Top / 観察会レポート / 平成29年7月2日(日)西沢渓谷(第2回)


ホソイノデ。2017年7月2日 西沢渓谷
西沢渓谷の第2回目です。渓谷の標高は1100m~1400mあります。渓谷内を歩いていても、標高を上げるに従い植生が変化することを実感しました。深い渓谷と変化に富んだ滝がいくつもあり美しい観察コースでした。
 全体を通してよく見られたシダはホソバコケシノブ、フクロシダ、イワデンダ、オサシダ、シシガシラ、ヤマイヌワラビ、ツルデンダ、イワシロイノデ、イワイタチシダあるいはイヌイワイタチシダ、ナンタイシダ、ミヤマイタチシダ、ミヤマクマワラビ、オシダ、ミツデウラボシ、ミヤマウラボシ、などでした。

コスギラン属の仲間

渓谷沿いではトウゲシバの仲間ではトウゲシバ、ヒメスギランを観察。

ヒメスギラン
Huperzia miyoshiana ヒカゲノカズラ科 コスギラン属
ウエットな岩壁に着生していた。大きさは12㎝程度。小葉は針状で途中で分岐して枝を出す。小葉の長さは2~3㎜で小葉の付け根にには2枚貝状の胞子嚢をつける。先端にはエビの尻尾のような無性芽をつける。

ヒメスギラン。2017年7月2日 西沢渓谷 ウエットな岩壁に生育するヒメスギラン。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)、(2)ウエットな岩壁に生育するヒメスギラン

ヒメスギラン、葉腋にはコスギラン属特有の2枚貝状の胞子嚢をつける。2017年7月2日 西沢渓谷 ヒメスギラン、葉腋にはコスギラン属特有の2枚貝状の胞子嚢をつける。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ヒメスギラン、中間の茎
(2)ヒメスギラン、先端付近

ヒメスギラン、先端付近には無性芽(むかご)をつける。2017年7月2日 西沢渓谷
ヒメスギラン、無性芽(むかご)




コケシノブの仲間

コケシノブのなかまではホソバコケシノブ、ヒメコケシノブ、コケシノブを観察。

コケシノブ
Hymenophyllum wrightii コケシノブ科 コケシノブ属
標高の高いところで見られた。1か所に沢山群生していたが生育地点数は少ないようである。、夏緑広葉樹林内林床の樹木の切り株に根元から樹幹を覆うようにして生育。葉の大きさは小さく1.5~2.5㎝程度。
コケシノブ、2回羽状に分かれ羽片は下向き(狭い角度)につく。葉脈は濃い色を示す。2017年7月2日 西沢渓谷 切り株にコケの仲間と共に群生するコケシノブ。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)コケの仲間と共に生育するコケシノブ
(2)切り株に群生するコケシノブ

コケシノブ、胞子嚢群。2017年7月2日 西沢渓谷 コケシノブ、包膜は全縁。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)コケシノブ、胞子嚢群
(2)コケシノブ、包膜




ナヨシダの仲間

ナヨシダの仲間ではヤマヒメワラビを観察しました。

ヤマヒメワラビ生育の悪いナンタイシダ
Cystopteris sudetica ナヨシダ科 ナヨシダ属 
切り立った岩壁の基部、日陰の水が滴る岩上にやや間隔をあけて20枚程度の葉をつけていた。はっきりとした胞子嚢群も確認できず、現地では近くにナンタイシダが生育していたので、生育の悪いナンタイシダと思いそのままにしていた。
※ヤマヒメワラビとしたものを生育の悪いナンタイシダに訂正いたします。2022年11月10日
<del>ヤマヒメワラビ</del>生育の悪いナンタイシダ。2017年7月2日 西沢渓谷 
ヤマヒメワラビ

<del>ヤマヒメワラビ</del>生育の悪いナンタイシダ、葉柄基部の鱗片。2017年7月2日 西沢渓谷 <del>ヤマヒメワラビ</del>生育の悪いナンタイシダ、羽片裏側。2017年7月2日 西沢渓谷 
(1)ヤマヒメワラビ生育の悪いナンタイシダ、葉柄基部の鱗片
(2)ヤマヒメワラビ生育の悪いナンタイシダ、羽片裏側

