ナガバノイタチシダの仲間 2021年春
いろいろな仲間が見られます。リュウキュウイタチシダとイヌタマシダはよく似ておりいろいろな外部形態の個体が見られました。包膜の形状の違いを確認することが重要な要素の一つであることを教わり、理解することができました。
№1 リュウキュウイタチシダ1イヌタマシダ
低山の深い渓谷の流れのそばのウエットな崖でときどき目にする小さなシダ。葉柄が細くて華奢で崖から垂れ下がり、葉身とほぼ同長かそれよりも長い。葉の大きさは15~30㎝、2回羽状に分かれる。葉柄が細長く華奢なところはイヌタマシダに似るが、小羽片はほぼ左右対称でなで肩にならず広披針形、基部は広い楔形。また小形のナガバノイタチシダに似ているが、10㎝程度の葉身でも胞子嚢群をつける。胞子が熟しても包膜の辺縁は裂けない。胞子嚢群は中間につける。
詳しい方から以下のコメントを頂きました。
葉の形態、包膜ともにリュウキュウイタチシダと判断されます。写真を見る限り包膜は裂けておらずほぼ円形に見えます。
胞子が熟す頃になりますとイヌタマシダは包膜が2~3方向に裂けます。写真のシダの包膜を見ますと、包膜は2~3裂しているようには見えず、ほぼ円形に見えます。リュウキュウイタチシダ、ナガバノイタチシダの包膜はほぼ円形をした円腎形です。
写真標本1 低山
(1)岩壁に生育するリュウキュウイタチシダとキノボリシダ(下)
(3)リュウキュウイタチシダ、胞子嚢群
(4)リュウキュウイタチシダ、包膜
写真標本2 低山
(1)岩壁に生育するリュウキュウイタチシダ
(2)リュウキュウイタチシダ、胞子嚢群
(3)リュウキュウイタチシダ、包膜
№2 リュウキュウイタチシダ2イヌタマシダ似のシダ
小羽片がややなで肩になるリュウキュウイタチシダ
№2は№1にくらべ小羽片がなで肩になる。屋久島では低山~中腹部屋久杉の森、ウエットな崖で観察。いろいろな形が見られた。葉柄は葉身と同長で細長い。葉の大きさは20~35㎝。葉身下部の羽片・小羽片はなで肩のものとそうでないものが見られた。最下羽片羽基部の小羽片を除きとんど羽軸に合着する。
一般的なリュウキュウイタチシダに比べると小羽片が多少なで肩に見え外観はややイヌタマシダに似てくるリュウキュウイタチシダ。胞子が熟しても包膜の辺縁は裂けない。
※詳しい方に写真を見ていただき以下のコメントを頂きました。
イヌタマシダ、リュウキュウイタチシダを同定する場合、葉の形態だけでは難しい場合があります。胞子が熟す頃になりますとイヌタマシダは包膜が2~3方向に裂けます。写真の包膜を見ますと、包膜は2~3裂しているようには見えず、ほぼ円形に見えます。リュウキュウイタチシダ、ナガバノイタチシダの包膜はほぼ円形をした円腎形です。リュウキュウイタチシダだと思われます。
写真標本1 低山
(1)薄暗いウエットな壁に生育するリュウキュウイタチシダ(小羽片がなで肩type)
(2)リュウキュウイタチシダ(小羽片がなで肩type)、葉の裏側
(3)リュウキュウイタチシダ(小羽片がなで肩type)、胞子嚢群
写真標本2 中腹部
(1)岩壁に生育するリュウキュウイタチシダ(小羽片がなで肩type)
(2)リュウキュウイタチシダ(小羽片がなで肩type)、葉身下部
(3)リュウキュウイタチシダ(小羽片がなで肩type)、葉身下部
(4)リュウキュウイタチシダ(小羽片がなで肩type)、包膜
№3 イヌタマシダ1 リュウキュウイタチシダ
最初はリュウキュウイタチシダとして掲載したが、包膜が包膜が2~3裂する特徴を教えていただきイヌタマシダに訂正した。
詳しい方から以下のコメントを頂きました。
包膜は2~3裂しイヌタマシダです。
上部を樹冠に覆われ片側が明るい林道沿いの崖などに垂れ下がるようにして生育。葉柄は華奢で葉身と同長~やや長い。葉身は25~25㎝程度、2~3回羽状に分かれ、卵状披針形、羽片と羽片の間隔は広い。羽片の柄は長い。小羽片は垂れ下がるようななで肩にはならず左右対称、基部は広い楔形、羽軸に流れないで独立している。10㎝程度の小形の葉身にも胞子嚢群をつけている。胞子が熟した包膜は2~3裂する。胞子は50個以上確認、大きさ・形は整い有性生殖種と思われる。
