小さな滝にはヘラシダ、ノコギリシダ、ヒメカナワラビ、トウゴクシダなどが生育していた。2023年2月4日 函南

伊豆半島の付け根、函南を皆さんで歩きました。標高は100~300mの低山。箱根火山の南麓、緩やかに傾斜しています。場所にもよると思われますがシカの食害は少ないようでした。

タチクラマゴケ
お寺の参道コケの上に生育するタチクラマゴケ。この季節明るいところに生育する株は紅葉する。
コケの上に生育するタチクラマゴケ。2023年2月4日 函南





フタツキジノオ
フタツキジノオと思われる株を観察。川の支流に沿ってスギ・ヒノキ林が広がる道路わきのやや明るい森の入り口で1株観察。周辺にはリョウメンシダ、イヌイワヘゴ、ノコギリシダ、アマクサシダ、イブキシダなどが生育。まだ胞子を見ていないので機会を見つけて胞子のようすを調べてみたい。
栄養葉の大きさは45~65㎝、胞子葉の大きさは90㎝。栄養葉にはキジノオシダの特徴が表れているが、胞子葉はオオキジノオの特徴が表れていた。今までなかなかフタツキジノオを断定することは難しかったが、今回生育していた個体では明瞭にキジノオシダ・オオキジノオ2種の特徴が表れていた。羽片はほとんど鎌曲せず羽片中間あたりから幅は徐々にせまくなりオオキジノオの羽片に似る。下部羽片では有柄、中間では無柄、上部に行くに従い羽片上側が中軸に流れさらに上部では羽片基部上側・下側とも同じくらいの幅で中軸に合着する。

林縁の森に生育するフタツキジノオ。2023年2月4日 函南 フタツキジノオ、栄養葉。2023年2月4日 函南 
①林縁の森に生育するフタツキジノオ

フタツキジノオ、大きい栄養葉。葉柄は25㎝、葉身は40㎝程度。2023年2月4日 函南 フタツキジノオ栄養葉、葉身、羽片はまっすぐ伸びる。2023年2月4日 函南
②③フタツキジノオ、栄養葉

フタツキジノオ、胞子葉は90㎝程度、非常に大きい。2023年2月4日 函南
⑤フタツキジノオ、胞子葉

フタツキジノオ、胞子葉の羽片には明瞭な柄がある。2023年2月4日 函南 フタツキジノオ、胞子葉羽片は長く14㎝程度になる。また羽片の間隔も広い。2023年2月4日 函南
⑦⑧フタツキジノオ、胞子葉の羽片

フタツキジノオ、上部の羽片の基部は基部上側・下側で中軸に流れてつき中軸には狭い翼がある。2023年2月4日 函南 フタツキジノオ、栄養葉の先端裏側。2023年2月4日 函南
⑨⑩フタツキジノオ、栄養葉の先端

フタツキジノオ、葉身中間の羽片の基部は羽片基部上側が広く中軸に流れてつく。2023年2月4日 函南 フタツキジノオ、葉身中間の羽片の基部は羽片基部上側が広く中軸に流れてつく。2023年2月4日 函南
⑪⑫フタツキジノオ、栄養葉の中間

フタツキジノオ、葉身下部の羽片の基部には羽片基部上側に狭い翼をつけた短い柄がある。2023年2月4日 函南 フタツキジノオ、葉身下部の羽片の基部には羽片基部上側に狭い翼をつけた短い柄がある。2023年2月4日 函南
⑬⑭フタツキジノオ、栄養葉の下部

フタツキジノオ、栄養葉の羽片は12㎝程度。2023年2月4日 函南 フタツキジノオ、胞子葉の羽片は長いものでは14㎝程度。2023年2月4日 函南
⑮フタツキジノオ、栄養葉の羽片
⑯フタツキジノオ、胞子葉の羽片

フタツキジノオ、栄養葉の羽片の柄。2023年2月4日 函南 フタツキジノオ、栄養葉の羽片の柄。2023年2月4日 函南
⑰⑱フタツキジノオ、栄養葉の羽片の柄


参考画像 (2022年12月3日 静岡県東部)
オオキジノオ(左)とキジノオシダ(右)。2022年12月3日 静岡県東部 オオキジノオ(中央)とキジノオシダ(右上)。2022年12月3日 静岡県東部
⑲オオキジノオ(左)とキジノオシダ(右)
⑳オオキジノオ(中央)とキジノオシダ(右上)





クサソテツ
両側が森に囲まれたやや明るい水の枯れた沢沿いでは、クサソテツの群生が見られた。この季節は立ち枯れした胞子葉が目立っていた。
林内、上空が開けた河原沿いに群生するクサソテツ。2023年2月4日 函南周辺  
①林内、上空が開けた河原沿いに群生するクサソテツ 

胞子葉が叢生するクサソテツ。2023年2月4日 函南周辺 クサソテツ、胞子葉。2023年2月4日 函南周辺 
②胞子葉が叢生するクサソテツ 
③クサソテツ、胞子葉





