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平成24年8月9日(木)~11日(土)表丹沢-稜線-西丹沢周辺 観察会レポート

 今回の観察会レポートは8月9日(木)~11日(土)までを1日ごとに3回に分けて報告します。
 1回目(8月9日)は表丹沢山麓周辺(大倉登山口周辺)~丹沢山について
 2回目(8月10日)は丹沢山~桧洞丸(丹沢主稜線)について
 3回目(8月11日)は桧洞丸~犬越路~西丹沢について
報告する予定です。

 シダを観察する以外にさまざまな樹木や草花を観察し、雄大な景色を眺めながらゆっくり楽しく歩くことができました。シダ以外のキノコ・コケ類・種子植物にも詳しい方がご一緒してくださり、いろいろ教えていただくことができました。
 なお掲載している草花の名前については間違っているものもあると思いますので、ご指摘いただけるとありがたいです。

観察会レポートNO.1
1、表丹沢山麓のシダ
第1日目は表丹沢山麓のシダを観察してから塔ノ岳に登りました。
スギなどが生育する谷沿いにシダを見ながら歩きました。丹沢といっても表丹沢登山口周辺は南に面した標高300~400m程度のところなので暖地性のシダがいくつか顔を出していました。アマクサシダ、マツザカシダ、ヒメイタチシダ、オオバノアマクサシダ、オオバノヌマズイノモトソウ(マツザカシダとオオバイノモトソウの雑種ではないかと思われるシダ)などです。
幼株がスギ林の林床に生育
アマクサシダ


幼株、胞子葉はつけていない 葉は厚く辺縁には鋭い鋸葉
マツザカシダ               マツザカシダ羽片


風化した岩壁に生育 葉の表面には光沢がある
ヒメイタチシダ             ヒメイタチシダ最下羽片


約40cm、スギ林の林床斜面に生育
オオバノアマクサシダ

約40cm、オオバノハチジョウシダの幼株と酷似する 約40cm、辺縁に沿って胞子のう群がつく
オオバノアマクサシダ栄養葉      オオバノアマクサシダ胞子葉
写真の個体の大きさは40~50cm。各羽片の前側小羽片が欠けていてオオバノハチジョウシダの幼株と酷似していますが、胞子葉も各羽片の前側小羽片が欠けています(展開したばかりの葉)。前側小羽片が欠けたオオバノハチジョウシダ(成株)を今まで見たことが無いので、オオバノアマクサシダとしました。この個体についてご意見があればお聞かせいただきたいです。



側羽片の数は4~6対。 マツザカシダに似て葉は厚く硬い。
オオバノヌマズイノモトソウ(マツザカシダとオオバイノモトソウの雑種と思われる)

羽片の色は辺縁より中肋側が薄く見える。 葉は厚く硬い、辺縁の鋸歯は硬く鋭い。
オオバノヌマズイノモトソウの羽片     オオバノヌマズイノモトソウ、羽片辺縁の鋸歯
葉は光沢があり、質は厚く硬い。辺縁の鋸歯は鋭くとがる。羽軸に沿ってうすい白班が入っているように見える。側羽片の数は4~6対。大きな株であるが胞子葉はつけていない。付近にはオオバイノモトソウ・マツザカシダが見られる。スギ林内山道沿いのローム層の斜面に2~3株生育を確認。マツザカシダとオオバイノモトソウの雑種ではないかと思います。この個体についてもご意見をお聞かせいただけるとありがたいです。今後、胞子葉および胞子の形状を確認するために再度観察する必要があると思います。ここではとりあえず「オオバノヌマズイノモトソウ」とします。

     
そのほかコユルギイノモトソウ、クジャクシダ、ハカタシダ、斑入りイワガネソウ、フモトシケシダなどが普通に見られました。
葉の色先は丸みを帯び、葉柄・中軸はエンジ色~漆黒 胞子葉にソーラスを付けている部分とそうでない部分が見られる。
コユルギイノモトソウ         コユルギイノモトソウ胞子葉

中軸は漆黒
コユルギイノモトソウ中軸 


2、山麓から針葉樹林内を歩く。
山麓から中腹まではスギ・ヒノキなどの針葉樹林が続いていました。下部の林内ではムラサキニガナやホタルブクロが咲いていました。
スギ植林地林床に生育。 
ムラサキニガナ

