花盛りの草はら。2018年4月14日 相模原市 緑区
新緑の中、境川源流を歩きました。今回は「ひろちょん」に案内していただき、貴重なシダを観察することができました。境川は相模川の東岸、何段かある河岸段丘の上を流れ、江ノ島付近で相模湾に注いでいます。中~上流部は東京都町田市と神奈川県相模原市の境を流れています。

1.ハナヤスリの仲間
オオハナワラビ・ナツノハナワラビ・ヒロハハナヤスリなどが見られました。

ヒロハハナヤスリ

両側の山裾が迫った狭い谷戸、陽当たりのよい土手~夏緑広葉樹林の林床に生育。場所によってはニリンソウやイチリンソウと一緒に群生していました。中に胞子葉を抱えた栄養葉が群生。栄養葉の大きさは10~12㎝、黄緑色。スプリングエフェメラル。なかなかお目にかかれないシダです。
両側の山が迫った川沿いの草原~木漏れ日の射す夏緑広葉樹林林床に群生するヒロハハナヤスリ。2018年4月14日 相模原市 緑区
谷沿いの谷戸に群生するヒロハハナヤスリ

柔らかい草質の葉を広げるヒロハハナヤスリ。2018年4月14日 相模原市 緑区 ヒロハハナヤスリ、胞子葉。2018年4月14日 相模原市 緑区
(1)ヒロハハナヤスリ
(2)ヒロハハナヤスリ、胞子葉



2.イノモトソウの仲間
オオバノイノモトソウ・イノモトソウ・マツザカシダ・オオバノハチジョウシダなどが見られました。

マツザカシダ

1ヶ所ですが、スギ植林地林縁の斜面に見まわしただけで4株程度確認。

オオバノハチジョウシダ

谷戸の最奥部のウエットな林床ではオオバノハチジョウシダが多く見られました。葉の大きさは80から120㎝。単独あるいは群生し、個体数は多い。大形のオオバノハチジョウシダ似のオオバノアマクサシダや幼形成熟型を探したのですが、この谷で見られたものはすべてオオバノハチジョウシダでした。特徴は①最下羽片下側第1小羽片の裂片は欠けず小羽軸に対して左右対称。②各羽片の先端の頂羽片状の裂片は発達しない。
オオバノハチジョウシダ。2018年4月14日 相模原市 緑区
オオバノハチジョウシダ

オオバノハチジョウシダ、最下羽片下側第1小羽片は左右対称。2018年4月14日 相模原市 緑区 オオバノハチジョウシダ、羽片の先端の裂片は発達しない。2018年4月14日 相模原市 緑区
(1)オオバノハチジョウシダ、最下羽片下側第1小羽片
(2)オオバノハチジョウシダ、羽片の先端の裂片



3.ヤマイヌワラビの仲間
ヤマイヌワラビ・ホソバイヌワラビなどが見られました。ヤマイヌワラビは大変大きな個体(成長すると80~100㎝になる)も見られました。

ホソバイヌワラビ

このあたりでは深い森に入らなければお目にかからないせいか、いつ見ても美しいと思う。谷戸の奥、谷沿いのスギ林林床に数株づつまとまって点在。個体数は多い。薄黄緑色の新葉を放射状に展開していました。
薄黄緑色の新葉を展開するホソバイヌワラビ。2018年4月14日 相模原市 緑区
ホソバイヌワラビ



4.シケシダの仲間
シケシダ・ハクモウイノデ・ホソバシケシダ・セイタカシケシダ・タマシケシダ(?)などが見られました。まだ包膜や胞子嚢群は未発達。

ハクモウイノデ

源流部ウエットな谷沿いで見られました。
ハクモウイノデ。2018年4月14日 相模原市 緑区
ハクモウイノデ



5.ヤブソテツの仲間
ヤブソテツ(ツヤナシヤマヤブソテツtype、テリハヤマヤブソテツtype、ホソバヤマヤブソテツtype)・テリハヤブソテツ・メヤブソテツ・ナガバヤブソテツなどが見られました。

メヤブソテツ

尾根に近い、よく茂ったスギ植林地、急傾斜の林床に見まわしただけで10株程度まとまって生育していた。
尾根に近いスギ林急傾斜地に生育するメヤブソテツ。2018年4月14日 相模原市 緑区 メヤブソテツ、包膜の辺縁には鋭い鋸歯がある。2018年4月14日 相模原市 緑区
(1)メヤブソテツ
(2)メヤブソテツ、包膜

ヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツtype)

テリハヤマヤブソテツtypeは一般にウエットな林内の岩場・急斜面で多く見られます。葉の表面には光沢があります。
ヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツtype)2018年4月14日 八王子市 南浅川町 ヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツtype)2018年4月14日 八王子市 南浅川町
(1)ヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツtype)
(2)ヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツtype)羽片



6.ベニシダの仲間
ベニシダ・サイゴクベニシダ・トウゴクシダなどが見られました。

サイゴクベニシダ

山の尾根近くの林床で見られた。特に岩がところどころ露出した表土の薄い林床ではまとまって生育しており個体数も多い。
サイゴクベニシダ。2018年4月14日 八王子市
サイゴクベニシダ


ベニシダの1形(エンシュウベニシダ似)

小羽片の幅がやや広く、胞子嚢群はやや中肋寄りにつきエンシュウベニシダに似るが、鱗片の色や形状がベニシダの特徴を示している。鱗片は黒に近い黒褐色・狭披針形で直線的。
ベニシダの1形(エンシュウベニシダ似)2018年4月14日 相模原市 緑区
ベニシダの1形(エンシュウベニシダ似)

鱗片は黒に近い黒褐色・狭披針形。2018年4月14日 相模原市 緑区 鱗片は黒に近い黒褐色・狭披針形。2018年4月14日 相模原市 緑区 鱗片は黒に近い黒褐色・狭披針形。2018年4月14日 相模原市 緑区
(1)ベニシダの1形(エンシュウベニシダ似)葉柄下部の鱗片(古葉)
(2)ベニシダの1形(エンシュウベニシダ似)葉柄下部の鱗片(若葉)
(3)ベニシダの1形(エンシュウベニシダ似)中軸の鱗片(若葉)

羽片。2018年4月14日 相模原市 緑区
ベニシダの1形(エンシュウベニシダ似)羽片

胞子嚢群。2018年4月14日 相模原市 緑区 胞子嚢群。2018年4月14日 相模原市 緑区
(1),(2)ベニシダの1形(エンシュウベニシダ似)胞子嚢群



7.イタチシダの仲間
オオイタチシダ・ヤマイタチシダ・ベニオイタチシダなどが見られました。オオイタチシダは3つのtype(ツヤナシオオイタチシダtype、アツバオオイタチシダtype、アオニオオイタチシダtype)が見られた。

オオイタチシダアオニオオイタチシダtype

ツヤナシオオイタチシダtypeやアツバオオイタチシダtypeは林床傾斜地~岩場までやや幅広く生育していましたが、今回は、アオニオオイタチシダtypeは一つの岩が露出した山でまとまって観察され、そこ以外ではほとんど観察されませんでした。



8.イノデの仲間
ジュウモンジシダ・イノデ・アイアスカイノデ・イノデモドキ・サイゴクイノデ・オオタニイノデ(アイアスカイノデ×アスカイノデ)・ドウリョウイノデ(アイアスカイノデ×イノデ)・ハコネイノデ(アイアスカイノデ×サイゴクイノデ)などが見られました。

オオタニイノデ(アイアスカイノデ×アスカイノデ)

アイアスカイノデとアスカイノデの雑種と推定される。この森ではアスカイノデは見られませんでしたが、どこかに生育しているのかもしれません。オオタニイノデは一般に大形になり、葉の大きさは100~120㎝。胞子嚢群は弾けずに固まり雑種の特徴を表す。
アイアスカイノデに似たところは①葉柄基部~下部の鱗片には明確に栗色が入る。②葉身下部の羽片では胞子嚢群は辺縁寄りにつく。③葉柄は長く葉身の形は長さの割に幅が狭い。
アスカイノデに似たところは①葉柄基部~下部の鱗片は披針形でねじれる。②葉身中~上部羽片では胞子嚢群は中間につく。③葉柄上部の鱗片は線形で毛状の鱗片が多い。
(※アスカイノデの鱗片が濃い色の個体と区別が難しい場合があるが、葉の大きさや胞子嚢群のつく位置・ようすで区別できる)