ウスゲフモトシダとケブカフモトシダ
フモトシダはいくつかの形に分けられる。普通のフモトシダ、ウスゲフモトシダ、ケブカフモトシダ。函南の観察地ではウスゲフモトシダはあまり観察されなかった。ウスゲフモトシダは葉や中軸の表側に毛が少なく葉の表面には多少光沢がある。ケブカフモトシダは葉柄・葉身が硬く植物体を立ち上げていることが多いく、名前のように植物体全体に毛が多い。普通のフモトシダは中間的で、ケブカフモトシダほどではないが植物体全体に毛があり葉面には光沢が無く、葉柄・葉身はそれほど硬く立ち上がらない。

林内の一つの斜面に生育するケブカフモトシダ(左上)とウスゲフモトシダ(中央および右)。2023年2月4日 函南周辺 ウスゲフモトシダ、葉身。2023年2月4日 函南周辺 
①ケブカフモトシダ(左上)とウスゲフモトシダ(中央および右) 
②ウスゲフモトシダ、葉身

ウスゲフモトシダ、羽片の葉の表面は毛がほとんど生えず多少光沢がある。2023年2月4日 函南周辺 
③ウスゲフモトシダ、羽片表面

ウスゲフモトシダ、羽片裏側。2023年2月4日 ウスゲフモトシダ、葉裏側の側脈上にはほとんど毛が生えていない。2023年2月4日 函南周辺 
④ウスゲフモトシダ、羽片裏側
⑤ウスゲフモトシダ、羽片裏側の脈





ハシゴシダ
乾燥気味の稜線の林床で観察された。
乾燥気味の稜線の林床に生育するハシゴシダ。2023年2月4日 函南周辺 ハシゴシダ、羽片。2023年2月4日 函南周辺 
①乾燥気味の稜線の林床に生育するハシゴシダ 
②ハシゴシダ、羽片





コハシゴシダ
あまりウエットではない林床や風化した岩や土壌がむき出しの乾燥気味の崖に生育していた。葉身は狭披針形。20~30㎝。羽片は全裂するが基部の小羽片は独立して小判形になる。
乾燥気味の林床に生育するコハシゴシダ。2023年2月4日 函南周辺 乾燥した崖に生育するコハシゴシダ。2023年2月4日 函南周辺 
①乾燥気味の林床に生育するコハシゴシダ 
②乾燥した崖に生育するコハシゴシダ

コハシゴシダ、羽片基部の小羽片に1~2対は独立する。2023年2月4日 函南周辺
コハシゴシダ、羽片





イブキシダ
渓流植物。川の水辺や川から少し高い橋の周りに生育。
川に架かる橋の周りに生育するイブキシダ。2023年2月4日 函南 イブキシダ、胞子のう群は辺縁寄りにつく。2023年2月4日 函南
①川に架かる橋の周りに生育するイブキシダ
②イブキシダ、胞子のう群 





タニイヌワラビ
常緑性。標高350m付近林内のウエットな谷筋に生育。この季節タニイヌワラビ以外のメシダ属のシダは枯れている。
林内のウエットな谷筋に生育するタニイヌワラビ。2023年2月4日 函南 林内のウエットな谷筋に生育するタニイヌワラビ。2023年2月4日 函南
①林内のウエットな谷筋に生育するタニイヌワラビ
①タニイヌワラビ、羽片





艶のないハカタシダ
ハカタシダには斑入りの個体(関東地方では少ない。)、斑の入らない個体などが見られるが、今回葉が白緑色で艶が無くマットな質感の個体が観察された。

艶のないハカタシダ。2023年2月4日 函南
①艶のないハカタシダ

あまりウエットではないスギ・ヒノキ林の1地点に群生する艶のないハカタシダ。2023年2月4日 函南 艶のないハカタシダ、最下羽片。2023年2月4日 函南
②1地点で群生する艶のないハカタシダ
③艶のないハカタシダ、最下羽片

艶のないハカタシダ、胞子のう群。2023年2月4日 函南 艶のないハカタシダ、胞子のう群。2023年2月4日 函南
④⑤艶のないハカタシダ、胞子のう群





小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダ

※観察会ではマルバベニシダとしましたが、小羽片に切れ込みが無いエンシュウベニシダに訂正します。
スギ・ヒノキ林に接するやや乾燥気味の竹林の土手に生育。①小羽片には切れ込みは入らないが小羽片の形は底辺の広い三角形であった。マルバベニシダであるならば歪な長卵形となることが多い。②葉柄の鱗片は葉柄に纏わりつくようにして曲がってつく。マルバベニシダの葉柄の鱗片は直線的であまり曲がらない。
小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダ。2023年2月4日 函南
①小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダ

小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダ、葉柄下部の鱗片。2023年2月4日 函南 小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダ、葉柄下部の鱗片。2023年2月4日 函南 小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダ、葉柄下部の鱗片。2023年2月4日 函南 小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダ、葉柄下部の鱗片。2023年2月4日 函南
②③④⑤小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダ、葉柄下部の鱗片

小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダ、小羽片は底辺が広い三角形・円頭。2023年2月4日 函南 小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダ、小羽片は底辺が広い三角形・円頭。2023年2月4日 函南
⑥⑦小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダ、羽片・小羽片

