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平成24年8月1日(水) 大雄山最乗寺方面 観察会レポート
・8時に大雄山駅を出発し、山門に向かう急な上り坂の門前町に沿って最乗寺へ向かいました。最乗寺の社叢林(?)およびその周辺の森は東西に2.5km~3km、南北およそ600m~1kmあります。南北両側を渓谷に挟まれ自然環境の変化に富んだ森です。観察を終えて大雄山駅に戻ってきたのは午後4時頃でした。今回もシダに詳しい方がご一緒してくださり、いろいろ教えていただくことができました。ありがとうございました。
観察したおもなシダについて紹介いたします。
1 林縁や明るい林内に生育するシダ
コンテリクラマゴケ
※民家の近くのやや明るい林縁で夏草に混じって旺盛に生育。
ホソバシケシダ
※シケシダ・ホソバシケシダは林縁から林内まで見られました。
ヒメワラビ
ミドリヒメワラビ小羽片 ミドリヒメワラビ羽軸
アイヒメワラビか?ミドリヒメワラビ2020年1月22日訂正
アイヒメワラビ?ミドリヒメワラビ小羽片 アイヒメワラビ?ミドリヒメワラビ葉柄
アイヒメワラビ?ミドリヒメワラビ羽軸 アイヒメワラビ?ミドリヒメワラビ羽軸(拡大)
※ヒメワラビはおもに林縁などひのる良く当たるところに生育、黄緑色、葉柄は白粉を帯びる。ミドリヒメワラビは林縁~林内に生育しヒメワラビよりもやや暗いところで多く見られ、葉柄は白粉を帯びない。アイヒメワラビ?の外観はヒメワラビに似て羽片・小羽片とも込み合ってつくが、小羽片には短い柄がある。葉柄は白粉を帯びない。2020年1月21日削除
ヒメイタチシダ不明オシダ属のシダ2015年10月23日訂正
※新芽は黄緑色、最下羽片はよく発達し、成葉は五角形状になる。1株のみ見られた。
2 川沿い・渓谷沿いン生育するシダ
川沿いのやや明るい林内や林縁でヒカゲワラビやオオバノハチジョウシダが見られました。参道沿いのスギ林の一つの谷ではオオバノハチジョウシダのみが群生していました。
ヒカゲワラビ
ヒカゲワラビ最下羽片(上左)
ヒカゲワラビ最下羽片の柄(上右)
ヒカゲワラビ、羽片(上左)
ヒカゲワラビの胞子のう群(上右)
オオバノハチジョウシダオオバノアマクサシダ2020年1月21日訂正
オオバノハチジョウシダオオバノアマクサシダ胞子のう群
3 スギなどの植林地の谷沿いのウエットな林床に生育するシダ
フモトシケシダ
セイタカシケシダ新芽 セイタカシケシダ胞子のう群
※シケシダの仲間はシケシダ、ナチシケシダ、フモトシケシダ、ホソバシケシダ、セイタカシケシダなどが見られました。このうちウエットな林内にはセイタカシケシダ、フモトシケシダが見られました。
ヤブソテツ羽片の細いツヤナシヤマヤブソテツに変更します。2015年12月1日
ホソバヤマヤブソテツ
ホソバヤマヤブソテツ羽片
※ヤブソテツの仲間は6種類ほど観察できました。石垣や崖などを好んで生育するものもありますが、今回スギ林下部ではヤブソテツとホソバヤマヤブソテツが見られました。ヤブソテツについては、ヤマヤブソテツの葉の細いtypeの可能性もあるので、春先の芽立ちの時期にあらためて観察したいと思います。
ヒロハイヌワラビ
ヤマカライヌワラビ小羽片 ヤマカライヌワラビ胞子のう群
※イヌワラビの仲間は7種類観察できました。
・ヒロハイヌワラビはスギ林下〜中腹部の林床で見られました。
・オオカラクサイヌワラビ(ヒロハイヌワラビ×カラクサイヌワラビ)も見られました。葉の質はヒロハイヌワラビの厚い感じが出ていました。ヒロハイヌワラビにくらべ小羽片前側耳垂が発達し羽軸に重なることがある。胞子のう群は三日月型。
・ヤマカライヌワラビ(ヤマイヌワラビ×カラクサイヌワラビ)も同様な環境で生育していました。写真がピンボケですみません。次回行ったときにもっと良い写真を撮り直します。[#k1248465]
シケチシダ
シケチシダ中軸上の肉芽 シケチシダ胞子のう群
※生育状態・環境によって葉身の大きさが異なり、羽片の切れ込み方も異なる場合がある。葉身は2回〜3回羽状に分かれる。
ウラゲイワガネ
ウラゲイワガネ羽片裏面の微毛
