林内岩上に生育するトキワシダ。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂

武蔵横手駅から久須美坂方面へ皆さんで歩きました。標高は250~300m程度の穏やかな低山。林道沿いは擁壁と深い谷で林床斜面に生育しているシダに近づいて観察できないところもありました。林床植生が豊かな谷筋もいくつかありシカの食害は少ないように思いました。夏緑性のシダにはまだ季節が少し早く新芽が顔を出した程度でした。胞子を確認したいシダなどあり改めてよい季節に歩いてみたいと思います。観察されたシダを紹介します。

ヒカゲノカズラの仲間
ホソバトウゲシバ。



 
イワヒバの仲間
クラマゴケ、カタヒバ、イヌカタヒバ。
カタヒバ
林内の岩上に群生。イヌカタヒバは人家の周辺に生育。
林内岩上に群生するカタヒバ。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 カタヒバ、背葉の中肋の稜は幅が広くイヌカタヒバの稜は狭く尖る。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
①カタヒバ、背葉の中肋



 
トクサの仲間
スギナ。



 
ハナワラビの仲間
フユノハナワラビ、オオハナワラビ。



 
ゼンマイの仲間
ゼンマイ、ヤシャゼンマイ。
同行の方の話ではヤシャゼンマイは川沿いの岩場に生育するそうである。



 
コケシノブの仲間
アオホラゴケ、ウチワゴケ、コウヤコケシノブ。

コウヤコケシノブ
林内の岩壁に群生。
林内岩上に生育するコウヤコケシノブ。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 コウヤコケシノブ、葉縁には鋸歯がある。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
①林内岩上に生育するコウヤコケシノブ
②コウヤコケシノブ、葉縁には鋸歯がある


 
アオホラゴケ
林内の岩壁に群生。コウヤコケシノブよりもウエットで薄暗いところを好む。
林内岩上に生育するアオホラゴケ。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 林内岩上に生育するアオホラゴケ。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
①②林内岩上に生育するアオホラゴケ

アオホラゴケ、根茎には黒褐色の毛が密生する。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 アオホラゴケ、葉には偽脈がある。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
③アオホラゴケ、根茎には黒褐色の毛が密生する
④アオホラゴケ、葉には偽脈がある



 
ウラジロの仲間
ウラジロ。



 
カニクサの仲間
カニクサ。



 
キジノオシダの仲間
キジノオシダ、オオキジノオ。



 
ホラシノブの仲間
ホラシノブ。



 
コバノイシカグマの仲間
イヌシダ、コバノイシカグマ、フモトシダ、ケブカフモトシダ、イワヒメワラビ、ワラビ。



 
イノモトソウの仲間
イワガネゼンマイ、イワガネソウ、タチシノブ、イノモトソウ、オオバノイノモトソウ、オオバノアマクサシダ。

オオバノアマクサシダ
沢沿いのウエットな林道沿いに生育。
沢沿いのウエットな林道沿いに生育するオオバノアマクサシダ。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 オオバノアマクサシダ、頂小羽片は長く伸びる。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
①沢沿いのウエットな林道沿いに生育するオオバノアマクサシダ
②オオバノアマクサシダ、頂小羽片



 
ホウライシダの仲間
ハコネシダ、クジャクシダ。



 
シシランの仲間
シシラン。



 
チャセンシダの仲間
トラノオシダ、コバノヒノキシダ、イワトラノオ、トキワシダ。

トキワシダ
沢沿いの苔むした大きな転石上に間隔をあけて群生。
沢沿いの苔むした大きな転石上に間隔をあけて群生するトキワシダ。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 トキワシダ、葉身。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
①沢沿いの苔むした大きな転石上に間隔をあけて群生するトキワシダ
②トキワシダ、葉身



 
ヒメシダの仲間
ゲジゲジシダ、ハシゴシダ、ハリガネワラビ、ホシダ。
この仲間は夏緑性の仲間が多く、ハシゴシダ、ホシダ以外はまだ葉を展開していないせいか確認できず。



 
コウヤワラビの仲間
イヌガンソク。その他はまだ葉を展開していないせいか確認できず。



 
シシガシラの仲間
シシガシラ、コモチシダ。



 
メシダの仲間
シケチシダ、ホソバイヌワラビ。その他はまだ葉を展開していないせいか確認できず。

ホソバイヌワラビ
まだ、芽が伸び始めたばかりで、葉が十分に展開していない。
芽が伸び始めたばかりホソバイヌワラビ。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 ホソバイヌワラビ、新芽。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
①芽が伸び始めたばかりホソバイヌワラビ
②ホソバイヌワラビ、新芽



 
シケシダの仲間
シケシダ、フモトシケシダ。その他はまだ葉を展開していないせいか確認できず。



 
ノコギリシダの仲間
キヨタキシダ。



 
カナワラビの仲間
リョウメンシダ、ナンゴクナライシダ、ハカタシダ、オニカナワラビ、オオカナワラビ、シノブカグマ。

シノブカグマ
一般に亜高山帯でみられるシダ。この辺りはナガバノイタチシダやナチクジャクなど暖地性のシダが多く生育するところである。標高250~300m。スギ・ヒノキ植林地内稜線近くの林床に生育。
低山のスギ・ヒノキ植林地に生育するシノブカグマ。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 シノブカグマ、葉身。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
①②低山のスギ・ヒノキ植林地に生育するシノブカグマ

