Top / 旅の地のシダ / 鳥海山周辺平成28年8月18日(木)~20日(土)
今回は鳥海山周辺および真室川さらに秋田本荘方面でシダを観察しました。このあたりのシダに詳しい方々に3日間案内していただきました。日本海沿岸から鳥海山の山麓に広がる広大な裾野に広がるスギ林等の常緑針葉樹の森、鳥海山中腹に広がるブナなどの夏緑広葉樹林の森や数多くの滝や渓谷、1000m以上の高原の湿地や池塘、耕作地周辺に広がる花盛りの興味深い湿地などいろいろな環境・標高で数多くのシダやそのほかの興味深い植物を観察しました。
ヒカゲノカズラの仲間
水辺を好むヒカゲノカズラの仲間、ヒカゲノカズラ、トウゲシバが見られました。
水辺を好むヒカゲノカズラの仲間
鳥海山周辺ではよくみられるのかもしれませんが、胞子のう穂が大変長いヒカゲノカズラの仲間でした。
水辺を好むヒカゲノカズラの仲間は、側枝の先から胞子のう穂(1~3本)をつける枝(総梗)を立ち上げています。総梗の表面は鱗片状で10~12㎝、その上に長さ8~14センチの長い胞子のう穂を1~3本立ち上げています。総梗の上に複数の胞子のう穂が枝分かれしてつきますが、枝分かれした部分から胞子のう穂までの間ににはほとんど柄(小梗)はありませんでした。胞子のう穂は先端に向けて徐々に細くなり先端は尖ります。胞子のう穂を形づくる鱗片(胞子葉)は下部~中部にかけてはひし形の鱗状で上部に近づくと鱗片(胞子葉)はだんだん長くなり辺縁には鋸歯が確認できる。新芽は湿原内以外に浅瀬の水中にも葉を伸ばし新しい新葉を展開していた。この小さな湿原では他に興味深い植物が数多く見られました。
(1)水辺を好むヒカゲノカズラの仲間
(2)ムラサキミミカキグサやオオミズゴケと共に生育する水辺を好むヒカゲノカズラの仲間
(1)(2)水辺に伸びる水辺を好むヒカゲノカズラの仲間の新芽
(1)水辺を好むヒカゲノカズラの仲間の胞子のう穂先端
(2)水辺を好むヒカゲノカズラの仲間の胞子のう穂中部
ヒカゲノカズラ
標高1000m付近鳥海山の登山口周辺の丈の低いミズナラなどの風衝林の林床で見られました。
(1)ヒカゲノカズラ、側枝
(2)ヒカゲノカズラ、主茎
トウゲシバ
ブナ、ヒメアオキ、タムシバなどの森の林床で見られました。
トウゲシバ
コケシノブの仲間
同じ夏緑広葉樹の森にコケシノブ、ホソバコケシノブ、ヒメコケシノブが見られました。この森ではホソバコケシノブはコケシノブよりも薄暗いところを好むようでした。ヒメコケシノブは上記の2種よりも明るくそれほどウエットでない岩場周辺に生育していました。
コケシノブ
夏緑広葉樹林内、やや明るい林床、林内の岩壁に群生。葉は2回羽状に分かれる。羽片は中軸に狭い角度でつき岩壁に垂れ下がるようになる。葉は波打たず、全縁。ホソバコケシノブよりもやや幅が広い。羽軸や小羽軸の中肋は有色でやや盛り上がることがある。鳥海山山麓で観察されたものは包膜が下を向かないで水平方向を向くようである。
(1)コケシノブ
(2)岩壁に群生するコケシノブ
ヒメコケシノブ
コケシノブ、ホソバコケシノブより明るく乾燥気味の崖や樹幹で見られた。キヨスミコケシノブの小さい個体に似る。各裂片は短く全縁であるが、中軸裏側は無毛で胞子のう群は葉身の先のほうにまとまってつける。
ヒメコケシノブ
ホラゴケの仲間
秋田県本荘の岩壁の渓谷や鳥海山裾野に広がる広大なスギ植林地内で生育していました。ウエットなスギ植林地内では岩の側面や上面にコケの仲間と共に生育していました。葉の大きさは7~10㎝、葉柄や中軸の翼は波打ち、側羽片を広い角度でつけ、羽片は立体的に見える。また両側が切り立った岩壁の渓谷では切り立った岩壁面にハイホラゴケが見られました。葉身は平面的で6~8㎝と小形でした。
