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2014年3月28日高尾山

平成25年3月23日(日)高尾山方面 観察会レポート

 高尾山山麓川沿いから山頂まで歩きました。今年2月の大雪ではシダをはじめ林床植物の多くは雪に押しつぶされて折れたり地表に押しつけられたようになり、相当痛んでいるものも見られました。なお、掲載した画像はすべて3月28日に撮影したものです。


川沿いの明るい林縁で                

 スギ植林地林縁や落葉広葉樹林下のやや開けた感じの明るい林内、川に沿った遊歩道沿いの斜面ではニリンソウやイチリンソウが群生していました。

 イノデの仲間、ヤブソテツの仲間、ナガバノイタチシダ、トウゲシバ、オオハナワラビ、アカハナワラビ(小株)、イヌイワガネソウ(イワガネゼンマイとイワガネソウの雑種と推定)などが見られました。

 ナガバノイタチシダは高尾山周辺ではほかに元八王子町の谷でも生育が確認されています。

 ベニシダの仲間ではベニシダ、トウゴクシダ、オオベニシダが見られました。

ナガバノイタチシダ
ナガバノイタチシダ2014年3月28高尾山 ナガバノイタチシダ、葉柄下部には膜質で幅の広い鱗片をつける。2014年3月28高尾山 
ナガバノイタチシダ(上左)
ナガバノイタチシダ、葉柄下部の鱗片(上右)
ナガバノイタチシダ、最下羽片(下左)
ナガバノイタチシダ、胞子のう群(下右)
ナガバノイタチシダ、最下羽片の柄は長い。2014年3月28高尾山 ナガバノイタチシダ、胞子のう群。2014年3月28高尾山  



ホソバトウゲシバ
ホソバトウゲシバ2014年3月28高尾山



 イノデの仲間も豊富に見られました。イノデ、アイアスカイノデ、サイゴクイノデ、カタイノデ、イノデモドキ、ツヤナシイノデなど。イノデの仲間は雑種を作りやすいものが多いようで高尾山ではそれらの雑種がよくみられます。また、時間のある時にゆっくり観察したいと思います。

 ヤブソテツの仲間はテリハヤブソテツ、ヤマヤブソテツ(ツヤナシヤマヤブソテツ)、ヒラオヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツ)、ホソバヤマヤブソテツ、ナガバヤブソテツなどが見られました。

トウゴクシダ
トウゴクシダ2014年3月28高尾山 トウゴクシダ、大きな株では最下羽片の柄は5㎜以上になる。2014年3月28高尾山
トウゴクシダ(上左)
トウゴクシダ、最下羽片の柄(上右)


オオベニシダ
オオベニシダ、葉は黄緑色。2014年3月28高尾山 オオベニシダ、最下羽片の柄は長く1㎝以上になる。2014年3月28高尾山
オオベニシダ(上左)
オオベニシダ、最下羽片の柄(上右)
 

ウエットな渓谷沿いや北面岩壁で            

 高尾山ではウエットな岩場から乾燥した岩場まで変化に富んだ岩場や岩壁が見られます。それらの環境に適応したさまざまな着生のシダ植物を観察することができます。

 ウエットな岩場・岩壁ではヒメカナワラビ、オオキヨズミシダ、ハコネシダ、ツルデンダ、イワイタチシダ、イヌイワイタチシダ、イワトラノオ、マメヅタ、ミドリカナワラビなどが見られました。

 樹齢を経たスギ林および常緑・落葉広葉樹の混生し、両側の山が迫るようなウエットで狭い渓谷沿いではヒメカナワラビとオオキヨズミシダが見られました。どちらも渓谷沿いの岩場や石垣に生育していました。

 両種を比較してみるとヒメカナワラビは繊細な感じ、小羽片が細かく小羽片間に隙間があります。それに対しオオキヨズミシダは小羽片が大きく隣り合う小羽片同士は詰まりがっちりした感じがします。鱗片の色はどちらもよく似ていますが、葉柄基部で比較すると、オオキヨズミシダのほうが幅の広い鱗片をつけています。胞子のう群はヒメカナワラビは葉身の下からつき、オオキヨズミシダは葉身の下側につかないことがありますが、高尾山では両種とも葉身全体に胞子のう群をつけている個体が見られました。