シノブカグマ、葉柄。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 シノブカグマ、葉柄基部の鱗片。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
③シノブカグマ、葉柄
④シノブカグマ、葉柄基部の鱗片

シノブカグマ、胞子のう群はやや辺縁寄りにつく。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
⑤シノブカグマ、葉柄



 
ヤブソテツの仲間
ナガバヤブソテツ、テリハヤブソテツ、ヤブソテツ(ツヤナシヤマヤブソテツ、テリハヤマヤブソテツ、ホソバヤマヤブソテツ)

ヤブソテツ(ホソバヤマヤブソテツ)
低地の沢沿いの林床に生育。羽片の色と形が特徴的である。
ヤブソテツ(ホソバヤマヤブソテツ)、羽片は暗緑色のことが多く細長い。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
①ヤブソテツ(ホソバヤマヤブソテツ)


 
ヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツ)
ヤブソテツ(ツヤナシヤマヤブソテツ)よりもウエットな林床や岩場に生育することが多い。ヤブソテツ(ツヤナシヤマヤブソテツ)よりも葉の質は厚く羽片は大きい。葉の表面の光沢は弱いものから強いものまである。
ヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツ)。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
①ヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツ)



 
イノデの仲間
イノデ、アイアスカイノデ、イノデモドキ、ドウリョウイノデ(イノデ×アイアスカイノデ)
※アマギイノデかと思われたイノデの仲間は室内会で同定していただきイノデであった。



 
オシダ属の仲間
ベニシダ、ハチジョウベニシダか、オオベニシダ、キノクニベニシダ、不明なベニシダ、オオイタチシダ(ツヤナシオオイタチシダ、アツバオオイタチシダ)、ヤマイタチシダ、イワオオイタチシダ、イヌイワイタチシダ、ナガバノイタチシダ。

ハチジョウベニシダか
山地の中腹部、スギ・ヒノキ植林地内急斜面。小羽片は波打ち怪しいベニシダであった。ハチジョウベニシダの可能性もある。胞子が成熟する7月頃もう一度訪れて胞子を確認してみたい。

※胞子を確認したところハチジョウベニシダではなくベニシダであることが判明しました。改めて外観だけでの同定が難しいことを実感しました。2022年7月23日

ハチジョウベニシダか。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 
①ハチジョウベニシダか

ハチジョウベニシダか、羽片。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 ハチジョウベニシダか、羽片。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
②③ハチジョウベニシダか、羽片


観察された胞子のようす。2022年7月23日
有性生殖種のハチジョウベニシダではなく、無融合生殖種のベニシダであった。
ハチジョウベニシダではないかと思われたシダの胞子を観察すると1つの胞子のうに30個程度胞子を確認し、無融合生殖種のベニシダと確認できた。
胞子数は30個程度確認。大きさ・形は乱れ無融合生殖種と推定されハチジョウベニシダではなくベニシダ。2022年7月23日 武蔵横手-久須美坂 胞子数は30個程度確認。大きさ・形は乱れ無融合生殖種と推定されハチジョウベニシダではなくベニシダ。2022年7月23日 武蔵横手-久須美坂
④⑤ハチジョウベニシダか、1つの胞子のうを壊したようす




不明なベニシダ
小羽片の幅はやや広く、胞子のう群は中間。たまたま葉が変形したベニシダあるいはサイゴクベニシダかもしれない。再度訪れた時に、鱗片、胞子なども調べてみたい。
不明なベニシダ。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 不明なベニシダ、葉身。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
①不明なベニシダ
②不明なベニシダ、葉身

不明なベニシダ、新芽の鱗片。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
③不明なベニシダ、新芽の鱗片

不明なベニシダ、羽片。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 不明なベニシダ、胞子のう群。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
④不明なベニシダ、羽片
⑤不明なベニシダ、胞子のう群




イヌイワイタチシダ
ヤマイタチシダとイワイタチシダの中間的な形をしている。葉は白緑色を帯びるがイワイタチシダに比べると緑色が強かったり、イワイタチシダに似て鱗片が開出気味についたりするが胞子数は30個程度で無融合生殖種と考えられる。
イヌイワイタチシダ。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 イヌイワイタチシダ、羽片。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
①イヌイワイタチシダ
②イヌイワイタチシダ、羽片




イワオオイタチシダ
岩場や岩壁に生育するシダ。スギ・ヒノキ植林地内渓谷沿いの岩壁に生育。オオイタチシダアツバオオイタチシダ形に似ているが羽片上部や葉身上部の小羽片はわずかに鋸歯があり鋭く尖る。
イワオオイタチシダ、葉身。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 切り立った岩場に生育するイワオオイタチシダ。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
①イワオオイタチシダ、葉身
②切り立った岩場に生育するイワオオイタチシダ

イワオオイタチシダ、小羽片はわずかに鋸歯があり鋭く尖る。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 イワオオイタチシダ、胞子のう群。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂
③イワオオイタチシダ、羽片
④イワオオイタチシダ、胞子のう群




ナガバノイタチシダ
谷沿いには多くのナガバノイタチシダが生育していることを確認。生育数の多さからはもっと暖地で見られるような生育状態であった。
群生するナガバノイタチシダ。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 ナガバノイタチシダとコバノイシカグマ(左)。2022年4月9日 武蔵横手-久須美坂 
①群生するナガバノイタチシダ
②ナガバノイタチシダ



 
ウラボシ科の仲間
マメヅタ、ミツデウラボシ、ノキシノブ、クロノキシノブ、ヒメノキシノブなどを観察。