<del>ヤマヒメワラビ</del>生育の悪いナンタイシダ、最下羽片。2017年7月2日 西沢渓谷 <del>ヤマヒメワラビ</del>生育の悪いナンタイシダ、最下羽片。2017年7月2日 西沢渓谷 
(1)、(2)ヤマヒメワラビ生育の悪いナンタイシダ、最下羽片

<del>ヤマヒメワラビ</del>生育の悪いナンタイシダ、小羽片。2017年7月2日 西沢渓谷 <del>ヤマヒメワラビ</del>生育の悪いナンタイシダ、小羽片裏側。2017年7月2日 西沢渓谷 
(1)、(2)ヤマヒメワラビ生育の悪いナンタイシダ、小羽片

<del>ヤマヒメワラビ</del>生育の悪いナンタイシダ、胞子嚢群か。2017年7月2日 西沢渓谷 
ヤマヒメワラビ生育の悪いナンタイシダ、胞子嚢群か(写真ピンボケ)




チャセンシダの仲間

チャセンシダの仲間ではイワトラノオとヒメイワトラノオを観察しました。

ヒメイワトラノオ
Asplenium capillipes チャセンシダ科 チャセンシダ属 
ウエットな岩壁(花崗岩質)の岩の裂け目に生育。1m四方程度の範囲に15株程度生育。生育地点数は少ないようである。葉の大きさは4~8㎝、葉柄は葉身よりも長くなることがある。2回羽状に分かれる。小羽片は瓜実形。ある程度の大きさの葉はほとんど中軸の途中に無性芽をつける。一般には石灰岩地帯に生えると言われている。観察された胞子数は30個程度確認できアポガミー(無融合生殖種)と思われる。
ヒメイワトラノオ。2017年7月2日 西沢渓谷 ヒメイワトラノオ。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)、(2)ヒメイワトラノオ

ヒメイワトラノオ、葉身は2回羽状に分かれる。2017年7月2日 西沢渓谷 ヒメイワトラノオ、羽片、中軸上には無性芽がつく。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ヒメイワトラノオ、葉身
(2)ヒメイワトラノオ、羽片

ヒメイワトラノオ、葉身よりも葉柄のほうが長い。2017年7月2日 西沢渓谷 ヒメイワトラノオ、包膜。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ヒメイワトラノオ、葉柄と葉身
(2)ヒメイワトラノオ、包膜

ヒメイワトラノオ、、無性芽(むかご)2017年7月2日 西沢渓谷 ヒメイワトラノオ、無性芽(むかご)2017年7月2日 西沢渓谷
(1)、(2)ヒメイワトラノオ、無性芽(むかご)

ヒメイワトラノオ、胞子数は30個以上確認できる。2017年7月2日 西沢渓谷
ヒメイワトラノオ、胞子数

ヒメイワトラノオ、胞子上面。2017年7月2日 西沢渓谷 ヒメイワトラノオ、胞子側面。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ヒメイワトラノオ、胞子上面
(2)ヒメイワトラノオ、胞子側面

ヒメイワトラノオ、胞子上面。2017年7月2日 西沢渓谷 ヒメイワトラノオ、胞子側面。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ヒメイワトラノオ、胞子上面
(2)ヒメイワトラノオ、胞子側面

ヒメイワトラノオ、胞子上面。2017年7月2日 西沢渓谷 ヒメイワトラノオ、胞子側面。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ヒメイワトラノオ、胞子上面
(2)ヒメイワトラノオ、胞子側面

ヒメイワトラノオ、胞子上面。2017年7月2日 西沢渓谷 ヒメイワトラノオ、胞子側面。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ヒメイワトラノオ、胞子上面
(2)ヒメイワトラノオ、胞子側面





イワトラノオ

標高が高いためか意外と少なく北斜面のウエットな岩場でわずかに見られました。
イワトラノオ。2017年7月2日 西沢渓谷 イワトラノオ、胞子数は60個以上確認できる。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)イワトラノオ
(2)イワトラノオ、胞子数

イワトラノオ、胞子上面。2017年7月2日 西沢渓谷 イワトラノオ、胞子側面。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)イワトラノオ、胞子上面
(2)イワトラノオ、胞子側面

