岩上に群生するノキシノブの仲間(小形で葉の先が尖っている)。岩の上から見下ろして撮影。2019年7月31日 奥多摩 倉沢

 5月に歩いた奥多摩 倉沢を再訪しました。偶然シダの会の方と一緒になり、楽しくシダを見て歩きいました。
今回の目的は、5月に歩いたときに見つけたイワイヌワラビ、クラサワヘビノネゴザ(イワイヌワラビ×ヘビノネゴザ)、アイハリガネワラビアオハリガネワラビの胞子を採取することでした。5月の時点ではやっと胞子嚢群をつけたばかりで、まだまだ胞子を観察できる状態ではありませんでした。
 胞子観察の結果、イワイヌワラビは有性生殖種で同地点に生育するヘビノネゴザとは胞子の形状が異なりました。同地点に生育する大形のクラサワヘビノネゴザ(イワイヌワラビ×ヘビノネゴザ)およびアイハリガネワラビアオハリガネワラビは雑種でした。クラサワヘビノネゴザはイワイヌワラビとヘビノネゴザの雑種と推定されます。倉沢岩茸石山のアイハリガネワラビアオハリガネワラビは、いままで観察してきたアイハリガネワラビ(ハリガネワラビ×イワハリガネワラビ)と外観が多少異なりますが、ハリガネワラビとイワハリガネワラビの雑種と推測されます。
※研究者の方からアイハリガネワラビは雑種なので葉柄が緑軸のもの~赤褐色を帯びるものまで見られる可能性がある、とのご指摘を頂きました。2019年8月



アイハリガネワラビ(アオハリガネワラビtype)について
ハリガネワラビとイワハリガネワラビの雑種と推定される。胞子は乱れており雑種と考えられる。いままでアオハリガネワラビと呼んでいたがアイハリガネワラビ(アオハリガネワラビtype)とする。

緑軸の葉柄に黒褐色の鱗片がやや密につく。胞子嚢群は中間につき、包膜上には腺点のような突起と毛が確認できる。付近にはハリガネワラビ・イワハリガネワラビが生育。いままでアイハリガネワラビとして記載していたものとは外観がやや異なる。
アイハリガネワラビ。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 葉柄は黄緑色。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
(1)アイハリガネワラビアオハリガネワラビ
(2)アイハリガネワラビアオハリガネワラビ、葉柄

アイハリガネワラビ、包膜上には腺点と毛の両方が見られる。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 アイハリガネワラビ、包膜上には腺点と毛の両方が見られる。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
アイハリガネワラビアオハリガネワラビ、包膜

アイハリガネワラビ、胞子数は60個以上確認できるが胞子が乱れており雑種と言える。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 アイハリガネワラビ、胞子数は60個以上確認できるが胞子が乱れており雑種と言える。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
(1)(2)アイハリガネワラビアオハリガネワラビ、1つの胞子嚢を壊したようす

アイハリガネワラビ、胞子の大きさは乱れ、大小に分かれる。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 アイハリガネワラビ、胞子の大きさは乱れ、大小に分かれる。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
(1)(2)アイハリガネワラビアオハリガネワラビ、胞子のようす

アイハリガネワラビ、胞子の大きさは乱れ、大小に分かれる。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 アイハリガネワラビ、胞子の大きさは乱れ、大小に分かれる。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
(1)(2)アイハリガネワラビアオハリガネワラビ、胞子のようす





イワイヌワラビについて
 現地では200株以上が1つの崖胞に群生してる。葉の形は細い紡錘形で、近づいてよく見なければ一緒に生えているフクロシダとそっくりである。その群生の中にはヘビノネゴザも生えている。葉柄基部の鱗片には中央に栗色が入る。葉は20~45㎝、細い紡錘形、柔らかく黄緑色。包膜は膨らみ辺縁は全縁~鈍鋸歯。
春先のようす
 胞子観察を観察した結果、ヘビノネゴザとは異なりイワイヌワラビであると考えられる。ただし、ほかの地域に生育するイワイヌワラビの胞子を観察したことがない。胞子はすべて形が整い、胞子数は60個程度確認でき有性生殖種。胞子の表面には多数のリボン状の襞が見られる。(ヘビノネゴザの胞子と比較すると、胞子葉大きく、胞子表面のリボン状の襞が多い)

