鎌倉 十二所付近を歩きました。あいにくの小雨で、林の中に足を踏み入れるのがためらわれました。みなさん、雨宿りしながらのお弁当でした。
ハナワラビの仲間
十二所 果樹園内。山を巻く林縁沿いの道の脇に生育。フユノハナワラビとオオハナワラビが一緒に生育しているところも見られた。
フユノハナワラビ
裂片の先は鈍頭。胞子にはクレーターのような凹みがあり、三稜の頂点の下には液胞のようなものが確認される。
(1)フユノハナワラビ、胞子頂部のようす
(2)フユノハナワラビ、胞子側面のようす
(1)フユノハナワラビ、胞子頂部のようす
(2)フユノハナワラビ、胞子側面のようす
(1)フユノハナワラビ、胞子頂部のようす
(2)フユノハナワラビ、胞子側面のようす
オオハナワラビ
裂片の辺縁の鋸歯は鋭く尖る。
ハイゴラゴケの仲間
ミウラハイホラゴケを含め3種類を確認。有性生殖種のミウラハイホラゴケ、そのほか雑種と考えられるハイホラゴケの仲間が2種類見られた。
大形のハイホラゴケ(ミウラハイホラゴケ)
ミウラハイホラゴケは有性生殖種。他のハイホラゴケの仲間にくらべてかなり大きい。葉身の大きさは13~16㎝。十二所周辺では2か所で観察。胞子数は60個程度確認できる。
(1)ミウラハイホラゴケ、胞子頂部
(2)ミウラハイホラゴケ、胞子側面
(1)ミウラハイホラゴケ、胞子頂部
(2)ミウラハイホラゴケ、胞子側面
(1)ミウラハイホラゴケ、胞子頂部
(2)ミウラハイホラゴケ、胞子側面
小形でスリムなハイホラゴケの仲間
ハイホラゴケ・ヒメハイホラゴケ・ミウラハイホラゴケのうち、どの掛け合わせによる雑種かわからない。小形でスリム(広披針形)なハイホラゴケの仲間。葉の大きさは8~9センチ程度、幅は狭く2㎝程度のものが多かった。胞子嚢群をつけた葉はあまり見つけることができなかった。雨も降っており探すのが面倒であった。先端にラッパ状の包膜をつけた胞子嚢群をつけた株を見つけた。胞子嚢群の中の胞子嚢はほとんどが不稔で軽く、水に浮き、中に胞子が入っていないかあるいは空っぽの胞子が詰まっていた。その中でわずかに5,6個程度の胞子嚢の中には緑色の胞子を少しの数だけ含有しているものも見られた。
以下の胞子嚢の分解画像は、1つの胞子嚢群の中に、ほとんどが空っぽの胞子嚢が詰まっている中で、わずかに見られた緑色の胞子を含んだ胞子嚢である。
(1)(2)葉がスリムなハイホラゴケの仲間、1つの胞子嚢を壊したようす
(3)(4)葉がスリムなハイホラゴケの仲間、1つの胞子嚢を壊したようす
中形で長卵形のハイホラゴケの仲間
ミウラハイホラゴケ・ハイホラゴケ・ヒメハイホラゴケのうち、どの掛け合わせによる雑種かわからない。葉身の大きさは、小形でスリムなハイホラゴケの仲間とミウラハイホラゴケとの中間で10~12㎝、やや幅が広く長卵形。昼食を食べた神社近くの崖に群生。
たくさん群生していたが、胞子嚢群の付いた葉を探せず(雨で十分に探せなかったためか、胞子嚢群はほとんどつけていないように思った)写真だけ。
(1)泥岩の崖に群生する長卵形・中くらいの大きさのハイホラゴケの仲間
(2)長卵形・中くらいの大きさのハイホラゴケの仲間、葉身
フモトシダの仲間
ウスゲクジャクフモトシダ 仮称(ウスゲフモトシダ×フモトカグマ) [#s3d1f828]
ウスゲフモトシダとフモトカグマの雑種と推定される。同様な個体は横浜市新治新治?でも観察されている。葉柄・中軸は黒に近いえんじ色、中軸表側は無毛。羽軸上は有毛。葉の大きさは50~70㎝、葉の質は薄くなめらか、黄緑色~明るい緑色で無毛。羽片は中~深裂し裂片の先は円頭。胞子嚢群は葉の辺縁寄りにつき、包膜はコップ状で表面には短い剛毛が生える。観察した胞子嚢群では、胞子嚢には白っぽい不稔の胞子が詰まっているが冬季ではない温かい季節にも改めて観察してみたい。
ウスゲクジャクフモトシダ 仮称(ウスゲフモトシダ×フモトカグマ)
ウスゲクジャクフモトシダ、中軸
(1)ウスゲクジャクフモトシダ、最下羽片
(2)ウスゲクジャクフモトシダ、羽片
(1)ウスゲクジャクフモトシダ、包膜
(2)ウスゲクジャクフモトシダ、包膜を剥がしたようす
(1)ウスゲクジャクフモトシダ、包膜
(2)ウスゲクジャクフモトシダ、包膜を剥がしたようす
シケシダの仲間