イワトラノオ、胞子上面。2017年7月2日 西沢渓谷 イワトラノオ、胞子側面。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)イワトラノオ、胞子上面
(2)イワトラノオ、胞子側面

イワトラノオ、胞子上面。2017年7月2日 西沢渓谷 イワトラノオ、胞子側面。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)イワトラノオ、胞子上面
(2)イワトラノオ、胞子側面




ヒメシダの仲間

公園入口では明るい草原にヒメシダが群生していました。渓谷沿いでは林床にミヤマワラビ、岩場や崖などではイワハリガネワラビが見られました。

イワハリガネワラビ
Thelypteris musashiensis ヒメシダ科 ヒメシダ属
イワハリガネワラビ。2017年7月2日 西沢渓谷
イワハリガネワラビ




イワデンダ属の仲間

イワデンダとフクロシダは岩場や岩壁では普通に見られました。

フクロシダ
Woodsia manchuriensis イワデンダ科 イワデンダ属
岩壁にミヤマウラボシと共に生育するフクロシダ。2017年7月2日 西沢渓谷 
フクロシダ




シシガシラの仲間

シシガシラの仲間ではシシガシラとオサシダが見られました。ミヤマシシガシラも見つかる可能性があると思います。

オサシダ

切り立った岩壁ではよく見られました。
岩壁に生育するオサシダ。2017年7月2日 西沢渓谷 オサシダ、葉身。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)岩壁に生育するオサシダ
(2)オサシダ、葉身




メシダ属の仲間

イッポンワラビや大きなヤマイヌワラビが見られました。

イッポンワラビ
Athyrium crenulatoserrulatum メシダ科 メシダ属
標高を上げるに従い次第に普通に見られるようになりました。群生して生育していました。
葉の大きさの割合に対して葉柄や中軸はやや太い感じがする。葉の質感は草質で葉柄・中軸・羽片まで柔らかい感じがする。全体に淡い黄緑色で羽軸の分岐はやや紅色を示す。胞子嚢群は円形~楕円形。
イッポンワラビ。2017年7月2日 西沢渓谷 イッポンワラビ。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)、(2)イッポンワラビ

群生するイッポンワラビ。2017年7月2日 西沢渓谷
群生するイッポンワラビ

イッポンワラビ、羽軸の付け根(最下羽片)。2017年7月2日 西沢渓谷 イッポンワラビ、羽軸の付け根。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)イッポンワラビ、羽軸の付け根(最下羽片)
(2)イッポンワラビ、羽軸の付け根

イッポンワラビ、中軸および羽片。2017年7月2日 西沢渓谷 イッポンワラビ、羽軸および小羽片。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)イッポンワラビ、羽片
(2)イッポンワラビ、小羽片

イッポンワラビ、胞子嚢群。2017年7月2日 西沢渓谷 イッポンワラビ、胞子嚢群。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)、(2)イッポンワラビ、胞子嚢群





ヤマイヌワラビ
Athyrium vidalii メシダ科 メシダ属
葉の大きさが大きいものでは1mに達する個体が見られました。
ヤマイヌワラビ。2017年7月2日 西沢渓谷
ヤマイヌワラビ

ヤマイヌワラビ、最下羽片の柄は1㎝程度ある。2017年7月2日 西沢渓谷 ヤマイヌワラビ、胞子嚢群。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ヤマイヌワラビ、羽片
(2)ヤマイヌワラビ、胞子嚢群




シケシダの仲間

シケシダの仲間では、ミヤマシケシダの仲間が多く見られました。一般にハクモウイノデ・ミヤマシケシダ・ウスゲミヤマシケシダの3種類ですが、西沢渓谷ではもう1種類「毛深いウスゲミヤマシケシダあるいはウスゲミヤマシケシダ×ハクモウイノデの雑種」が見られました。そのほかたぶんホソバシケシダ、フモトシケシダと思われるシケシダの仲間が見られましたがまだ胞子をつけていませんでした。