ウエットな崖に生育するイワイヌワラビ。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 ウエットな崖に生育するイワイヌワラビ。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
(1)(2)ウエットな崖に生育するイワイヌワラビ

ウエットな崖に群生するイワイヌワラビ。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 左からフクロシダ・イワイヌワラビ・ヘビノネゴザ。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
(1)ウエットな崖に群生するイワイヌワラビ
(2)一緒に生育しているフクロシダ・イワイヌワラビ・ヘビノネゴザ

イワイヌワラビ、葉柄。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 
イワイヌワラビ、葉柄

イワイヌワラビ、葉柄基部の鱗片。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 イワイヌワラビ、葉柄基部の鱗片。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
(1)(2)イワイヌワラビ、葉柄基部の鱗片

イワイヌワラビ、包膜。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 イワイヌワラビ、包膜。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
(1)(2)イワイヌワラビ、包膜(コントラストと高めに編集しています)

イワイヌワラビ、胞子数は60以上あり、有性生殖種。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 イワイヌワラビ、胞子数は60以上あり、有性生殖種。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
(1)(2)イワイヌワラビ、1つの胞子嚢を壊したようす

イワイヌワラビ、胞子上面。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 イワイヌワラビ、胞子側面。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
(1)イワイヌワラビ、胞子上面
(2)イワイヌワラビ、胞子側面

イワイヌワラビ、胞子上面。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 イワイヌワラビ、胞子側面。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
(1)イワイヌワラビ、胞子上面
(2)イワイヌワラビ、胞子側面





ヘビノネゴザ
倉沢のイワイヌワラビの群落の中に生育しているヘビノネゴザ及び山梨県 北杜市のヘビノネゴザの胞子を観察した。有性生殖種。イワイヌワラビよりも胞子は小さく、胞子表面の襞は少ない。
標本1 倉沢
イワイヌワラビの群生の中に生育するヘビノネゴザ
イワイヌワラビの群生の中に生育するヘビノネゴザ。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 イワイヌワラビとヘビノネゴザ。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
(1)ヘビノネゴザ
(2)イワイヌワラビとヘビノネゴザ

ヘビノネゴザ、中軸と羽片基部の接するところには鱗片や毛が生える。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 ヘビノネゴザ、羽片裏側。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
(1)ヘビノネゴザ、羽片基部
(2)ヘビノネゴザ、羽片裏側

ヘビノネゴザ(倉沢)
ヘビノネゴザ、包膜。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 ヘビノネゴザ、包膜。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
(1)(2)ヘビノネゴザ、包膜

ヘビノネゴザ、胞子数は60個以上あり有性生殖種。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
(1)ヘビノネゴザ、1つの胞子嚢を壊したようす

ヘビノネゴザ、胞子上面。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 ヘビノネゴザ、胞子側面。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
(1)ヘビノネゴザ、胞子上面
(2)ヘビノネゴザ、胞子側面

ヘビノネゴザ、胞子上面。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 ヘビノネゴザ、胞子側面。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
(1)ヘビノネゴザ、胞子上面
(2)ヘビノネゴザ、胞子側面

参考:標本2 山梨 小淵沢
胞子の形状を確認するために北杜市小淵沢のヘビノネゴザを調べた。ヘビノネゴザ。2019年8月1日 山梨 小淵沢 
ヘビノネゴザ

ヘビノネゴザ、幼形基部の鱗片。2019年8月1日 山梨 小淵沢 ヘビノネゴザ、羽片裏側。2019年8月1日 山梨 小淵沢
(1)ヘビノネゴザ、葉柄基部の鱗片
(2)ヘビノネゴザ、羽片裏側

ヘビノネゴザ、包膜。2019年8月1日 山梨 小淵沢 ヘビノネゴザ、包膜。2019年8月1日 山梨 小淵沢
(1)(2)ヘビノネゴザ、包膜

ヘビノネゴザ、胞子数は60個以上あり有性生殖種。2019年8月1日 山梨 小淵沢
(1)ヘビノネゴザ、1つの胞子嚢を壊したようす

ヘビノネゴザ、胞子上面。2019年8月1日 山梨 小淵沢 ヘビノネゴザ、胞子側面。2019年8月1日 山梨 小淵沢
(1)ヘビノネゴザ、胞子上面
(2)ヘビノネゴザ、胞子側面

