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平成24年4月1日(日) 小田原市いこいの森周辺  観察会レポート

観察地のようす
穏やかな日差しの中、小田原久野霊園周辺の森、いこいの森および水之尾周辺の森や野原を歩いてきました。
2012,4,1久野霊園
山と谷の起伏にとんだ地形で針葉樹(スギ・ヒノキ・サワラ)の植林地が中心でその中に水量の豊かな川や小さな沢がいくつも流れています。林床草本・潅木・低木など多様な植物を伴った樹齢を経たスギ林や林床にほとんど何も生えていない密植されたヒノキ林のような林までいろいろな森が見られました。また日当たりのよい緩斜面には民家およびみかん畑・茶畑が広がっているようなところでした。

今回は夏緑性のシダは時期的なこともありほとんど観察できませんでした。

下草が生えない林床が広がるヒノキ植林地
植物を観察しようと思う人にとってはなんとも味気のない林でした。ヒノキを密植した植林地では林床に差し込む光線が弱いためなのか下草の生育が悪くほとんど生えていませんでした。殺風景な景色が続く中、わずかに見られたシダはイタチシダ類、ヤブソテツ類、オオキジノオ、イワヘゴ(1株)などです。
2012,4,1久野霊園
イワヘゴ

  

人手(定期的な草刈)が入ったスギ植林地
林床に丈の低い下草が生育するような森ではベニシダ類、オオイタチシダ類などのシダ以外にマツザカシダが多く生育していました。その谷以外のところでは時たま顔を出す程度でした。
2012,4,1久野霊園
マツザカシダ

丘陵地の上部の林で生育。2012,4,1久野霊園
オオベニシダ

オオベニシダはベニシダの仲間のなかでは最下羽片の柄葉長い。2012,4,1久野霊園
オオベニシダ 最下羽片

道路わきの擁壁面
擁壁面の構造は良くわかりませんが切り立った面にはシダ植物等が生育できる表土があるような感じがしました。、オクマワラビ、オオバノイノモトソウ、ナガバヤブソテツなどが生育する中に混じってメヤブソテツが生育していました。
人工的な擁壁面に生育。ソーラスは付けていない。2012,4,1久野霊園
メヤブソテツ

沢沿いのスギ植林地
沢を中心に両側に直径25~40㎝程度のスギ林および低木が生育するウエットな森です。低木層にはタブ、シラカシ、シロダモ、アオキ、クロモジなど木ががまばらに生育していました。林床にはリョウメンシダ、イノデ、アイアスカイノデ、オオイタチシダの各type、ときどきオオカナワラビ、イワガネゼンマイ、イワガネソウ(斑入りも)、オオキジノオ、トウゲシバ、林内の切り立った岩場にはヘラシダが群生していました。谷の上部のやや日当たりのよいところで昼食を取ったのですがちょうどそこにイヌイワガネソウが生えていました。昼食を取りながら、詳しい方から説明をお聞きしながらゆっくり観察をすることができました。
2012,4,1久野霊園
アイアスカイノデ

2012,4,1久野霊園
アイアスカイノデ 葉柄基部の鱗片

2012,4,1久野霊園
アイアスカイノデ 胞子のう群

2012,4,1久野霊園
アスカイノデ

2012,4,1久野霊園
アスカイノデ 葉柄基部の鱗片

2012,4,1久野霊園
ドウリョウイノデ

2012,4,1久野霊園
ドウリョウイノデ 葉柄基部の鱗片

雑種にしては小さな個体であるが、この個体の葉身の形はイノデやアスカイノデの形をしておりアイアスカイノデには似ていない。2012,4,1久野霊園
オオタニイノデ

葉柄基部の鱗片は細長く辺縁にくらべ中央は濃い色になる。2012,4,1久野霊園
オオタニイノデ 葉柄基部の鱗片

2012,4,1久野霊園
ヘラシダ

2012,4,1久野霊園
ヘラシダ 胞子のう群

外見はイワガネソウ似でした。2012,4,1久野霊園
イヌイワガネソウ

羽片の先端の尖り方は中間的。羽片の辺縁が乱れる。2012,4,1久野霊園
イヌイワガネソウ 羽片

葉脈は葉の辺縁まで達する。2012,4,1久野霊園
イヌイワガネソウ 葉脈

胞子のう群は両母種の中間、やや片縁近くまで達する。2012,4,1久野霊園
イヌイワガネソウ 胞子のう群

出現数はそんなに多くないが広範囲に見られる。2012,4,1久野霊園
キヨスミヒメワラビ

2012,4,1久野霊園
オオハナワラビ

このあたりでは写真のような葉柄が紫色を帯びる個体がいくつか見られました。2012,4,1久野霊園
オオカナワラビ

丘陵地上部のスギ・ヒノキ林林縁について
イタチシダ類、オオベニシダ、トウゴクシダ、キジノオシダ、トウゲシバなどが生育していました。トウゴクシダについては艶のない長三角形のtypeが多く見られましたが、写真の黄緑色の個体は、葉の表面に艶があり葉の形は広三角形でした。
よく日が差し込む林縁に生育しているためか黄緑色。2012,4,1久野霊園
トウゴクシダ

葉の表面には光沢がある。2012,4,1久野霊園
トウゴクシダ 羽片

トウゲシバについて
沢沿いのウエットなスギ林の谷に生育する個体は、葉を横に張り出し見るからに元気の良さそうに見えました。ただ個体数はそんなに多くありませんでした。それに対し丘陵地上部のスギ・ヒノキ林の日陰の山道沿いでは葉は短縮したような個体が多いのですが、そこらじゅうに群生していました。この違いは環境の違いによるものなのか、種類が異なるためなのか改めて調べて見たいと思います。
この個体はウエットな森の中で生育。2012,4,1久野霊園
トウゲシバ

