伊豆半島の付け根、函南を皆さんで歩きました。標高は100~300mの低山。箱根火山の南麓、緩やかに傾斜しています。場所にもよると思われますがシカの食害は少ないようでした。
タチクラマゴケ
お寺の参道コケの上に生育するタチクラマゴケ。この季節明るいところに生育する株は紅葉する。
フタツキジノオ
フタツキジノオと思われる株を観察。川の支流に沿ってスギ・ヒノキ林が広がる道路わきのやや明るい森の入り口で1株観察。周辺にはリョウメンシダ、イヌイワヘゴ、ノコギリシダ、アマクサシダ、イブキシダなどが生育。まだ胞子を見ていないので機会を見つけて胞子のようすを調べてみたい。
栄養葉の大きさは45~65㎝、胞子葉の大きさは90㎝。栄養葉にはキジノオシダの特徴が表れているが、胞子葉はオオキジノオの特徴が表れていた。今までなかなかフタツキジノオを断定することは難しかったが、今回生育していた個体では明瞭にキジノオシダ・オオキジノオ2種の特徴が表れていた。羽片はほとんど鎌曲せず羽片中間あたりから幅は徐々にせまくなりオオキジノオの羽片に似る。下部羽片では有柄、中間では無柄、上部に行くに従い羽片上側が中軸に流れさらに上部では羽片基部上側・下側とも同じくらいの幅で中軸に合着する。
⑮フタツキジノオ、栄養葉の羽片
⑯フタツキジノオ、胞子葉の羽片
⑰⑱フタツキジノオ、栄養葉の羽片の柄
参考画像 (2022年12月3日 静岡県東部)
⑲オオキジノオ(左)とキジノオシダ(右)
⑳オオキジノオ(中央)とキジノオシダ(右上)
クサソテツ
両側が森に囲まれたやや明るい水の枯れた沢沿いでは、クサソテツの群生が見られた。この季節は立ち枯れした胞子葉が目立っていた。
①林内、上空が開けた河原沿いに群生するクサソテツ
ウスゲフモトシダとケブカフモトシダ
フモトシダはいくつかの形に分けられる。普通のフモトシダ、ウスゲフモトシダ、ケブカフモトシダ。函南の観察地ではウスゲフモトシダはあまり観察されなかった。ウスゲフモトシダは葉や中軸の表側に毛が少なく葉の表面には多少光沢がある。ケブカフモトシダは葉柄・葉身が硬く植物体を立ち上げていることが多いく、名前のように植物体全体に毛が多い。普通のフモトシダは中間的で、ケブカフモトシダほどではないが植物体全体に毛があり葉面には光沢が無く、葉柄・葉身はそれほど硬く立ち上がらない。
①ケブカフモトシダ(左上)とウスゲフモトシダ(中央および右)
②ウスゲフモトシダ、葉身
④ウスゲフモトシダ、羽片裏側
⑤ウスゲフモトシダ、羽片裏側の脈
ハシゴシダ
乾燥気味の稜線の林床で観察された。
①乾燥気味の稜線の林床に生育するハシゴシダ
②ハシゴシダ、羽片
コハシゴシダ
あまりウエットではない林床や風化した岩や土壌がむき出しの乾燥気味の崖に生育していた。葉身は狭披針形。20~30㎝。羽片は全裂するが基部の小羽片は独立して小判形になる。
①乾燥気味の林床に生育するコハシゴシダ
②乾燥した崖に生育するコハシゴシダ
イブキシダ
渓流植物。川の水辺や川から少し高い橋の周りに生育。
①川に架かる橋の周りに生育するイブキシダ
②イブキシダ、胞子のう群
タニイヌワラビ
常緑性。標高350m付近林内のウエットな谷筋に生育。この季節タニイヌワラビ以外のメシダ属のシダは枯れている。
①林内のウエットな谷筋に生育するタニイヌワラビ
①タニイヌワラビ、羽片
艶のないハカタシダ
ハカタシダには斑入りの個体(関東地方では少ない。)、斑の入らない個体などが見られるが、今回葉が白緑色で艶が無くマットな質感の個体が観察された。
②1地点で群生する艶のないハカタシダ
③艶のないハカタシダ、最下羽片
小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダ
※観察会ではマルバベニシダとしましたが、小羽片に切れ込みが無いエンシュウベニシダに訂正します。
スギ・ヒノキ林に接するやや乾燥気味の竹林の土手に生育。①小羽片には切れ込みは入らないが小羽片の形は底辺の広い三角形であった。マルバベニシダであるならば歪な長卵形となることが多い。②葉柄の鱗片は葉柄に纏わりつくようにして曲がってつく。マルバベニシダの葉柄の鱗片は直線的であまり曲がらない。
①小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダ
②③④⑤小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダ、葉柄下部の鱗片
普通のエンシュウベニシダ
上記の小羽片に切れ込みのないエンシュウベニシダに対して、小羽片に切れ込みが入るエンシュウベニシダ。切れ込みのないエンシュウベニシダの近くに生育していた。
①エンシュウベニシダ
サイゴクベニシダ
観察地の上部標高300m程度。沢沿いに生育する照葉樹や夏緑広葉樹とスギ林が接する林床に生育するが、沢の流れからは多少上部の林床に生育していた。大株であるが群生せず単独で生育。多少離れたところにもい1株生育し2株確認。
①混生林林床に生育するサイゴクベニシダ
②サイゴクベニシダ、葉柄の鱗片。
③サイゴクベニシダ、中軸の鱗片
④サイゴクベニシダ、胞子のう群
オオイタチシダ(アオニオオイタチシダ)
函南方面では、オオイタチシダの各typeが見られたがアオニオオイタチシダはそれほど多く見られなかった。
①山道沿いのドライな崖で見られたオオイタチシダ(アオニオオイタチシダ)
②オオイタチシダ(アオニオオイタチシダ)、羽片
ヒメイタチシダ
標高100m付近、乾燥気味のやや明るい林縁の崖に生育。
①乾燥気味のやや明るい林縁の崖に生育ヒメイタチシダ
②ヒメイタチシダ、最下羽片
③ヒメイタチシダ、葉柄下部の鱗片
④ヒメイタチシダ、胞子のう群
イヌイワヘゴ
イノデモドキ
イノデの仲間は、イノデ、アスカイノデ、アイアスカイノデ、イノデモドキ、ドウリョウイノデ(イノデ×アイアスカイノデ)、オオタニイノデ(アスカイノデ×アイアスカイノデ)、ミウライノデ(イノデ×アスカイノデ)などが見られた。イノデモドキは観察コース内では一番標高が高いところ(およそ350m)で1地点・5~6株生育しているのを確認した。林内の谷筋で見られた。ここから標高を上げるとイノデモドキはもう少し普通にみられるようになるのではないか。また、標高が上がるともう少しいろいろなイノデの仲間が観察されるかもしれない。
①標高350mくらいで初めて観察されたイノデモドキ
オオタニイノデ
アイアスカイノデとアスカイノデの雑種と推定される。両親が生育する谷沿いのスギ・ヒノキ林林床に生育。
①両親(アイアスカイノデとアスカイノデ)が生育する林床に生育するオオタニイノデ
②オオタニイノデ、胞子のう群
制作中