オオタニイノデ、新葉の展開、葉の大きさはおよそ100㎝。2018年4月14日 相模原市 緑区 オオタニイノデ、葉身はアイアスカイノデに似てやや細身。2018年4月14日 相模原市 緑区
(1)オオタニイノデ、新葉
(2)オオタニイノデ、葉身

オオタニイノデ、葉柄。2018年4月14日 相模原市 緑区 オオタニイノデ、葉柄。2018年4月14日 相模原市 緑区 
(1),(2)オオタニイノデ、葉柄下部

オオタニイノデ、葉柄上部。2018年4月14日 相模原市 緑区 
オオタニイノデ、葉柄上部

 
オオタニイノデ、葉柄基部の鱗片は栗色が入りねじれる。2018年4月14日 相模原市 緑区 オオタニイノデ、葉柄下部の鱗片は栗色が入りねじれる。2018年4月14日 相模原市 緑区 オオタニイノデ、葉柄上部では線形で毛状の鱗片と披針形の鱗片が混ざる。2018年4月14日 相模原市 緑区 
(1)オオタニイノデ、葉柄基部の鱗片
(2)オオタニイノデ、葉柄下部の鱗片
(3)オオタニイノデ、葉柄上部の鱗片

オオタニイノデ、胞子嚢群は葉身下部では辺縁寄りにつく。2018年4月14日 相模原市 緑区 オオタニイノデ、葉身中~上部では胞子嚢群は中間につく。2018年4月14日 相模原市 緑区 
(1)オオタニイノデ、葉身下部の胞子嚢群
(2)オオタニイノデ、葉身中~上部の胞子嚢群

オオタニイノデ、胞子嚢群は弾けずに固まる。2018年4月14日 相模原市 緑区
(1),(2)オオタニイノデ、胞子嚢群



9.観察されたそのほかのシダ
トウゲシバ・イヌカタヒバあるいはカタヒバ・スギナ・トクサ・ゼンマイ・ウラジロ・カニクサ・イヌシダ・イワヒメワラビ・フモトシダ・ワラビ・イワガネゼンマイ・イワガネソウ・タチシノブ・クジャクシダ・コバノヒノキシダ・トラノオシダ・ミドリヒメワラビ・ヤワラシダ・ハシゴシダ・ミゾシダ・ヌリワラビ・コウヤワラビ・クサソテツ・シケチシダ・キヨタキシダ・ハカタシダ・オニカナワラビ・オオカナワラビ・ナンゴクナライシダ・リョウメンシダ・オクマワラビ・クマワラビ・キヨスミヒメワラビ・ノキシノブ



10.そのほかの動植物
色々な動植物の名前を教えていただきました。その場では聞き漏らしてしまった名前もあり、間違っていましたらご指摘いただければありがたいです。

スミレの仲間

シラユキスミレ(ニョイスミレの白花種)2018年4月14日 八王子市 南浅川町 オトメスミレ。2018年4月14日 相模原市 緑区
(1)シラユキスミレシラユキフモトスミレ同行の方からご指摘をいただき、訂正いたします。
(2)オトメスミレ

ニオイタチツボスミレ。2018年4月14日 相模原市 緑区 マルバスミレ。2018年4月14日 相模原市 緑区
(1)ニオイタチツボスミレ
(2)マルバスミレ

ケシ科の花

川沿いの明るい夏緑広葉樹林林床に生育するヤマブキソウ。2018年4月14日 八王子市 南浅川町 ヤマブキソウと同じ谷沿いではあるが民家の敷地跡付近で見られたホソバヤマブキソウ。2018年4月14日 八王子市 南浅川町
(1)ヤマブキソウ
(2)ホソバヤマブキソウ

ジロボウエンゴサク。2018年4月14日 相模原市 緑区 ミヤマキケマン。2018年4月14日 八王子市 南浅川町
(1)ジロボウエンゴサク
(2)ミヤマキケマン

ムカシトンボ

谷戸の奥の谷沿いの林内、低い木に止まっていたが、羽化したばかりかもしれない。
ムカシトンボ。2018年4月14日 相模原市 緑区
ムカシトンボ

終わりに

新緑の中で春の一日、草花やシダを見て楽しむことができました。シダを調べ始めたばかりの方へ同行の方々が親切にご説明くださりありがとうございました。
ヤマルリソウ。2018年4月14日 八王子市 南浅川町