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平成24年10月13日(土) 大楠山・前田川周辺  観察会レポート

逗子駅からバスに乗り前田川入り口で下車、前田川に沿って遊歩道が整備されており、遊歩道に沿って歩きながらしだ植物を中心に観察しました。コースは前田川本流に沿って渓谷沿いに終点のゴルフ場まで歩き、次に前田川西支流に上流から入り渓谷に沿って再び起点まで下りました。前田川は今年の夏の大雨の影響でいくつかの場所でがけ崩れが起こり、その後、再整備を行っているところでした。工事が終了しておらず、一部立ち入り禁止の区間もありました。
毎回、シダおよび種子植物(昆虫他も含め)について大変くわしい方々に一緒していただき、植物の同定をしていただくだけでなく、個々の植物について詳しくまた興味深いお話を伺う事ができ、たいへん楽しく観察することができました。尚、ここで述べられていることは、参加された皆さんで話し合った内容を中心に載せています。
 なお今回の観察会レポートに掲載した動植物の画像および説明に関してのご質問やご指摘がございましたらご連絡いただけるとありがたいです。



 渓谷沿いで最も目についたものがイノデの仲間でした。イノデの仲間はアスカイノデ、イノデ、ミウライノデ、オオタニイノデ、ヒメカナワラビが見られました。
 アスカイノデなども大変大きな株に生長しますが、ミウライノデ(イノデ×アスカイノデ)・オオタニイノデ(アスカイノデ×アイアスカイノデ)などの雑種はたいへん大きな株(100~120cm)になることが多く見つけやすいので、それぞれの特徴を確認することができました。ヒメカナワラビは1箇所に15株以上生育していました。生育している個体はほぼ葉身の裏全面に胞子のう群をつけていますが、いくつかの葉では葉身の下から胞子のう群をつけ、ヒメカナワラビの特徴を表していました。
ヒメカナワラビ。 ヒメカナワラビ、渓谷沿いの岩に着生。
ヒメカナワラビ(左)、ヒメカナワラビの胞子のう群のつき方(右)



 ヤブソテツの仲間は多くの種類を観察することができました。ヤブソテツの仲間はオニヤブソテツ、ナガバヤブソテツ、ヤブソテツ、テリハヤブソテツ、ナガバヤマヤブソテツ、ツヤナシヤマヤブソテツ、テリハヤマヤブソテツ、ジュウモンジシダ、ツルデンダが見られました。
 オニヤブソテツとナガバヤブソテツの違いを観察するよい機会になりました。新芽を伸ばしている個体も見られたので、新芽の先端の柔らかい葉の表面の微毛の有無を観察したり、羽片の長さや基部の形で違いを確認しました。
 ツヤナシヤブソテツ(普通のヤマヤブソテツ)とヤブソテツは近い間柄なのか、典型的な個体は別にすると判断に迷う個体に何度も出会いました。
 テリハヤマヤブソテツはツヤナシヤブソテツ(普通のヤマヤブソテツ)にくらべるとより一層ウエットな岩場を好むようです。
 ツルデンダは1箇所ですが、大きな群落を形成していました。  
岩壁に着生するツルデンダ。 ツルデンダ。
ツルデンダ        

ヤブソテツ。 テリハヤマヤブソテツ。
ヤブソテツ(左)、テリハヤマヤブソテツ(右)



 オオイタチシダの仲間はいろいろ観察することができました。オオイタチシダについては以下の5typeが見られました。
type1(細葉あるいは厚葉と呼ばれるtype)
type2(長葉あるいはベニオオイタチシダと呼ばれるtype)
type3(ツヤナシtype)
type4(アオニオオイタチシダあるいは広葉と呼ばれるtype)
type5(硬葉あるいはアケボノオオイタチシダと呼ばれるtype)が見られました。

ただし、type3とtype5は近い間柄なのか、この時期では区別ができませんでした。また新芽の時期に、新芽の芽立ちの色を確認してその上でtype3かtype5なのか区別したいと思います。
ツヤナシオオイタチシダあるいはアケボノオオイタチシダ、近い間柄のためか区別が難しい。 

