タカネサトメシダ似のシダとヤマイヌワラビの雑種か
メシダ科 メシダ属
①小羽軸上に明瞭な棘を持つタカネサトメシダ似のシダとヤマイヌワラビの雑種か
生育している環境:上部を樹冠に覆われた渓谷沿いの岩が露出するウエットな林床に生育。15株以上生育。個体数は少ないので現地で観察されてもくれぐれも採取されないようにお願いいたします。
観察された特徴:根茎は直立し根茎最上部には明るい褐色の鱗片が密生し、その中心から1本の葉柄をのばす。えんじ色を帯びる葉柄は長く葉身とほぼ同長。葉は1枚で(観察した10株すべてで)、大きさは60~90㎝で底辺の広い三角形。羽片は有柄で広披針形、最下羽片では基部の第1第2小羽片は短縮し卵状披針形となる。小羽片は細長く卵状披針形で3~5㎝、基部は広い楔形であるがヤマイヌワラビより狭い。小羽軸上にはホソバイヌワラビやホウライイヌワラビのような明瞭な棘をつける。裂片はのこぎりの刃のように鋭角的につく。胞子のう群は鈎形のものが多く包膜の辺縁は全縁~ややほつれる。胞子は数は60個程度・大きさはおよび形は揃い有性生殖種として問題はないが、全ての胞子で中身が無く透けて見えよく光を通し不稔と推測され雑種と考えられる。また雑種であることを示す現象としては、胞子の付いた葉を乾燥させても胞子は飛散しなかった。また、多くのメシダ属の仲間の胞子は中身が充実している場合は褐色で光は通さず核が確認できる程度である。
※西沢渓谷ではメシダ属として観察されたものはヤマイヌワラビ、カラクサイヌワラビ、タカネサトメシダ似のシダの3種であり、雑種であればこれらが親種の候補と思われる。
〇ヤマイヌワラビに似ている点は①3回羽状中裂で小羽軸上に棘が無ければヤマイヌワラビの個体変異と思えるほどよく似ている。葉は草質で暗緑色。②胞子のう群は馬蹄形や鈎形が多く混ざる。
〇ヤマイヌワラビと異なる点は①多くの個体で葉は1本しかつけない。②小羽片はより細長く基部は少し狭い広い楔形。③小羽軸上に明瞭な棘がある。④葉柄は長く葉身と同長。
〇タカネサトメシダ似のシダに似ている点は①葉柄基部には淡褐色膜質の鱗片を密につける。②葉柄は長く葉身とほぼ同長。③包膜の辺縁には多少ほつれあり。
〇ホソバイヌワラビに似ている点は①小羽軸上に目立つ棘がある。
※1:西沢渓谷ではまだホソバイヌワラビを確認していない。この標高(およそ1200m)でホソバイヌワラビが生育できるか不明である。
②③渓谷沿いウエットな林床に生育するタカネサトメシダ似のシダとヤマイヌワラビの雑種か
④渓谷沿いウエットな林床に生育するタカネサトメシダ似のシダとヤマイヌワラビの雑種か
⑤⑥タカネサトメシダ似のシダとヤマイヌワラビの雑種か、根茎および葉柄
⑦タカネサトメシダ似のシダとヤマイヌワラビの雑種か、根茎の周りの鱗片
⑧タカネサトメシダ似のシダとヤマイヌワラビの雑種か、最下羽片
⑨タカネサトメシダ似のシダとヤマイヌワラビの雑種か、小羽軸上に棘のある小羽片
⑩⑪タカネサトメシダ似のシダとヤマイヌワラビの雑種か、小羽軸上の棘
⑭⑮タカネサトメシダ似のシダとヤマイヌワラビの雑種か、胞子のう群
⑯⑰タカネサトメシダ似のシダとヤマイヌワラビの雑種か、1つの胞子のうを壊したようす