 そのほか、ウエットな日陰の切り立った岩壁や石垣ではアオホラゴケやウチワゴケも見られました。スミレモも鮮やかなオレンジ色でひときわ目を引きました。

 岩壁ではありませんが、岩場の小さな枯沢で岩屑や腐植が堆積した斜面でミドリカナワラビが1株生育していました。葉の大きさは50cmほどでミドリカナワラビにしては小さな株で胞子のう群をつけていませんでした。根茎付近にはやや太い枯れた葉柄が見られたので、今年は胞子のう群をつける葉を伸ばすのではないかと期待しています。恩方に続きまたお目にかかることができました。

ヒメカナワラビ
ヒメカナワラビ2014年3月28高尾山 ヒメカナワラビ2014年3月28高尾山

ヒメカナワラビ2014年3月28高尾山
ヒメカナワラビ(上上左・上上右)
ヒメカナワラビ、葉柄基部の鱗片(上右)
ヒメカナワラビ、羽片(下左)
ヒメカナワラビ、胞子のう群(下右)
ヒメカナワラビ、羽片。2014年3月28高尾山 ヒメカナワラビ、葉身下側から胞子のう群をつけている。2014年3月28高尾山


オオキヨズミシダ
オオキヨズミシダ2014年3月28高尾山 オオキヨズミシダ2014年3月28高尾山

オオキヨズミシダ、葉柄基部鱗片。2014年3月28高尾山
オオキヨズミシダ(上上左・上上右)
オオキヨズミシダ、葉柄基部の鱗片(上右)
オオキヨズミシダ、羽片(下左)
オオキヨズミシダ、胞子のう群(下右)
オオキヨズミシダ、羽片。2014年3月28高尾山 オオキヨズミシダ、葉身下部には胞子のう群をつけていない。2014年3月28高尾山



アオホラゴケ        
アオホラゴケ2014年3月28高尾山 アオホラゴケ、偽脈と胞子のう群。2014年3月28高尾山
アオホラゴケ(上左)
アオホラゴケ、偽脈と胞子のう群(上右)


ウチワゴケ
ウチワゴケ2014年3月28高尾山 ウチワゴケ、葉縁の一部に胞子のう群がつく。2014年3月28高尾山
ウチワゴケ(上左)
ウチワゴケ、胞子のう群(上右)



ミドリカナワラビ
ミドリカナワラビ2014年3月28日高尾山 ミドリカナワラビ2014年3月28日高尾山
ミドリカナワラビ(上左・上右)
ミドリカナワラビ、葉柄(下)
ミドリカナワラビ、最下羽片(下下)
ミドリカナワラビ、葉柄は紅色を帯びたわら色。2014年3月28日高尾山 

ミドリカナワラビ、最下羽片は3回羽状に分かれる。2014年3月28日高尾山



スミレモ
スミレモ、コンクリートの橋桁や擁壁に元気よく生育していました。2014年3月28日 高尾山


ウエットでない日陰の岩壁で              

 あまりウエットでない日陰の岩壁では、ハカタシダ、オニカナワラビ、ツルデンダ、イワイタチシダ、イヌイワイタチシダ、オオイタチシダの各type、イワトラノオなどが見られました。

 ハカタシダは岩場や崖で標高にかかわらず多く見られました。多少ウエットなところから乾燥気味のところまで広く生育しています。ただし、中軸や羽軸に沿って斑が入る個体は非常に少なく、ほとんどが斑が入らない個体です(斑入りの個体は採取されてしまうこともあると思いますがやはり関西方面よりはずっと少ないようです)。標高を上げるとハカタシダ以外にオニカナワラビも見られました。

 オオイタチシダの各typeがよく見られました。type1(アツバオオイタチシダあるいはナガバオオイタチシダとよばれるtype)、type2(ベニオオイタチシダあるいは長葉型オオイタチシダとよばれるtype)、type3(ツヤナシオオイタチシダとよばれるtype)【註1】参照、type4(アオニオオイタチシダあるいはヒロハオオイタチシダ)などいろいろみられました。

【註1】 アケボノオオイタチシダは新芽の色や若い包膜の色で見分ける以外はツヤナシオオイタチシダと似ているのでツヤナシオオイタチシダと同じtypeとしてよいのではないかとも思っています。

ツルデンダ
ツルデンダ2014年3月28高尾山 ツルデンダ、ランナーの先端につく無性芽。2014年3月28高尾山



イワイタチシダ
イワイタチシダ、葉は披針形で青味を帯びる。2014年3月28高尾山 イワイタチシダ、葉柄鱗片は葉柄に放射状に真横に開出せてつく。2014年3月28高尾山