ハクモウイノデ
Deparia orientalis メシダ科 シケシダ属
中形のミヤマシケシダの仲間。葉の大きさは35~60㎝。やや2形性を示し胞子葉は立ち上がる。根茎の径は2~3㎝太いものでは4㎝程度。葉柄基部~中軸にかけて白い毛が密に生え、基部には半透明の鱗片が混ざる。夏緑広葉樹林内林床~林縁にかけて見られる。西沢渓谷では標高は低いところ、私たちにとってなじみ深いミヤマシケシダに仲間
ハクモウイノデ。2017年7月2日 西沢渓谷 ハクモウイノデ、葉柄には半透明の鱗片と毛を密につける。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ハクモウイノデ
(2)ハクモウイノデ、葉柄





ミヤマシケシダ
Deparia pycnosora メシダ科 シケシダ属
小形~中形のミヤマシケシダの仲間。葉の大きさは35~50㎝。根茎の径は2~3㎝。葉柄基部には膜質淡褐色~褐色の鱗片が貼りつくようにつくが葉柄は無毛。葉柄は細く太さは2~3㎜程度。主に渓谷沿いの夏緑広葉樹林内斜面林床で観察。やや標高を上げるとみられるようになる。葉柄基部に鱗片がつくが葉柄下部~中軸には鱗片や毛をつけない。根茎の直径は2~3㎝。葉柄葉細く太さは2㎜程度。
ミヤマシケシダ。2017年7月2日 西沢渓谷 ミヤマシケシダ、根茎。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ミヤマシケシダ
(2)ミヤマシケシダ、根茎

ミヤマシケシダ、葉柄および葉身。2017年7月2日 西沢渓谷 ミヤマシケシダ、羽片。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ミヤマシケシダ、葉柄および葉身
(2)ミヤマシケシダ、羽片





ウスゲミヤマシケシダ
Deparia mucilagina メシダ科 シケシダ属
大形のミヤマシケシダの仲間。葉の大きさは100㎝程度。やや2形性。根茎の太さ(径)は8㎝程度になる。根茎の付け根は粘液に包まれる。葉柄基部には膜質淡褐色~褐色の鱗片が貼りつくようにつくが葉柄は無毛~わずかに毛が生える。中軸下部は無毛~わずかに毛が生え上部では多少毛が生える。林内および渓谷沿いの森が開けた場所で高生草本類と共に生育。西沢渓谷では標高の高いところで見られた。
ウスゲミヤマシケシダ。2017年7月2日 西沢渓谷 ウスゲミヤマシケシダ。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)、(2)ウスゲミヤマシケシダ

ウスゲミヤマシケシダ、根茎の付け根は粘液に包まれる。2017年7月2日 西沢渓谷 ウスゲミヤマシケシダ、葉柄から中軸にかけて無毛~わずかに毛が生える。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ウスゲミヤマシケシダ、根茎の付け根
(2)ウスゲミヤマシケシダ、葉柄~中軸

ウスゲミヤマシケシダ、中軸表側。裏側には多少毛が生えていることが分かる。2017年7月2日 西沢渓谷 ウスゲミヤマシケシダ、中軸裏側(下部)。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ウスゲミヤマシケシダ、中軸表側
(2)ウスゲミヤマシケシダ、中軸裏側

ウスゲミヤマシケシダ、羽片。2017年7月2日 西沢渓谷 ウスゲミヤマシケシダ、胞子嚢群。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ウスゲミヤマシケシダ、羽片
(2)ウスゲミヤマシケシダ、胞子嚢群





毛深いウスゲミヤマシケシダか、ウスゲミヤマシケシダ×ハクモウイノデの雑種
メシダ科 シケシダ属
中形~大形のミヤマシケシダの仲間。ウスゲミヤマシケシダに似た大形のシダで根茎の付け根は湿っている程度で粘液がほとんど見られず、葉柄上部~中軸にかけて白色の毛が多い。改めて胞子のようすを観察して雑種かどうか判断したいと思います。

葉柄の中部~上部にかけて白い毛が密に生える。2017年7月2日 西沢渓谷
毛深いウスゲミヤマシケシダかウスゲミヤマシケシダ×ハクモウイノデの雑種

葉柄の中部~上部にかけて白い毛が密に生える。2017年7月2日 西沢渓谷 葉柄の中部~上部にかけて白い毛が密に生える。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)、(2)葉柄

中軸には白い毛が密に生える。2017年7月2日 西沢渓谷
中軸

新芽は粘液につつめれていない。2017年7月2日 西沢渓谷 新芽は湿っているが粘液に包まれていない。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)根茎付近
(2)新芽