ナチシケシダ、フモトシケシダ、シケシダなど有性生殖種のシケシダの仲間はみな胞子を飛ばした後で、胞子を観察できませんでした。
雑種は2種どちらも胞子を観察することができました。今回の雑種2種の観察からは、人為的な介入を受けた環境で十分に生育しているシケシダの仲間の雑種の特性の一面を見ることができました。
タマシケシダ(フモトシケシダ×シケシダ)
シケシダとフモトシケシダの雑種と推定される。外観は、幅の広いシケシダといった感じであった。林内のやや開けたところに群生。この場所は昼食をとった神社の周り(向かって左側そば)で、必ず定期的に草刈が行われ、たぶんいつも整備され丈の高い草などは生えないようなところ。お昼の弁当を食べているとき、同行のひろちょんが「変わったシケシダがある」とのこと。観察した胞子はすべて乱れていた。
葉の大きさは30~45㎝、幅は12~15㎝、シケシダに似て葉の表面は無毛でやや光沢がある。神社の周り2×2mの範囲に20本ほど生育。葉はこの時期でもまだ緑色であった。このあたりにはシケシダのほかにセイタカシケシダ、フモトシケシダ、ナチシケシダなどが生育しており、いろいろな組み合わせが考えられるが、葉の表面の毛の少なさ・包膜の辺縁のようすからタマシケシダと判断した。ただ、包膜が開きすぎていたので若い状態の包膜も観察する必要がある。
ムサシシケシダ(セイタカシケシダ×シケシダ) [#xd73a6b8]
シケシダとセイタカシケシダの雑種と推定される。外観は、少し毛深くないおおきなセイタカシケシダといった感じで、生育場所がセイタカシケシダほど林の中ではなく、定期的に草刈されているであろう林縁。
葉の大きさは45~80㎝、葉は艶が無く、セイタカシケシダほどではないが白味を帯びた明るい緑色。十二所果樹園内のものはやや枯れ始めていた。2×3mの範囲に群生。
相模湖 奥畑のムサシシケシダは、定期的な草刈が行われなくなりしだいに高茎草本や樹木の苗が茂りだし、すべて枯死することは無いと思いますが、群落の規模が小さくなっています。
(1)(2)果樹園の樹の下の斜面に群生するムサシシケシダ(シケシダ×セウタカシケシダ)
(1)ムサシシケシダ(シケシダ×セウタカシケシダ)葉
(2)ムサシシケシダ(シケシダ×セウタカシケシダ)羽片
(1)ムサシシケシダ(シケシダ×セウタカシケシダ)羽片
(2)ムサシシケシダ(シケシダ×セウタカシケシダ)中軸
(1)(2)ムサシシケシダ(シケシダ×セウタカシケシダ)包膜
(1)(2)ムサシシケシダ(シケシダ×セウタカシケシダ)1つの胞子嚢を壊したようす
(3)(4)ムサシシケシダ(シケシダ×セウタカシケシダ)1つの胞子嚢を壊したようす
(1)(2)ムサシシケシダ(シケシダ×セウタカシケシダ)1つの胞子嚢を壊したようす(拡大)
(3)(4)ムサシシケシダ(シケシダ×セウタカシケシダ)1つの胞子嚢を壊したようす(拡大)
ナチシケシダか?
(1)ナチシケシダか?
(2)ナチシケシダか?包膜
フモトシケシダか?
フモトシケシダか?十二所果樹園周辺の林縁に生育
シケシダか?
(1)(2)果樹下明るい林床に生育するシケシダか?
ヤブソテツの仲間
ナガバヤブソテツ [#o15f9abc]
4倍体有性生殖種のナガバヤブソテツ。葉は大きく80~90㎝。包膜が白く、葉縁に大きな鋸歯がある個体が見られました。胞子は大きさ・形とも整い、60個程度観察されました。
(1)ナガバヤブソテツ、羽片裏側
(2)ナガバヤブソテツ、胞子嚢群
(1)ナガバヤブソテツ、包膜
(2)ナガバヤブソテツ、包膜がとてた胞子嚢群
(1)(2)(3)ナガバヤブソテツ、1つの胞子嚢を壊したようす
(1)ナガバヤブソテツ、胞子頂部のようす
(2)ナガバヤブソテツ、胞子側面のようす
(1)ナガバヤブソテツ、胞子頂部のようす
(2)ナガバヤブソテツ、胞子側面のようす
(1)ナガバヤブソテツ、胞子頂部のようす
(2)ナガバヤブソテツ、胞子側面のようす
イノデの仲間
ツルデンダ、オリヅルシダ、イノデ、アスカイノデ、アイアスカイノデ、雑種のミウライノデ、ドウリョウイノデなどが見られました。
ツルデンダ・オリヅルシダ
切り立った泥砂岩の岩壁に生育。
(1)切り立った泥砂岩の岩壁に生育するツルデンダ
(2)切り立った泥砂岩の岩壁に生育するオリヅルシダ
アスカイノデ
強い光沢があります。