンカイイタチシダ3 胞子葉(矢印)の裏側。
(2)ナンカイイタチシダ4 胞子葉(矢印)の裏側。拡大。
(1)ナンカイイタチシダ5 透過光で見ると、熟している胞子嚢はまだ少ない。
胞子嚢5個の胞子数を数えた所、すべて32個でした。
(1)ナンカイイタチシダ胞子数1
(2)ナンカイイタチシダ胞子数2