田浦から畠山を経て葉山側まで歩きました。谷筋に沿ってスギが植林され渓谷では色々なシダを観察することができました。
アオホラゴケ属の仲間
アオホラゴケ
開けた渓谷の転石の側面に群生していました。葉の大きさは4~7㎝。
ハイホラゴケ属の仲間 訂正いたします。2018年3月5日
ミウラハイホラゴケオオハイホラゴケ
三浦半島、鎌倉、箱根など太平洋沿岸では雑種のハイホラゴケの仲間がよく観察されるが、今回観察した種は胞子の数・形状からミウラハイホラゴケオオハイホラゴケと考えられる。
観察会ではオオハイホラゴケといたしましたが、その後、シダの会の方からミウラハイホラゴケ(有性生殖種)であるとのご指摘を受け訂正いたします。ミウラハイホラゴケは最近発見された種でそのルーツは南方系のオオハイホラゴケと北方系のヒメハイホラゴケが関わってできた種とのこと。確かに八丈島で観察したオオハイホラゴケは根茎も太く、葉の長さは30~35㎝、幅は10~12㎝ありました。また山形・秋田で見たヒメハイホラゴケは10㎝程度と小さなシダでした。2018年3月5日
(1),(2)泥砂岩の崖に群生するミウラハイホラゴケオオハイホラゴケ
(1)ミウラハイホラゴケオオハイホラゴケ、胞子数
(2)ミウラハイホラゴケオオハイホラゴケ、胞子数
(3)ミウラハイホラゴケオオハイホラゴケ、胞子数
ハイホラゴケの仲間
葉の大きさ5~7㎝の小さなハイホラゴケと思われる株を観察。ハイホラゴケの仲間は普通ウエットなところに生育するが、明るくややドライな切り立った崖の下部に群生。胞子嚢群を見つけることができず、雑種か有性生殖種か判断できないのでハイホラゴケの仲間とします。
ハナワラビの仲間
シチトウハナワラビ
同行の方に案内していただきました。小高い丘の稜線部雑木林の疎林で周辺には見渡す範囲で20株程度生育し、オオハナワラビと混生。小羽片の幅は狭く先端は尖りぎみで鋭頭に近くなる。ゆっくり探せば雑種も見つかると思われる。その他丘陵地の裾野の急斜面でもやや普通に見られた。胞子は膨らんで大きさ・形ともどれも整い雑種ではないと考えられる。
(1)シチトウハナワラビ、胞子上面
(2)シチトウハナワラビ、胞子側面
(1)シチトウハナワラビ、胞子上面
(2)シチトウハナワラビ、胞子側面
オオハナワラビ
場所によってはシチトウハナワラビと混生。シチトウハナワラビにくらべ①小羽片の幅が広く、②裂片の辺縁の鋸歯が鋭い。
今回胞子を観察しなかったが生育地の状況からオオハナワラビとシチトウハナワラビの雑種(ゴジンカハナワラビ)が生育している可能性も十分に考えられる。外観が怪しい個体は胞子の形状を調べてみると雑種が見つかるかもしれない。
フモトシダの仲間
フモトシダ以外に山麓の川沿いの林縁でフモトカグマが見られました。
イノモトソウの仲間
イノモトソウ、オオバノイノモトソウ、マツザカシダなどが見られました。
シケシダの仲間
ナチシケシダ
今回のコースではまだ枯れずに観察する事が出来た。夏緑広葉樹などが生育する明るい林縁屋スギ林林床まで広く観察された。全体の形はシケシダに似るが葉脈上の毛のせいか手触りは厚く感じる。包膜の辺縁は和紙を裂いたように鋭い鋸歯を持つ。
ノコギリシダの仲間
ノコギリシダ
上部をスギの樹冠に覆われた谷筋、泥岩の崖や林床斜面にやや普通に群生していました。羽片は細長く先は鎌曲する。
葉が波打ち羽片は広いノコギリシダの仲間
外観は普通のノコギリシダにくらべ①羽片の長さにくらべ幅が広い。②羽片の先はあまり鎌曲しない。③葉身はうねるように波打つ。④耳垂にも胞子嚢群をつける。などの違いが見られました。胞子は季節柄飛んでしまっていて確認することはできませんでした。普通のノコギリシダの変異の範囲かもしれませんがアカメクジャク(ノコギリシダとイヨクジャクの雑種)の可能性もあり機会があれば改めて胞子を観察してみたいと思います。
(1)葉の広いノコギリシダの仲間、葉身下部
(2)葉の広いノコギリシダの仲間、葉身上部
(1)葉の広いノコギリシダの仲間、羽片
(2)葉の広いノコギリシダの仲間、羽片裏側
ヤブソテツの仲間
テリハヤブソテツ、ヤブソテツ(ツヤナシヤマヤブソテツ、テリハヤマヤブソテツ、ホソバヤマヤブソテツ)、ナガバヤブソテツなどが見られました。
テリハヤブソテツ
明るい林縁・人家周辺の石垣などで観察。
ナガバヤブソテツ
明るい林縁・人家周辺の石垣などで観察。
ツヤナシヤマヤブソテツ
山地林床で観察。
テリハヤマヤブソテツ
上部を樹冠に覆われたウエットな谷筋の崖で観察。
テリハヤマヤブソテツ
上部を樹冠に覆われたウエットな谷筋の崖に生育。
ホソバヤマヤブソテツ
山地林縁で観察。
イノデの仲間
アスカイノデ、イノデ、ミウライノデ(アスカイノデ×イノデ)、ドウリョウイノデ(アイアスカイノデ×イノデ)などが見られました。
ドウリョウイノデ(アイアスカイノデ×イノデ)
アイアスカイノデとイノデの雑種と推定される。
ドウリョウイノデ、胞子嚢群
オリヅルシダ
スギの樹冠に覆われた泥岩の切り立った泥岩の崖に群生。葉は50㎝近くあり、葉身の先端からランナーを伸ばし先端に無性芽をつけ繁殖していた。
ウラボシ科の仲間
クリハラン
上部をスギの樹冠に覆われた泥砂岩の切り立った崖に群生。葉の大きさは40~60㎝ありよく成長していた。
おしまいに
今回は尾根に至るコースが険しくブッシュもあり、参加された方には大変ご迷惑をおかけしました。
田浦側の谷は険しく歩きにくいが泥岩の崖も多く見られ、興味深いシダが多数見られたのでまた改めてゆっくり観察してみたいと思います。怪しいノコギリシダの胞子も観察してみたいと思います。