小さな花であるが美しい紫色。 葉の辺縁には鋸歯があり、基部は心形。
ムラサキニガナの花             ムラサキニガナの葉


スギ・ヒノキ林内を登山道に沿って標高を上げていくとタニタデが顔を見せ始めました。登山道沿いにはヒメガンクビソウが葉をロゼット状に広げ、花芽をのばしていました。ヘビノネコザ・ハリゲネワラビが普通に見られました。
植林地内の登山道沿いに生育。 ハリガネワラビ葉柄は太い。 
ハリガネワラビ            ハリガネワラビの葉柄
スギ植林地林床に生育。 丸い実は微毛に覆われる。 
タニタデ                 タニタデの実と花

林内の登山道沿いに生育。葉をロゼット状に広げる。 花茎に付ける花の数は少ない。 
ヒメガンクビソウ       ヒメガンクビソウの花


3、塔ノ岳への登り針葉樹林内の岩場で。
スギ林内の岩場にはヤマイタチシダのほかにイワイタチシダもときどき見られるようになりました。ヤマイタチシダとイワイタチシダの雑種と言われるイヌイワイタチシダは普通に見られました。日陰の水がしたたるウエットな岩壁にイワタバコやイワトラノオが群生し、イワタバコの花がちょうど見ごろでした。
付近にはヤマイタチシダのほかにもイワイタチシダも見られる。 葉柄の鱗片はちじれる。 
イヌイワイタチシダ            イヌイワイタチシダの葉柄


日陰の湿度の高いウエットな岩場に群生。 イワタバコとイワトラノオがともに群生。 
イワタバコ                イワタバコとイワトラノオ


4、塔ノ岳への登り日当たりの良い草地で。
日当たりの良い草地にはフウチソウなどイネ科の植物が茂り、コウゾリナや微かに紫色を帯びる白い花を咲かせるトウギボウシ(オオバギボウシ)や鮮やかな紫色のコバノギボウシの花が咲いていました。標高が上がるにしたがってホタルブクロにかわってヤマホタルブクロが混ざるようになりました。途中の笹原にはシモツケが咲いていました。崖ややガレ場にはシモツケソウも見られるようになりました。
日当たりの良い登山道沿いに生育。 ガクにも微毛が密生する。
コウゾリナ          コウゾリナの花

茎には硬いトゲが生える。 花の色は濃い紫色。 
コウゾリナの茎    コバノギボウシ

日当たりの良い登山道沿いに生育。 白花 
ホタルブクロ        ホタルブクロ白花

ガクの耳片は反り返る。 
ホタルブクロのガク

標高が上がるとよく見られる。 ガクに耳片がない。 
ヤマホタルブクロ      ヤマホタルブクのガク


5、塔ノ岳への登り:日当たりの良い崖や裸地で。
登山道沿いの日当たりの良い崖や裸地にはウツボグサやセンブリも見られました。塔ノ岳山頂手前ではアセビ林が現われます。この辺りは風が強いためかアセビは灌木状でした。伺った話ではこのあたりのアセビは紅花のアセビとのこと、一度花の咲く時期に見てみたいと思いました。
日当たりの良い登山道沿いに生育。 日当たりの良い登山道沿いに生育。 
ウツボグサ                センブリ

登山道沿いのササ原の中に生育。
シモツケ  


6、塔ノ岳から丹沢山へ。
塔ノ岳山頂ではシカの群れがなにくわぬ顔をして登山者の周りを歩いていました。塔ノ岳からはいよいよ丹沢の中心部に向かって歩きます。丹沢山への登山道はブナやカエデ類、ナナカナド・グミの仲間・サワフタギの仲間・ヒメシャラの仲間などの大小の木が林床を覆う笹原の中に生える景色です。
大木の樹幹には各種のコケやシダ・種子植物が着生。
稜線沿いの風景
塔ノ岳と丹沢山のあいだには「竜ヶ馬場」が広がっています。ユーシンから吹く風が強いためかおよそ標高1500mの高さに、広大な笹原が広がります。丹沢山の手前までなだらかな笹原が続き、雲が切れると西側には深い谷の底に幽深(ユーシン)の白い河原を望むことがで、東側には遠くまで関東平野が見渡せます。
河原の石がほとんどトーナル岩のため白い河原。 笹原の先に丹沢山を望む。
竜ヶ馬場の西にユーシン(箒杉沢)の谷を望む     竜ヶ馬場から丹沢山を望む


7、丹沢山 みやま山荘
第1日目は天気にも恵まれ1日ゆっくり時間をかけて植物観察することができました。丹沢山みやま山荘は新しく建替えられてとてもきれいな山小屋でした。夕ご飯も朝ごはんもおいしかったです。ご飯とお味噌汁は何度もお代わりし、おなか一杯食べました。
また、明日もどんな草花に出会えるか楽しみです。雨が降らなければ、すばらしい景色も期待できます。