※葉の裏の微毛は慣れると手触りでも分かるが、ルーペで観察すると明確。イワガネゼンマイと同様の環境に生育している。
サイゴクイノデ
サイゴクイノデ葉柄基部の鱗片
※イノデの仲間は7種類観察できました。サイゴクイノデはもっと生育していると思われますが、今回観察できたのは1株だけでした。
キヨズミイノデ(イノデモドキ×サイゴクイノデ)
※観察されたキヨズミイノデ(イノデモドキ×サイゴクイノデ)の外観は、小羽片の形や葉身の先が尾状になるところはイノデモドキに似ているが葉の光沢はやや劣る。葉柄はあまり短くならず葉柄や中軸の鱗片は辺縁に顕著な鋸歯があり、栗色で辺縁が淡色になる鱗片が混ざる。胞子のう群は辺縁よりにつく。写真がピンボケですみません。[#k1248465]
4 スギなどの植林地の中腹部の林床に生育するシダ
ナガバイタチシダ
ナガバイタチシダ、葉柄鱗片(上左)
ナガバイタチシダ、中軸表側の溝(上右)
ナガバイタチシダ、最下羽片(上左)
ナガバイタチシダ、羽片(上右)
ナガバイタチシダ最下羽片の柄(上左)
ナガバイタチシダ胞子のう群(上右)
※ナガバノイタチシダは参道スギ林内に広範囲に生育しているが、1〜2株の単位で生育していることが多いのであまり目だたない。場所によっては10〜15株程度の群落も数箇所みられる。
フモトカグマ
フモトカグマ、中軸表側(上左)
フモトカグマ、中軸裏側(上右)
フモトカグマ、胞子のう群(上左) フモトカグマ、包膜(上右)
※参道に沿ってスギ林山地中腹部に大群落を形成している。
シロヤマシシダ
※今夏の大雨の影響で生育地に土砂が流れ込み、根茎部分が土砂に埋もれてしまった株が多数見られた。今後の生育に影響が出てくると思われます。大きくて存在感のあるシダなので以前と同じように回復して欲しい。
5 乾燥ぎみの林内に生育するシダ
ナチシケシダは奥の院などのある山の上部で、周りがスギ林に囲まれた陽の当たる草地で生育していました。渓谷沿いなどでも見つかるのではないかと思います。
ナチシケシダ
ナチシケシダ胞子のう群 ナチシケシダ胞膜
※写真の個体は植物体全体に微毛が多いこと・胞膜の辺縁のほつれが中肋側で不完全であることからセイタカナチシケシダの可能性も考えられる。
6 樹幹や岩に着生するシダ
ヒメノキシノブ ヒメノキシノブ胞子のう群
マメヅタ
※コケシノブ科のシダもたくさん観察できたのですが、当日は天気がよく乾燥でちじれた感じになっている個体が多くよい写真が撮影できませんでした。
今回の観察会で見られたシダ
○ホソバトウゲシバ
○イヌカタヒバ・クラマゴケ・コンテリクラマゴケ
○スギナ・トクサ
○オオハナワラビ
○ゼンマイ
○ウラジロ
○カニクサ
○コウヤコケシノブ・キヨスミコケシノブ・ウチワゴケ
○フモトシダ・フモトカグマ
○イワヒメワラビ
○ワラビ
○シノブ・トキワシノブ
○タチシノブ
○イワガネソウ・イワガネゼンマイ・ウラゲイワガネ
○イノモトソウ、・オオバイノモトソウ・オオバノハチジョウシダ
○コバノヒノキシダ・トラノオシダ・イワトラノオ
○コモチシダ
○オニヤブソテツ・テリハヤブソテツ・ヤマヤブソテツtype1・ヤマヤブソテツtype2厚葉艶有・ヤブソテツ・ナガバヤマヤブソテツ
○ジュウモンジシダ・サイゴクイノデ・イノデモドキ・イノデ・アイアスカイノデ・ドウリョウイノデ・キヨスミイノデ
○オニカナワラビ・ハカタシダ・オオカナワラビ・リョウメンシダ
○ナガバノイタチシダ・イワヘゴ・ベニシダ・トウゴクシダ艶有・トウゴクシダ艶無・オオベニシダ・クマワラビ・オクマワラビ・アイノコクマワラビ・ヒメイタチシダ・ヤマイタチシダ・オオイタチシダtype1・オオイタチシダtype2・オオイタチシダtype3・オオイタチシダtype4
○キヨスミヒメワラビ
○ヒメワラビ・ミドリヒメワラビ・アイヒメワラビ・ミゾシダ・ゲジゲジシダ・ホシダ・ヤワラシダ
○イヌワラビ・ホソバイヌワラビ・ヤマイヌワラビ・カラクサイヌワラビ・ヒロハイヌワラビ・オオカラクサシダ・ヤマカライヌワラビ
○ホソバシケシダ・フモトシケシダ・シケシダ・ハクモウイノデ・セイタカシケシダ・ナチシケシダ
○クサソテツ・イヌガンソク
○キヨタキシダ・ヒカゲワラビ・シロヤマシダ
○シケチシダ
○ノキシノブ・ヒメノキシノブ・マメヅタ