オオイタチシダtype4(アオニオオイタチシダあるいはヒロハオオイタチシダ)
アオニオオイタチシダ2014年3月28日高尾山



ハカタシダとオニカナワラビ
ハカタシダ、頂羽片がある。2014年3月28高尾山 オニカナワラビ、頂羽片がない。2014年3月28日高尾山 
ハカタシダ(上左)
オニカナワラビ(上右)



イワトラノオ
イワトラノオ2014年3月28高尾山 イワトラノオ、胞子のう群。2014年3月28高尾山


明るい乾燥気味の岩場や岩壁で             

 乾燥気味の岩場では、イワヒバ、サクライカグマ、トラノオシダ、コバノヒノキシダ、アイトキワトラノオ(トキワトラノオ×コバノヒノキシダの雑種と推定)、クモノスシダ、イワデンダ、ノキシノブ、ヒメノキシノブ、ミツデウラボシ、ビロウドシダなどが見られました。

 同行の方のお話ではトキワトラノオも見られるそうですが今回は確認できませんでした。

 日当たりのよい岩の間からイワデンダが春一番に新芽を伸ばしていました。

 サクライカグマは、高尾山では石垣に生育する以外では南面の常緑広葉樹のあいだから木漏れ日が差し込むようなやや明るい乾燥した岩壁に生育していました。

ビロウドシダ
ビロウドシダ2014年3月28日高尾山 

ビロウドシダ、葉の表面。2014年3月28日高尾山 ビロウドシダ、胞子のう群。2014年3月28日高尾山



ヒメノキシノブ
岩壁に着生するヒメノキシノブ2014年3月28日高尾山 梅の幹に着生するヒメノキシノブ、胞子のう群は葉身先端にまとまってつく。2014年3月28日高尾山 


アイトキワトラノオ(トキワトラノオ×コバノヒノキシダの雑種と推定)
アイトキワトラノオ、写真では分かりにくいが葉の質が薄い。2014年3月28日高尾山 アイトキワトラノオ、葉身下部。2014年3月28日高尾山



サクライカグマ
風化した岩壁に生育するサクライカグマ2014年3月28日高尾山 サクライカグマ、最下羽片。2014年3月28日高尾山
サクライカグマ(上左)
サクライカグマ、最下羽片(上右)


イワデンダ        クモノスシダ
陽当たりのよい庭園の石組みで繁殖するイワデンダ2014年3月28日高尾山 寺院の石造物に着生するクモノスシダ2014年3月28日高尾山


中腹~尾根沿いの落葉広葉樹林の林床で         

 フモトシダの仲間は、イヌシダ、フモトシダ、ケブカフモトシダ、フモトカグマが見られました。

 フモトシダは標高の低いところから高いところまで、沢から離れた乾燥気味の林床斜面で普通に見られました。

 稜線部北面のブナ、イヌブナが生育する斜面ではフモトカグマが10株程度生育していました。

 高尾山山頂北面ではケブカフモトシダも1株生育していました(ケブカフモトシダは葉を斜め上に勢いよく立ち上げることが多いですが、大雪で倒れていました)。

 山頂駅付近から高尾山山頂へと標高を上げるとリョウトウイタチシダとヒメイタチシダがみられます。高尾山は両種をすぐそば比較して観察できるよいポイントです。両種は葉柄および中軸の鱗片の色と形以外は似ていません。両種は稜線付近の林床に生育しています。ヒメイタチシダは関西の山では見る機会は多いですが関東では珍しいシダです。また、高尾山周辺の山ではもっと標高の低いところでも生育が確認されています。葉の色や形・葉の質感など一目で分かるのでここでは生態画像をいくつか紹介します。

 また、山頂付近ではナンゴクナライシダが倒れていましたが、枯れずに残っていました。

フモトシダ
フモトシダ2014年3月28日高尾山 フモトシダ、葉柄表側。2014年3月28日高尾山
フモトシダ(上左)
フモトシダ、葉柄表側(上右)
フモトシダ、中軸表側(下左)
フモトシダ、中軸裏側(下右)
フモトシダ、胞子のう群(下下)
フモトシダ、中軸表側。2014年3月28日高尾山 フモトシダ、中軸裏側。2014年3月28日高尾山

