観察会の下見を兼ねて奥秩父の谷を歩いてきました。同行の方ともども初めて歩くところですがいろいろなシダに出会うことができました。この辺りは石灰岩地帯を含む中生代混在岩地帯で山を越えた南側は奥多摩に当たり同様な地質で成り立っています。
2年前の台風19号の影響によるのか、道路は傷んでおり途中で通行止めでした。
ヤマクラマゴケ
渓谷内の切り立った岩壁・岩上に見られた。岩は黒っぽかったが石灰岩を含む地質と思われる。タチクラマゴケに似るがずっと小さく、葉の先に広披針形の胞子嚢穂を1~3個つける。一緒にミヤマウラジロやクモノスシダが生育している岩場も見られた。
(1)ヤマクラマゴケ、胞子嚢穂
(2)ヤマクラマゴケ、胞子嚢穂裏側
フジシダ
渓谷内のウエットな岩壁や岩棚・岩屑の堆積のようなところに群生。今回は2地点で観察。
切り立った岩壁の岩棚のようなところに生育するフジシダ
ミヤマウラジロ
一般に石灰岩地帯に生育するシダ。一緒にヤマクラマゴケが生育していることもある。
渓谷内のいくつかの岩場に生育。生育している岩場は黒っぽい岩であるが石灰岩を含む岩石と思われる。
イワトラノオとクモノスシダ
どちらもチャセンシダ属で同行の方は雑種を探されていましたが見つかりませんでした。
イワトラノオ(オオイワトラノオ)
標本1
石灰岩地帯の岩壁に群生。葉の大きさは25~35㎝(葉身は20~23㎝)。三回羽状に分かれる。裂片は浅裂する。胞子嚢群は裂片に1~3個つく。イワトラノオが特に大きく成長したものと考えられるが、小羽片下部の裂片には短柄が確認される。
(1)イワトラノオ(オオイワトラノオ)、小羽片
(2)イワトラノオ(オオイワトラノオ)、小羽片裏側
(1)(2)イワトラノオ(オオイワトラノオ)、1つの胞子嚢を壊したようす
(1)イワトラノオ(オオイワトラノオ)、胞子1上面
(2)イワトラノオ(オオイワトラノオ)、胞子1側面
(3)イワトラノオ(オオイワトラノオ)、胞子2上面
(4)イワトラノオ(オオイワトラノオ)、胞子2側面
(1)胞子が不稔の個体、羽片裏側
(2)胞子が不稔の個体、胞子嚢群
イワトラノオ(オオイワトラノオ)、標本1(左)と標本2(右)の比較
イワハリガネワラビ
渓谷の岩壁や岩場周辺の林床に生育。
イワイヌワラビ
石灰岩を含む岩石に好んで生育するのかもしれない。ウエットな空気に包まれた渓谷沿いのいくつかの切り立った岩壁に群生。フクロシダも一緒に生育していることがあり、遠目にはよく似ているので間違いやすい。
(1)イワイヌワラビ、最下羽片
(2)イワイヌワラビ、葉柄下部の鱗片
フモトシケシダ
森の中に生える中形のシケシダの仲間。観察された個体は最下羽片はそれほど発達していない。
(1)フモトシケシダ、葉柄基部の鱗片
(2)フモトシケシダ、最下羽片
ナンタイシダ
渓谷沿いの岩場に生育。
イノデの仲間 ツヤナシイノデか
林内、渓谷沿いの岩場の薄い表土に生育。未成株で胞子をつけていなかったので名前が正確にわからない。
ミヤマノキシノブ
渓谷沿いの苔むした大きな転石上に生育。
ビロウドシダ
渓谷沿いの切り立った岩壁や道沿いの石組みに群生。
渓谷沿いの切り立った岩壁や道沿いの石組みに群生するビロウドシダ
オシャグジデンダ
渓谷沿いの苔むした大きな転石上に生育。
渓谷沿いの苔むした大きな転石上に生育するオシャグジデンダ
オオクボシダ
観察された個体はウエットな水が滴る日陰の切り立った岩壁に生育。植物体全体に黒褐色(栗色)の毛をつける。胞子嚢群は各羽片の基部に1個並んでつく。
キレハオオクボシダ
ウエットな空気に包まれた日陰の切り立った岩壁に10株程度点在して生育。葉の大きさは6~10㎝。植物体全体に淡褐色の白っぽい毛をつける。羽片は5~8㎜で浅~中裂し、胞子嚢群は羽片に複数つくが、大きな葉では羽軸に沿って左右の裂片基部に並んでつく。