ノコギリシダ属の仲間

標高を上げていくとミヤマシダが見られました。キヨタキシダも上流の方までときどき見られた。

ミヤマシダ
Diplazium sibiricum var. glabrum メシダ科 ノコギリシダ属
林縁や明るい林床に生育。
ミヤマシダ。2017年7月2日 西沢渓谷 ミヤマシダ、胞子嚢群。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ミヤマシダ
(2)ミヤマシダ、胞子嚢群




カナワラビ属の仲間

リョウメンシダ、ホソバナライシダ、シノブカグマが見られました。
ホソバナライシダ
夏緑広葉樹林の急な斜面で局所的に見られた。渓谷沿いではあまり見られませんでした。




イノデの仲間

イワシロイノデとホソイノデとその雑種と推定されるチチブイノデを観察しました。そのほかジュウモンジシダ、ツルデンダを観察しました。

イワシロイノデ
 Polysichum ovatopaleaceum var.coraiense オシダ科 イノデ属
出現数はそれほど大くないが渓谷の入口から最奥部まで広く見られた。
葉柄の長さは15~25㎝。葉身下部の羽片は短縮しない。胞子嚢群は中間につく。
イワシロイノデ。2017年7月2日 西沢渓谷 イワシロイノデ。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)(2)イワシロイノデ

イワシロイノデ、葉身は白緑色を帯びる。2017年7月2日 西沢渓谷
イワシロイノデ、葉身

イワシロイノデ、中軸には広披針形淡褐色の鱗片がつく。2017年7月2日 西沢渓谷
イワシロイノデ、中軸の鱗片

イワシロイノデ、この時期胞子は成熟し胞子嚢群は黒褐色をしていた。2017年7月2日 西沢渓谷 イワシロイノデ、胞子数は60個以上確認できる。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)イワシロイノデ、胞子嚢群
(2)イワシロイノデ、胞子数

イワシロイノデ、胞子上面。2017年7月2日 西沢渓谷 イワシロイノデ、胞子側面。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)イワシロイノデ、胞子上面
(2)イワシロイノデ、胞子側面

イワシロイノデ、胞子上面。2017年7月2日 西沢渓谷 イワシロイノデ、胞子側面。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)イワシロイノデ、胞子上面
(2)イワシロイノデ、胞子側面

イワシロイノデ、胞子上面。2017年7月2日 西沢渓谷 イワシロイノデ、胞子側面。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)イワシロイノデ、胞子上面
(2)イワシロイノデ、胞子側面





ホソイノデ
Polystichum braunii オシダ科 イノデ属
葉柄は短く5~10㎝。葉身下部の羽片は次第に小さくなり最下羽片は2~3㎝。胞子嚢群は中肋寄りにつく。
渓谷内では標高が上がると見られるようになった。
葉柄の長さは5㎝程度

ホソイノデ。2017年7月2日 西沢渓谷 ホソイノデ。2017年7月2日 西沢渓谷 
(1)、(2)ホソイノデ

ホソイノデ、葉身。2017年7月2日 西沢渓谷 ホソイノデ、葉身。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)、(2)ホソイノデ、葉身

ホソイノデ、葉柄および葉身下部。2017年7月2日 西沢渓谷 ホソイノデ、葉柄の鱗片。2017年7月2日 西沢渓谷 
(1)ホソイノデ、葉柄および葉身下部
(2)ホソイノデ、葉柄の鱗片

ホソイノデ、中軸には淡褐色広披針形の鱗片がつく。2017年7月2日 西沢渓谷 ホソイノデ、胞子嚢群は中肋に沿ってつく。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ホソイノデ、中軸
(2)ホソイノデ、胞子嚢群

ホソイノデ、包膜は円形で辺縁は全縁~緩い鋸歯縁。2017年7月2日 西沢渓谷 ホソイノデ、熟した胞子嚢は順次黒くなる。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)、(2)ホソイノデ、包膜