ヒメハイホラゴケⅠ 葉縁がよく波打つtype
鳥海山スギ植林地内では岩の側面に群生していた個体は全体に葉の周りは波打った感じであった。
ヒメハイホラゴケⅡ
秋田県本荘の岩壁の渓谷でみられた個体
(1)(2)ヒメハイホラゴケ
ヒメハイホラゴケⅢ 葉が波打たないtype
秋田県本荘の岩壁の渓谷でみられた個体
葉が波打たず裂片が長いヒメハイホラゴケ
キジノオシダ属の仲間
夏緑広葉樹の森で見られました。関東では見たことがありませんでしたのではじめは感激しましたが、夏緑広葉樹林の森ではごく普通種でした。
(1)ヤマソテツ、栄養葉の羽片
(2)ヤマソテツ、胞子葉の羽片
チャセンシダの仲間
秋田県本荘の岩壁の渓谷では小さなイワトラノオがわずかに見られました。コタニワタリはこのあたりでは普通に見られるそうです。
イワトラノオ
小さな株が1つ見られました。胞子のう群はつけていませんでした。リョウメンシダの幼株かもしれません。
イワトラノオ
コタニワタリ
この谷では普通種でした。秋田県本荘の渓谷で。
(1)コタニワタリ
(2)コタニワタリ、胞子のう群
ヒメシダ属の仲間
ヒメワラビ、ゲジゲジシダ、ミヤマワラビ、オオバショリマ、ヤワラシダなどが見られました。ゲジゲジシダは東北のほうでは少なくなるとのお話を聞いていましたが、確かに目にすることは無く、大きなスギ植林地内のウエットな森の中の石組みで1ヶ所で見ただけでした。
ミヤマワラビ
夏緑広葉樹林内の岩場周辺や鳥海山登山口1000m付近の谷筋で生育していました。
ミヤマワラビ
オオバショリマ
鳥海山登山口1000m付近、池塘が点在する高層湿原の木道沿いでは群生していました。二ノ滝付近の夏緑広葉樹林内でも見られました。
(1)オオバショリマ
(2)オオバショリマ、葉身下部
(1)オオバショリマ、羽片
(2)オオバショリマ、胞子のう群
イワハリガネワラビ
渓谷沿いの切り立った岩壁にはイワハリガネワラビが群生。岩場周辺では林床にも生育していました。ハリガネワラビにくらべ葉柄は細く太さは1~1.5㎜でわら色~淡緑色。胞子のう群は中間につき、包膜には短い突起程度のけが生える。夏緑広葉樹林林床にはハリガネワラビも見られました。
(1)イワハリガネワラビ、胞子のう群
(2)イワハリガネワラビ、包膜
(1)イワハリガネワラビ、胞子側面
(2)イワハリガネワラビ、胞子表面
(1)イワハリガネワラビ、胞子側面
(2)イワハリガネワラビ、胞子表面
アオハリガネワラビ
アオハリガネワラビにしてはやや葉柄が太めであった。葉柄の色はわら色~黄緑色を呈します。胞子のう群は中間につく。雑種の可能性もあったので胞子を調べると数も60以上で正常(有性生殖種)。胞子は表面の襞の辺縁の鋸歯がやや鋭い。②襞の腺が細くシャープ。
(1)アオハリガネワラビ、羽片
(2)アオハリガネワラビ、小羽片
イワデンダの仲間
本荘の岩壁の渓谷ではやや普通に見られました。
イワデンダ
渓谷の入口、ウエットなやや明るい岩場では30~40㎝のイワデンダが生育していました。
シシガシラの仲間
シシガシラは夏緑広葉樹林内の崖やところどころ露出しているようなところでは普通に見られました。標高1000m付近の上部を丈の低いミズナラやヤナギの仲間の風衝林では斜面などでシシガシラに混じってミヤマシシガシラも見られました。
ミヤマシシガシラとシシガシラ
鳥海山の登山口付近の背の低い風衝林の生育する崖で見られました。シシガシラに混じって生育していました。