フモトシダ、胞子のう群。2014年3月28日高尾山



ケブカフモトシダ
ケブカフモトシダ2014年3月28日高尾山 ケブカフモトシダ、葉柄。2014年3月28日高尾山
ケブカフモトシダ(上左)
ケブカフモトシダ、葉柄(上右)
ケブカフモトシダ、中軸表側(下左)
ケブカフモトシダ、中軸裏側(下右)
ケブカフモトシダ、胞子のう群(下下)
ケブカフモトシダ、中軸表側。2014年3月28日高尾山 ケブカフモトシダ、中軸裏側。2014年3月28日高尾山

ケブカフモトシダ、胞子のう群。2014年3月28日高尾山

フモトカグマ
フモトカグマ2014年3月28日高尾山 

フモトカグマ、中軸表側。2014年3月28日高尾山 フモトカグマ、中軸裏側。2014年3月28日高尾山
フモトカグマ(上上)
フモトカグマ、中軸表側(上左)
フモトカグマ、中軸裏側(上右)
フモトカグマ、胞子のう群(下)
フモトカグマ、胞子のう群。2014年3月28日高尾山



リョウトウイタチシダ
リョウトウイタチシダ、葉の質は薄い紙のよう。冬期は倒れる。2014年3月28日高尾山 リョウトウイタチシダ、葉身は狭い三角形。2014年3月28日高尾山 リョウトウイタチシダ、葉の色は白緑色~黄緑色。2014年3月28日高尾山

リョウトウイタチシダ、夏季の生育のようす(参考)2013年9月6日高尾山
リョウトウイタチシダ(上上左、上上中、上上右、上)
リョウトウイタチシダ、葉柄下部鱗片(下左、下右)
リョウトウイタチシダ、最下羽片(下下)
リョウトウイタチシダ、葉柄下部鱗片。2014年3月28日高尾山 リョウトウイタチシダ、葉柄下部鱗片。2014年3月28日高尾山

リョウトウイタチシダ、葉柄下部鱗片。2014年3月28日高尾山



ヒメイタチシダ
リョウトウイタチシダ2014年3月28日高尾山 ヒメイタチシダ、葉の色は鮮やかな緑色で厚くはないが革質。2014年3月28日高尾山 

ヒメイタチシダ、最下羽片下側小羽片が発達し、葉の形は幅の広い三角形~五角形。2014年3月28日高尾山 ヒメイタチシダ、夏季の生育のようす(参考)2013年9月6日高尾山
ヒメイタチシダ(上上左、上上右、上左、上右)
ヒメイタチシダ、葉柄下部鱗片(下左、下中、下右)
ヒメイタチシダ、中軸下部鱗片(下下左)
ヒメイタチシダ、最下羽片(下下右)
ヒメイタチシダ、葉柄下部鱗片。2014年3月28日高尾山 ヒメイタチシダ、葉柄下部鱗片。2014年3月28日高尾山 ヒメイタチシダ、葉柄下部鱗片。2014年3月28日高尾山

ヒメイタチシダ、中軸下部鱗片。2014年3月28日高尾山 ヒメイタチシダ、最下羽片。2014年3月28日高尾山



ナンゴクナライシダ
ナンゴクナライシダ、冬でも枯れずに残る。2014年3月28日高尾山 ナンゴクナライシダ、羽軸や小羽軸には毛が密に生える。2014年3月28日高尾山
ナンゴクナライシダ(上左)
ナンゴクナライシダ、羽軸(上右)


高尾山で見られた早春の花や蝶             

落葉樹林の川沿いの畔で
ニリンソウ2014年3月28高尾山 イチリンソウ、花芽はまだです。2014年3月28高尾山
ニリンソウ(上左)
イチリンソウ(上右)
フサザクラ(下左)
テングチョウ(下右)
フサザクラ2014年3月28高尾山 越冬のテングチョウ2014年3月28高尾山



ウエットな日陰の渓谷で
ハナネコノメ2014年3月28高尾山 ヤマネコノメ2014年3月28高尾山
ハナネコノメ(上左)
ヤマネコノメ(上右)



落葉樹林の林内・林縁で
ナガバスミレサイシン2014年3月28高尾山 ヒナスミレ2014年3月28高尾山
ナガバスミレサイシン(上左)
ヒナスミレ(上右)
ヤマルリソウ(下)
ヤマルリソウ2014年3月28高尾山

 今回、イワデンダ以外は夏緑性のシダはまだ芽を伸ばしていませんでした。同行の方の話ではミヤコイヌワラビやハコネシケチシダなどの夏緑性のシダも見られるとのことでした。暖かくなったら、また改めてゆっくり歩いてみたいと思います。