(2)岩壁に生育するイヌタマシダ、葉柄は細長く華奢。
(3)岩壁に生育するイヌタマシダ、3回羽状に分かれる葉身
(15)(16)イヌタマシダ、胞子1
(17)(18)イヌタマシダ、胞子2
(19)(20)イヌタマシダ、胞子3
(219)(22)イヌタマシダ、胞子4
№4 イヌタマシダ2 リュウキュウイタチシダ
日陰のウエットな崖に生育。葉柄は細くて華奢で崖から垂れ下がり、葉身とほぼ同長かそれよりも長い。葉の大きさは20~30㎝、2回羽状に分かれ、卵状披針形で羽片と羽片の間隔は広い。羽片の柄は長い。小羽片は左右が非対称でなで肩になり広披針形、基部はリュウキュウイタチシダに比べ狭い楔形。多くの小羽片は羽軸に流れてつく。10㎝程度の葉身にも胞子嚢群をつける。胞子嚢群が熟した包膜は2~3裂する。
詳しい方に写真を見ていただき以下のコメントを頂きました。
葉の形態はどちらともいえず微妙ですが、包膜は2裂ないしは3裂しているように見えます。特に包膜の写真では裂けて居るように見えます。従いまして、これはイヌタマシダと判断しました。但し、お送りいただいた写真では、包膜の状態が明瞭には分らず、間違えている可能性があります。お手元の写真を見直していただき、2~3方向に裂けていればイヌタマシダ、裂けておらず、ほぼ円形であればリュウキュウイタチシダということでご判断ください。
(2)イヌタマシダ、最下羽片裏側
(3)イヌタマシダ、羽片裏側
№5 ナガバノイタチシダ
林道沿いの崖に生育。イヌタマシダやリュウキュウイタチシダに比べ葉柄は太く葉を立ち上げる。
写真標本1 低山
(1)林道沿いの崖に生育するナガバノイタチシダ
写真標本2 低山
(1)林道沿いの崖に生育するナガバノイタチシダ
イヌタマシダおよびリュウキュウイタチシダの雑種について詳しい方から以下のコメントを頂きました。
イヌタマシダは2倍体有性生殖種、リュウキュウイタチシダは4倍体有性生殖種とされていますので、両種の雑種は3倍体と考えられ、胞子は不稔と考えられます。微妙な形態をした個体は胞子を調べる必要があると思います。ナガバノイタチシダとイヌタマシダの雑種はアイイヌタマシダとして記載されており、これも不稔雑種と判断されますが、葉の形態はリュウキュウイタチシダにそっくりです。包膜はイヌタマシダよりもリュウキュウイタチシダ、ナガバノイタチシダ型です。
№6 タイトウベニシダ
低山、よく茂った樹林帯。渓谷沿いのウエットな空気に包まれた林内林床に生育。ナガバノイタチシダに似ているが葉が濃緑色で厚みがある。
(1)渓谷沿いのウエットな空気に包まれた林内林床に生育するタイトウベニシダ
(2)(3)渓谷沿いのウエットな空気に包まれた林内林床に生育するタイトウベニシダ
(6)(7)タイトウベニシダ、葉柄
(8)(9)タイトウベニシダ、中軸
№7 クロミノイタチシダか
中腹部、ウエットな谷沿いの森で観察。コスギイタチシダに似ているが最下羽片が発達する。葉脈に遊離脈が見られるかなど確認していない。
写真標本1 中腹部
(1)ウエットな谷沿いの林床に生育するクロミノイタチシダか
(2)ウエットな谷沿いの林床に生育するクロミノイタチシダか
(3)ウエットな谷沿いの林床に生育するクロミノイタチシダか、最下羽片
(4)ウエットな谷沿いの林床に生育するクロミノイタチシダか、最下羽片裏側
(5)ウエットな谷沿いの林床に生育するクロミノイタチシダか、胞子嚢群
写真標本2 中腹部
(1)ウエットな谷沿いの林床に生育するクロミノイタチシダか
(2)ウエットな谷沿いの林床に生育するクロミノイタチシダか、葉身裏側
(3)ウエットな谷沿いの林床に生育するクロミノイタチシダか、胞子嚢群
(4)ウエットな谷沿いの林床に生育するクロミノイタチシダか、葉脈
№8 コスギイタチシダ
中腹部。白谷川の中上流で1株観察。45~50㎝程度の大きな個体。葉は鮮緑色、3回羽状に分かれ、柔らかい薄い革質。葉は1枚しかつけていなかった。
(3)コスギイタチシダ、葉身下部
(4)コスギイタチシダ、最下羽片
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