Top / 観察会レポート / 平成28年6月12日(日)箱根千条ノ滝-鷹巣山周辺
箱根では現在も大涌谷を中心に半径700mの範囲で立ち入り禁止が続いていますがだんだん火山活動も終息に向かっているようです。今回は小涌谷に沿って入り千条ノ滝から浅間山、鷹巣山周辺を歩きました。
メシダ属の仲間
ヤマイヌワラビやヒロハイヌワラビ、ヘビノネコザが見られました。数は少ないですがカラクサイヌワラビも見られました。
ヤマイヌワラビは多様です。胞子のう群をつけた成株でも葉の大きさは25~90㎝と変化がある。小羽片の形は大きな個体では楕円状三角形で鋭頭中~深裂しますが、小さな株では広三角形で先端は鈍頭辺縁は鋸歯縁のような個体まで見られます。胞子のう群は鈎型以外にも短い線形のみをつける個体も見られる。
カラクサイヌワラビは葉の質感や色などはヒロハイヌワラビに似ていますが、小羽片の形はどちらかというとヤマイヌワラビに似ていています。今回もヤマイヌワラビが大量に生育している中にカラクサイヌワラビがあり区別できず危うく通り過ぎるところでしたが、目ざとい方が気が付かれていねいに観察することができました。
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カラクサイヌワラビ、葉柄基部(上左)
カラクサイヌワラビ、葉柄基部の鱗片(上右)
カラクサイヌワラビ、羽片(上左)
カラクサイヌワラビ、胞子のう群(上右)
シケシダの仲間
沢沿いや林床でよく見られたシケシダやホソバシケシダは胞子をつけていましたが、スギ林林床で見られたフモトシダと思われるシダは地表に柄の短い栄養葉を広げ柄の長い胞子葉を伸ばし始めたばかりでした。
ホソバシケシダ
ホソバシケシダ(上左)
ホソバシケシダ、胞子のう群(上右)
不明なシケシダの仲間
標高700~800m付近のウエットなスギ林林床に群生。このあたりの標高ですとまだ栄養葉をつけただけで、胞子葉はやっと伸び始めたばかりでした。シケシダの場合胞子のう群や包膜の形を確認しないと名前を付けようがありません。今回のシダも改めて胞子のう群や包膜が確認できる頃に観察してみたいと思います。
不明なシケシダの仲間(上左)
不明なシケシダの仲間、新芽(上右)
イノデの仲間
アイアスカイノデ、イノデ、ツルデンダ、ジュウモンジシダ、サイゴクイノデ、ツヤナシイノデ、イノデモドキなどを観察することができました。今回は800m付近でもツヤナシイノデが見られました。
ツヤナシイノデ
ツヤナシイノデ(上左)
ツヤナシイノデ、胞子のう群(上右)
カナワラビ属の仲間
リョウメンシダは渓谷沿いで見られましたが、少し目につく程度でした。ナライシダの仲間については数は多くありませんが、以前、鷹巣山の南面、飛龍の滝周辺の同様な標高・植生のところでナンゴクナライシダを観察したことがあります。今回は鷹巣山と浅間山の鞍部付近のスギ・ヒノキ林でホソバナライシダが見られました。同様なスギ・ヒノキ林尾根筋でオニカナワラビも見られました。
ホソバナライシダ
以前、鷹巣山の南面、飛龍の滝周辺の同様な標高のところでナンゴクナライシダを観察したことがあります。今回は鷹巣山と浅間山の鞍部ですが同様なスギ・ヒノキ林でホソバナライシダが見られました。
ホソバナライシダ(上左)
ホソバナライシダ、葉柄の鱗片(上右)
ホソバナライシダ、羽軸・小羽軸(上左)
ホソバナライシダ、胞子のう群(上右)
オシダ属の仲間
いろいろなベニシダ・イタチシダの仲間が見られました。
ベニシダやキノクニベニシダ、その両者の紛らわしい個体、オオベニシダなど。オオイタチシダやヤマイタチシダ、リョウトウイタチシダ、ミヤマイタチシダなどです。
小羽片が長く、羽片が重なり合うベニシダ
鷹巣山東面、中央火口丘の一部の高台の上に広がる緩やかな谷の中。スギ・ヒノキ林林床で外観が八丈島や神武寺で見られるハチジョウベニシダによく似た個体が観察されました。ただし、まだ胞子をつけている葉をつけていなかったので、胞子のう群をつけた葉の形はまた違ってくることも考えられます。普通のベニシダの可能性もありますが、今後成長を待って胞子の数を調べてみたいと思います。染色体数を調べる方法は大変そうなので胞子をつけるのを待ちたいと思います。参考に八丈島産 ?のハチジョウベニシダの画像も紹介します。
キノクニベニシダ
千条ノ滝ー浅間山間、やや乾燥気味の尾根道でときどき見られた。
キノクニベニシダ
キノクニベニシダ、胞子のう群(上左)
キノクニベニシダ、包膜(上右)
イワヘゴ
千条ノ滝周辺では苔むした転石や岩壁にイワヘゴやミツデウラボシ、アイアスカイノデ、オオイタチシダ(ツヤナシオオイタチシダtype)などが生育していました。
イワヘゴ(上左)
イワヘゴ、葉身下部(上右)
オオイタチシダ(ツヤナシオオイタチシダtype)
ツヤナシオオイタチシダtype(上左)
ツヤナシオオイタチシダtype、新芽(上右)
リョウトウイタチシダ
浅間山北面中腹でリョウトウイタチシダを観察しました。夏緑広葉樹およびスギが生育する急斜面mところどころ岩が露出し、地表や岩上にも生育。
リョウトウイタチシダ、葉柄下部の鱗片(上左)
リョウトウイタチシダ、新芽(上右)