ツヤナシオオイタチシダあるいはアケボノオオイタチシダ ツヤナシオオイタチシダあるいはアケボノオオイタチシダ
ツヤナシオオイタチシダあるいはアケボノオオイタチシダ(左上上)
ツヤナシオオイタチシダあるいはアケボノオオイタチシダの羽片(左上、右上)


シケシダの仲間ではナチシケシダがよく見られました。生育環境によるものなのか観察場所により葉身の形のいろいろと変化します。以前、大楠山の頂上付近の明るいやや乾燥気味の路傍にも大型の個体が見られましたが、今回歩いたウエットで薄暗い谷でもよく見られました。ナチシケシダお中には外形がホソバシケシダと似ているものも見られましたが、①2形性を示さない。②胞膜の辺縁が激しく裂ける。③胞膜に毛がある。④葉の質はやや厚みがあるなどの点を確認しナチシケシダと同定しました。
ナチシケシダ。 

ナチシケシダの胞膜、胞膜ノ端は激しく裂ける。また胞膜上に毛がある。 ナチシケシダの胞膜、胞膜ノ端は激しく裂ける。また胞膜上に毛がある。
ナチシケシダ、葉身が細い個体A(左上上)
ナチシケシダ、葉身が細い個体Aの胞膜(左上、右上)


ナチシケシダ。 ナチシケシダ、胞膜ノ端は激しく裂ける。また胞膜上に毛がある。 
ナチシケシダ、葉身が細い個体B(左)        
ナチシケシダ、葉身が細い個体Bの胞膜(右)


ナチシケシダ。 

ナチシケシダ、胞膜ノ端は激しく裂ける。また胞膜上に毛がある。 ナチシケシダ、胞膜ノ端は激しく裂ける。また胞膜上に毛がある。
ナチシケシダ、葉身が広い個体C(左上上)
ナチシケシダ、葉身が広い個体Cの胞膜(左上、右上)



イワガネソウは斑の入るtypeもよく見られました。羽軸に沿って斜めに斑が入る一般的なtype以外に、羽片全体に不規則に薄緑色の円~楕円形の斑が入るtypeも見られました。どちらの斑もウイルスによるものとのことです。ここでは一般的な斑入りをtype1、楕円形の斑入りをtype2とします。
イワガネソウ斑入りtype1。
イワガネソウ斑入りtype1

イワガネソウ斑入りtype2。 イワガネソウ斑入りtype2の羽片。
イワガネソウ斑入りtype2(左) 
イワガネソウ斑入りtype2の羽片(右)        



イワガネゼンマイは普通に見られましたが、歩いていてそばに生えていると、葉を触るようにしています。今回も1株だけですが、触った感じがふわっとしている個体があり、ルーペで見るとウラゲイワガネでした。また、イワガネソウとの雑種のイヌイワガネソウも見られました。
ウラゲイワガネ。 ウラゲイワガネ、羽片の裏面に微毛ガ密生する。
ウラゲイワガネ(左) 
ウラゲイワガネ羽片裏側の微毛(右)     



イノモトソウの仲間はイノモトソウ・オオバイノモトソウ・マツザカシダが見られました。イノモトソウは乾燥気味のところを好むためか渓谷内ではあまりお目にかかりませんでした。マツザカシダは場所によっては岩壁面に群生していました。いつものことですが、羽片中肋に沿って白い斑の入る個体はお目にかかりませんでした。
マツザカシダ。
マツザカシダ



そのほか、渓谷内でクリハラン、ノコギリシダが見られました。ノコギリシダは渓谷内の露頭にも見られましたが、渓谷沿いの林床にもときどき顔を出しました。クリハランは2箇所程度で観察しました。渓谷沿いの露頭や渓谷内の川沿いの岩上に着生していました。
ノコギリシダ、渓谷沿いの林床に群生。 ノコギリシダ、胞子のう群。