ヘビノネゴザ、胞子上面。2019年8月1日 山梨 小淵沢 ヘビノネゴザ、胞子側面。2019年8月1日 山梨 小淵沢
(1)ヘビノネゴザ、胞子上面
(2)ヘビノネゴザ、胞子側面





クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)について
切り立ったウエットな岩壁。イワイヌワラビが群生する中の生育。1株確認する。(ていねいに探せばもっと見つかるかもしれない)葉は大きく35~45㎝、紡錘形、周りのイワイヌワラビよりも葉は厚味があり、緑色は濃い。胞子嚢群は裂片の辺縁寄りにつき、包膜は鈎形~馬蹄形で盛り上がり辺縁は全縁。
春先のようす
5月の観察会で、同行の方からヘビノネゴザとイワイヌワラビ
の雑種である、とのご意見を頂いたが、胞子未熟のため確認できなかった。今回胞子を観察すると、胞子の形はいびつ・大きさは不揃いとなっており雑種と考えられる。イワイヌワラビの群生地内にはヘビノネゴザも生えており、状況から両親はヘビノネゴザとイワイヌワラビと推定できる。
クラサワヘビノネゴザ(イワイヌワラビ×ヘビノネゴザ)。2019年5月25日 奥多摩 倉沢 クラサワヘビノネゴザ、葉身。2019年5月25日 奥多摩 倉沢   
(1)クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)
(2)クラサワヘビノネゴザ、葉身

クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)、胞子を観察した葉。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 
(2)クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)胞子を観察した葉

クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)、包膜。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)、包膜。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 
(1)(2)クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)包膜

胞子標本1
クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)、胞子は歪なものや大小の大きさのものが混ざる。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 
クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)1つの胞子嚢を壊したようす

クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)、胞子は歪なものや大小の大きさのものが混ざる。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)、胞子は歪なものや大小の大きさのものが混ざる。2019年7月31日 奥多摩 倉沢  
(1)(2)クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)胞子のようす



胞子標本2
クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)、胞子は歪なものや大小の大きさのものが混ざる。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 
クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)1つの胞子嚢を壊したようす

クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)、胞子は歪なものや大小の大きさのものが混ざる。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)、胞子は歪なものや大小の大きさのものが混ざる。2019年7月31日 奥多摩 倉沢  
(1)(2)クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)胞子のようす



胞子標本3
クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)、胞子は歪なものや大小の大きさのものが混ざる。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 
クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)1つの胞子嚢を壊したようす

クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)胞子上面、胞子は歪なものや大小の大きさのものが混ざる。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)胞子側面、胞子は歪なものや大小の大きさのものが混ざる。2019年7月31日 奥多摩 倉沢  
(1)クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)胞子上面
(2)クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)胞子側面

クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)胞子上面、胞子は歪なものや大小の大きさのものが混ざる。2019年7月31日 奥多摩 倉沢 クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)胞子側面、胞子は歪なものや大小の大きさのものが混ざる。2019年7月31日 奥多摩 倉沢  
(1)クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)胞子上面
(2)クラサワヘビノネゴザ(ヘビノネゴザ×イワイヌワラビ)胞子側面





ミヤマウラジロについて
5月の観察会では出会えなかったが、今回はヒメウラジロと共にたくさんの生育を確認した。
ミヤマウラジロ。2019年7月31日 奥多摩 倉沢





葉身の先が尖ったヒメノキシノブに似た小さなノキシノブの仲間について
川のそばの切り立った巨岩の側面に生育。苔むした岩上にはヒメウラジロや葉身の先が尖ったヒメノキシノブに似た小さなノキシノブの仲間がいくつか生育。
葉身の先が尖ったヒメノキシノブに似た小さなノキシノブの仲間。2019年7月31日 奥多摩 倉沢
葉身の先が尖ったヒメノキシノブに似た小さなノキシノブの仲間