小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダ、胞子のう群。2023年2月4日 函南 小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダ、胞子のう群。2023年2月4日 函南
⑧⑨小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダ、胞子のう群





普通のエンシュウベニシダ
上記の小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダに対して、小羽片に切れ込みが入るエンシュウベニシダ。切れ込みのないエンシュウベニシダの近くに生育していた。
エンシュウベニシダ。2023年2月4日 函南
①エンシュウベニシダ

エンシュウベニシダ、葉柄下部の鱗片。2023年2月4日 函南 エンシュウベニシダ、葉柄下部の鱗片。2023年2月4日 函南 エンシュウベニシダ、葉柄下部の鱗片。2023年2月4日 函南
②③④エンシュウベニシダ、葉柄下部の鱗片

エンシュウベニシダ、羽片。2023年2月4日 函南 エンシュウベニシダ、羽片。2023年2月4日 函南
⑤⑥エンシュウベニシダ、羽片

エンシュウベニシダ、胞子のう群。2023年2月4日 函南 エンシュウベニシダ、胞子のう群。2023年2月4日 函南
⑤⑥エンシュウベニシダ、胞子のう群





サイゴクベニシダ
観察地の上部標高300m程度。沢沿いに生育する照葉樹や夏緑広葉樹とスギ林が接する林床に生育するが、沢の流れからは多少上部の林床に生育していた。大株であるが群生せず単独で生育。多少離れたところにもい1株生育し2株確認。
沢の流れからは多少上部の混生林林床に生育するサイゴクベニシダ。2023年2月4日 函南周辺 サイゴクベニシダ、葉柄の鱗片。2023年2月4日 函南周辺
①混生林林床に生育するサイゴクベニシダ
②サイゴクベニシダ、葉柄の鱗片。

サイゴクベニシダ、中軸の鱗片。2023年2月4日 函南周辺 サイゴクベニシダ、胞子のう群。2023年2月4日 函南周辺
③サイゴクベニシダ、中軸の鱗片
④サイゴクベニシダ、胞子のう群





オオイタチシダ(アオニオオイタチシダ)
函南方面では、オオイタチシダの各typeが見られたがアオニオオイタチシダはそれほど多く見られなかった。
山道沿いのドライな崖で見られたオオイタチシダ(アオニオオイタチシダ)。2023年2月4日 函南 オオイタチシダ(アオニオオイタチシダ)、羽片。2023年2月4日 函南
①山道沿いのドライな崖で見られたオオイタチシダ(アオニオオイタチシダ)
②オオイタチシダ(アオニオオイタチシダ)、羽片





ヒメイタチシダ
標高100m付近、乾燥気味のやや明るい林縁の崖に生育。
乾燥気味のやや明るい林縁の崖に生育ヒメイタチシダ。2023年2月4日 函南 ヒメイタチシダ、最下羽片。2023年2月4日 函南
①乾燥気味のやや明るい林縁の崖に生育ヒメイタチシダ
②ヒメイタチシダ、最下羽片

ヒメイタチシダ、葉柄下部の鱗片。2023年2月4日 函南 ヒメイタチシダ、胞子のう群。2023年2月4日 函南
③ヒメイタチシダ、葉柄下部の鱗片
④ヒメイタチシダ、胞子のう群




イヌイワヘゴ





イノデモドキ
イノデの仲間は、イノデ、アスカイノデ、アイアスカイノデ、イノデモドキ、ドウリョウイノデ(イノデ×アイアスカイノデ)、オオタニイノデ(アスカイノデ×アイアスカイノデ)、ミウライノデ(イノデ×アスカイノデ)などが見られた。イノデモドキは観察コース内では一番標高が高いところ(およそ350m)で1地点・5~6株生育しているのを確認した。林内の谷筋で見られた。ここから標高を上げるとイノデモドキはもう少し普通にみられるようになるのではないか。また、標高が上がるともう少しいろいろなイノデの仲間が観察されるかもしれない。
標高350mくらいで初めて観察されたイノデモドキ。2023年2月4日 函南
①標高350mくらいで初めて観察されたイノデモドキ





オオタニイノデ
アイアスカイノデとアスカイノデの雑種と推定される。両親が生育する谷沿いのスギ・ヒノキ林林床に生育。
両親(アイアスカイノデとアスカイノデ)が生育する林床に生育するオオタニイノデ。2023年2月4日 函南 オオタニイノデ、胞子のう群はやや辺縁寄りにつき、弾けずに固まる。2023年2月4日 函南 
①両親(アイアスカイノデとアスカイノデ)が生育する林床に生育するオオタニイノデ
②オオタニイノデ、胞子のう群

オオタニイノデ、葉柄下部の鱗片。2023年2月4日 函南 オオタニイノデ葉柄下部の鱗片、アスカイノデに似てねじれ先端には栗色が入る。2023年2月4日 函南
③④オオタニイノデ、葉柄下部の鱗片

オオタニイノデ葉柄上部の鱗片、アイアスカイノデに似て披針形・直線的な鱗片をつける。2023年2月4日 函南 
⑤オオタニイノデ、葉柄上部の鱗片





制作中