チチブイノデ(イワシロイノデ×ホソイノデ)
Polystichum x titibuense オシダ科 イノデ属
イワシロイノデとホソイノデの雑種と推定される。葉柄の長さはホソイノデほど短くならず10~15㎝。葉身下部の羽片は次第に小さくなるがホソイノデほど短縮せず最下羽片は4~5㎝で、また長さにむらがある。胞子嚢群はイワシロイノデに似て中間につく。また、この渓谷では有性生殖種のイノデの仲間はイワシロイノデとホソイノデしか観察できませんでした。
 また今回は観察した季節がよく、胞子嚢群は雑種の特徴をよく表し、胞子嚢群は①黒く熟さず(両親の胞子嚢群はすでに黒色に熟している)②薄緑色で盛り上がる(一般にイノデ類の雑種ではこの後次第にあめ色にかわり弾けず固まる)。
チチブイノデ。2017年7月2日 西沢渓谷 チチブイノデ。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)、(2)チチブイノデ

チチブイノデ、下部の羽片は短縮するが、葉柄は長い。2017年7月2日 西沢渓谷 チチブイノデ、下部の羽片は短縮するが、葉柄は長い。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)、(2)チチブイノデ、葉柄

チチブイノデ、葉柄の鱗片。2017年7月2日 西沢渓谷 チチブイノデ、葉柄の鱗片。2017年7月2日 西沢渓谷 
(1)、(2)チチブイノデ、葉柄の鱗片

チチブイノデ、中軸の鱗片。2017年7月2日 西沢渓谷 
チチブイノデ、中軸の鱗片

チチブイノデ、胞子嚢群は中間につき淡緑色のまま。両親と推定されるシダはどちらも胞子嚢は黒色になり充実していた。2017年7月2日 西沢渓谷 チチブイノデ、胞子嚢群はこの後黒色で充実した胞子嚢群にはならず、あめ色になり固着する。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)、(2)チチブイノデ、胞子嚢群

チチブイノデ、胞子嚢群は盛り上がるが不充実で、この後あめ色に変わり弾けず固着する。2017年7月2日 西沢渓谷
チチブイノデ、包膜

ツルデンダ
Woodsia manchuriensis オシダ科 イノデ属
花崗岩の岩壁に生育するツルデンダ。2017年7月2日 西沢渓谷 
ツルデンダ




オシダ属の仲間

○岩場ではナンタイシダは普通種でした。ウエットで薄暗い日陰ではミヤマクマワラビが、木漏れ日がさすような明るい林床ではオシダが生育。岩場矢岩壁ではイワイタチシダあるいはイヌイワイタチシダが生育していました。

イワイタチシダ
Dryopteris saxifraga オシダ科 オシダ属
岩壁ではやや普通に見られました。大きさは小さいものが多く10~15㎝、大きいものでは20㎝程度の個体も見られました。まだ胞子は観察できないので改めて見てみます。
イワイタチシダ。2017年7月2日 西沢渓谷
イワイタチシダ

イワイタチシダ、葉柄の鱗片。2017年7月2日 西沢渓谷 イワイタチシダ、中軸の鱗片。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)イワイタチシダ、葉柄の鱗片
(2)イワイタチシダ、中軸の鱗片




ウラボシ科の仲間

○ウラボシ科のシダではミツデウラボシ、ミヤマウラボシ、ノキシノブ、ナガオノキシノブ、ミヤマノキシノブ、オシャグジデンダなどが見られました。

ミヤマウラボシ
Crypsinus veitchii ウラボシ科 ハカマウラボシ亜科 ミツデウラボシ属
ミヤマウラボシ。2017年7月2日 西沢渓谷
ミヤマウラボシ





ミヤマノキシノブ
isorus ussuriensis var. distans ウラボシ科 オキナワウラボシ亜科 ノキシノブ属
ミヤマノキシノブ。2017年7月2日 西沢渓谷
岩壁や樹幹に着生するミヤマノキシノブ

ミヤマノキシノブ、葉柄。2017年7月2日 西沢渓谷 ミヤマノキシノブ、胞子嚢群。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ミヤマノキシノブ、葉柄
(2)ミヤマノキシノブ、胞子嚢群





オシャグジデンダ
Polypodium fauriei ウラボシ科 エゾデンダ亜科 エゾデンダ属  
大木の樹幹に群生していました。谷の下の方から生えているため視線の高さで見ることができました。
オシャグジデンダ。2017年7月2日 西沢渓谷
オシャグジデンダ
※同行の方から画像を頂きました。