クリハラン。
ノコギリシダ(左上上)        
ノコギリシダ胞子のう群(右上上)
クリハラン(左上)



渓谷沿いの岩にはコケ類も多く見られました。その中から2種類の苔類を紹介します。
ジャゴケ、渓谷沿いの岩に着生。 ケゼニゴケ、渓谷沿いの岩に着生。表面はビロード状。
ジャゴケ(左上)、ケゼニゴケ(右上)



渓谷内で見られたキノコ・粘菌?
色鮮やかなベニサラタケ・ツヤウチワタケの仲間、イヌセンボンタケが見られました。また、倒木にイボのような硬いふくらみができており、その表面に黄色い固形状の物質がたくさんついていました。粘菌の仲間ではないかと思うのですがよくわかりません。ご存知の方は教えていただければありがたいです。
ベニサラタケ。 ツヤウチワタケ。 

倒木に群生するイヌセンボンタケ。 イヌセンボンタケ。
ベニサラタケ(左上上)、ツヤウチワタケの仲間(右上上)  
イヌセンボンタケ(右上)、(左上)

粘菌の仲間? 粘菌の仲間? 
粘菌の仲間か



草はらや林縁ではノコンギクやトネアザミが咲いていましたが林内ではシロヨメナが白く美しい花を咲かせていました。渓谷沿いではホトトギス、ツリフネソウが咲いていたり、ハダカホウズキが赤い実を付けていました。
トネアザミ、林内や林縁に生育。 シロヨメナ、林内や林縁に生育。
トネアザミ(左上)        
シロヨメナ右上)

ホトトギス。 ホトトギスの花。
ホトトギス

ツリフネソウ。
ツリフネソウ

ハダカホオズキ。 ハダカホオズキの実。
ハダカホオズキ         



チジミザサの仲間が2種類見られました。渓谷沿いのやや日陰の湿ったところにコチジミザサが生育していました。それほどウエットでない明るい林縁にはケチジミザサが生育していました。
コチジミザサ。 コチジミザサの実。
コチジミザサ

ケチジミザサ。 ケチジミザサの実。
ケチジミザサ



渓流のなかではコガタツバメエダシャクが白い羽を広げていました。源流を登りつめるとゴルフ場の周りの造成地に出ました。そこではセイタカアワダチソウの群生地が広がり、天気がよかったせいかツマグロヒョウモン・アカタテハ・Cタテハなどが花の周りを飛んでいました。ウラギンシジミも遠くから羽の白い裏側が目立っていました。
コガタツバメエダシャク。 ツマグロヒョウモン。 
コガタツバメエダシャク(左上)        
ツマグロヒョウモン♂(右上)



今回の観察会で見られたシダ
○スギナ
○オオハナワラビ
○ゼンマイ
○カニクサ
○フモトシダ  
○イワガネソウ・イワガネゼンマイ・斑入りイワガネtype1・斑入りイワガネtype2・ウラゲイワガネ  ○ハコネシダ
○イノモトソウ・オオバイノモトソウ・マツザカシダ
○コバノヒノキシダ・トラノオシダ
○テリハヤブソテツ・ヤマヤブソテツtype1艶無し・ヤマヤブソテツtype2厚葉艶有・ヤブソテツ・ツルデンダ・ジュウモンジシダ・ナガバヤマヤブソテツ・オニヤブソテツ・ナガバヤブソテツ
○イノデ・アスカイノデ・ミウライノデ・オオタニイノデ・ヒメカナワラビ
○リョウメンシダ
○ベニシダ・クマワラビ・アイノコクマワラビ・ヤマイタチシダ・オオイタチシダtype1・オオイタチシダtype2・オオイタチシダtype3またはtype5・オオイタチシダtype4・テリハトウゴクシダ
○ミゾシダ・ゲジゲジシダ・ホシダ
○イヌワラビ
○ホソバシケシダ・ナチシケシダ
○ノコギリシダ  
○ノキシノブ・クリハラン