オオキジノオとキジノオシダについて
オオキジノオは沢沿いのウエットなスギ林の谷に多数生育していた。キジノオシダは丘陵地上部、どちらかといえば乾燥気味の山道沿いの日陰の林縁の斜面に1株生育していました。
2012,4,1久野霊園
キジノオシダ

葉身中部の羽片は上側が中軸に流れてつく。2012,4,1久野霊園
キジノオシダ 葉身上部

下部の羽片には短い柄がある。2012,4,1久野霊園
オオキジノオ

丘陵地上部
やや乾燥気味、よく日が当たるかある程度日が当たる林縁沿いの切り立った法面ではヒメイタチシダ(※リョウトウイタチシダではありません)が群生していました。また農道沿いの崖ではアマクサシダが見られました。
胞子のう群はつけていない。崖や石垣など乾燥気味なところであれば民家の周辺でも見られる。2012,4,1久野霊園
アマクサシダ

他のイタチシダ類とくらべると中軸や葉柄は鱗片が少なく緑色に見えること。リョウトウイタチシダにくらべると葉の色は黄緑色~鮮緑色、広三角形~五角形。2012,4,1久野霊園
ヒメイタチシダ

鱗片は黒色~黒褐色、辺縁は淡色になることがある。2012,4,1久野霊園
ヒメイタチシダ 鱗片

鱗片は黒色~黒褐色。2012,4,1久野霊園
ヒメイタチシダ 鱗片

2012,4,1久野霊園
ホラシノブ

クラマゴケとタチクラマゴケについて
※ヒメクラマゴケと記載していましたが胞子のうのつき方を確認しタチクラマゴケに訂正いたします。2013年8月31日

スギ・ヒノキ林の林縁のやや明るい日陰で1地点クラマゴケの小さな群落を観察しました。タチクラマゴケは日の当たるややウエットな感じのする畑の周りの土手に広範囲に群生していました。きれいに紅葉していました。いままで日陰の石垣や山中の滝のそばなどのウエットなところで今まで見かけていましたが、このような日の当たる畑の周りも好むことが分かりました。
2012,4,1久野霊園
タチクラマゴケの生態

2012,4,1久野霊園
タチクラマゴケ

オオイタチシダの各typeについて
type1は広範囲に生育。type2は広範囲に生育。type3は崖や乾燥気味の地形。type4は日陰の崖(1株)。type5はウエットな林内(1株)。
ウエットな林から乾燥気味の林までどこでも見られる。2012,4,1久野霊園
オオイタチシダtype1(アツバオオイタチシダ)

光沢があり裂片の辺縁はわずかに巻く。2012,4,1久野霊園
オオイタチシダtype1 羽片

光沢の無い葉。急な斜面や崖などによく見られる。2012,4,1久野霊園
オオイタチシダtype3(ツヤナシオオイタチシダ)

各羽片の幅は広くなる。type4は光沢が強いので光が反射してこのような色の写真になってしまった。2012,4,1久野霊園
オオイタチシダtype4(アオニオオイタチシダ)

葉は厚く光沢があり辺縁は巻かない。2012,4,1久野霊園
オオイタチシダtype4 最下羽片

葉の表面には光沢がない。最下羽片下側第1小羽片は発達するはずであるが、写真の個体は欠けていて確認できない。今年の葉が展開したら改めて観察したい。2012,4,1久野霊園
オオイタチシダtype5(アケボノオオイタチシダ)

小羽片は深く切れ込む。2012,4,1久野霊園
オオイタチシダtype5

ヤブソテツの各typeについて
type1(テリハヤブソテツ)は広範囲に生育。type2(ホソバヤマヤブソテツ)薄暗い林内(1株)。type3(ヤブソテツ)は川沿い石垣。(数株)};

ホソバヤマヤブソテツと呼ばれるtype。2012,4,1久野霊園
ヤブソテツtype2(ホソバヤマヤブソテツ)

写真の個体は見方によってはヤマヤブソテツにも見えるので芽立ちの時期に違いがあるかどうか確認したい。2012,4,1久野霊園
ヤブソテツtype3(ヤブソテツ)

2012,4,1久野霊園
ヤブソテツtype3 羽片

観察されたシダ全種
トウゲシバ、イヌカタヒバ、クラマゴケ、タチクラマゴケ、スギナ、オオハナワラビ、ゼンマイ、キジノオシダ、オオキジノオ、カニクサ、イヌシダ、フモトシダ、イワヒメワラビイワガネソウ、フイリイワガネソウ、イワガネゼンマイ、イヌイワガネソウ、タチシノブ、イノモトソウ、オオバイノモトソウ、マツザカシダ、コバノヒノキシダ、トラノオシダ、コモチシダ、ヤブソテツtype1・type2・type3、ヤマヤブソテツtype1、ナガバヤブソテツ、メヤブソテツ、ジュウモンジシダ、イノデ、アイアスカイノデ、アスカイノデ、ドウリョウイノデ、オオタニイノデ、オオカナワラビ、イワヘゴ、オクマワラビ、クマワラビ、アイノコクマワラビ、ヤマイタチシダ、ヒメイタチシダ、オオイタチシダtype1・type2・type3・type4・type5、ベニシダ、トウゴクシダ、オオベニシダ、キヨスミヒメワラビ、ミゾシダ、ゲジゲジシダ、ホシダ、シケシダ、ノキシノブ、マメヅタ