オオクボシダ
Micropolypodium okuboi  ウラボシ科 ヒメウラボシ亜科 オオクボシダ属
切り立った岩壁でコケの仲間と共に生育。
オオクボシダ。2017年7月2日 西沢渓谷 オオクボシダ。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)オオクボシダ
(2)岩壁に群生するオオクボシダ




そのほかの植物

同行の方に教えていただきながらいろいろな草木を観察しました。
なお同行の方からご指摘を受けたものは変更いたしました

マルバアオダモ
マルバアオダモ。2017年7月2日 西沢渓谷 マルバアオダモ、冬芽。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)マルバアオダモ
(2)マルバアオダモ、冬芽

ケアオダモ
ケアオダモ。2017年7月2日 西沢渓谷 ケアオダモ、冬芽。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ケアオダモ
(2)ケアオダモ、冬芽

   アサノハカエデ                   ホソエカエデホソカエデ
アサノハカエデ。2017年7月2日 西沢渓谷 ホソエカエデ。2017年7月2日 西沢渓谷

      ヒナウチワカエデ            ハウチワカエデ
ヒナウチワカエデ。2017年7月2日 西沢渓谷 ハウチワカエデ。2017年7月2日 西沢渓谷

ミヤママタタビ
ミヤママタタビ、この季節、葉の先が白から紅色にかわる。2017年7月2日 西沢渓谷 ミヤママタタビ、葉の基部が心形。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)枝先の葉
(2)葉
ニシキウツギ
ニシキウツギ、花筒はしだいに膨らむ。2017年7月2日 西沢渓谷 ニシキウツギ。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)ニシキウツギ、花
(2)渓谷に生育するニシキウツギ

ウダイカンバ
渓谷沿いに生育するウダイカンバ。2017年7月2日 西沢渓谷 ウダイカンバ、葉の基部は心形。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)渓谷沿いに生育するウダイカンバ
(2)ウダイカンバ、葉

オノオレカンバ
渓谷に下る尾根筋に生育するオノオレカンバ。樹皮は縦に裂ける。2017年7月2日 西沢渓谷 オノオレカンバ、葉の基部は心形。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)渓谷に下る尾根筋に生育するオノオレカンバ
(2)オノオレカンバ、葉

クロカンバクロウメモドキ科
クロカンバ、葉は微妙に非対称。2017年7月2日 西沢渓谷 クロカンバ、雌花。2017年7月2日 西沢渓谷

クロカンバ、葉縁は細かい鈍鋸歯。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)クロカンバ、葉
(2)クロカンバ、雌花花?
(3)クロカンバ、葉縁

サワダツ
サワダツ。2017年7月2日 西沢渓谷 サワダツ。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)サワダツ
(2)サワダツ、花

オニツルウメモドキ
オニツルウメモドキ。2017年7月2日 西沢渓谷 オニツルウメモドキ、葉の裏の葉脈上の畝状の毛。2017年7月2日 西沢渓谷
(1)オニツルウメモドキ
(2)オニツルウメモドキ、葉脈上の毛

   ミヤマカラマツ                   モミジカラマツ
ミヤマカラマツ。2017年7月2日 西沢渓谷 モミジカラマツ。2017年7月2日 西沢渓谷

コケイラン
コケイラン。2017年7月2日 西沢渓谷

ナルコユリオオナルコユリ
ナルコユリ 2017年7月2日 西沢渓谷 ナルコユリ2017年7月2日 西沢渓谷

アオホオズキ
アオホオズキ。2017年7月2日 西沢渓谷 アオホオズキ。2017年7月2日 西沢渓谷

ハシリドコロ
ハシリドコロ。2017年7月2日 西沢渓谷 

ソバナ
ソバナ。2017年7月2日 西沢渓谷

テキリスゲヤマテキリスゲ
テキリスゲ。2017年7月2日 西沢渓谷 テキリスゲ。2017年7月2日 西沢渓谷

おしまいに

西沢渓谷は距離は少し長いですが、美しい渓谷でした。寒い地域のシダを沢山観察することができました。シャクナゲやヒカゲツツジの咲くころ、また紅葉の季節も美しいそうです。

 2017年7月2日 西沢渓谷