(1)ミヤマシシガシラ
(2)ミヤマシシガシラとシシガシラ
(1)ミヤマシシガシラ、羽片裏側
(2)シシガシラ、羽片裏側
メシダ属の仲間 [#f17a35f3]
・鳥海山山麓から1200m付近までいろいろなメシダ属のシダを観察しました。
サトメシダ
ブナなどの夏緑広葉樹林の林縁でサトメシダを観察しました。大きさは60~80㎝。
(1)サトメシダ
(2)サトメシダ、葉身下部
(1)(2)サトメシダ、胞子のう群
コシノサトメシダ
田畑の周りや山道沿いの明るい草地などではコシノサトメシダがやや普通に見られました。コシノサトメシダはサトメシダにくらべ葉身よりも葉柄のほうが長い感じで、葉身の形もサトメシダに比べ幅が狭くスリム、葉の色は淡緑色~黄緑色です。小羽片は最下羽片でも発達せず小さく丸っこいです。羽片には柄があり、羽片基部では上下の小羽片は対生します。
(1)コシノサトメシダ
(2)コシノサトメシダ、葉柄下部の鱗片
カラクサイヌワラビ
カラクサイヌワラビは夏緑広葉樹林の林床でヤマイヌワラビと共によく見られました。関東南部ではカラクサイヌワラビよりヒロハイヌワラビのほうが多く見られるが、日本海側ではカラクサイヌワラビのほうが優勢のようです。
(1)(2)カラクサイヌワラビ
(1)(2)カラクサイヌワラビ、胞子のう群
紛らわしいヤマイヌワラビ
葉の色や小羽片の形などからヤマカラクサイヌワラビ(カラクサイヌワラビとヤマイヌワラビの雑種)として掲載しようと思ったのですが、胞子の数や形が正常で有性生殖種であることが分かりました。雑種ではなくヤマイヌワラビでした。
(1)紛らわしいヤマイヌワラビ
(2)紛らわしいヤマイヌワラビ、胞子のう群
(1)紛らわしいヤマイヌワラビ、胞子数
(2)紛らわしいヤマイヌワラビ、胞子の形
ミヤマメシダ
1000m付近の湿地の池塘の周り~1200mの谷沿いで見られました。鱗片は黒褐色~黒色に近く、見分けるよいポイントになりました。1200m付近の雪渓跡地ではまだ芽吹いたばかりでした。
(1)ミヤマメシダ
(2)高原の谷にベニバナイチゴやモミジカラマツと共に群生するミヤマメシダ
(1)雪渓跡に群生するミヤマメシダ
(2)ミヤマメシダ、葉柄の鱗片
オクヤマワラビエゾメシダ
標高1200m付近では、もう8月の中旬を過ぎたというのについ最近まで雪渓が残っていたことを物語るように日陰の谷ではミヤマメシダと共にオクヤマワラビと思われるシダが見られました。オクヤマワラビと思われるシダはまだ新葉は展開しきっておらず葉身の先端は巻いていました。展開したての新葉の葉柄基部の鱗片は濃褐色~黒褐色膜質、葉柄の鱗片は淡褐色膜質でしわが寄って半分葉柄に纏わりつくようにしてついていました。最下羽片はほぼ水平に出て多少短縮する程度でした。普段はあまり目にしないシダですが、関東~信州のほうでも高い山に登った時にはお目にかかるシダなので、こうして実際に目で見てちがいを理解できたことはありがたかったです。
(上左)
(1)雪渓跡地のオクヤマワラビエゾメシダの新芽
(2)ミヤマメシダ(左)とオクヤマワラビエゾメシダ(右)
(上左)
(1)オクヤマワラビエゾメシダ新芽、葉柄の鱗片
(2)オクヤマワラビエゾメシダ新芽、葉柄の基部鱗片
シケチシダ属の仲間
シケチシダとイッポンワラビが見られました。両種とも滝の周辺の森で見られました。
イッポンワラビ
イッポンワラビは群生していることが多いようで、ウエットな林の中では大きいものは80~100㎝に達していた。
(1)イッポンワラビ
(2)イッポンワラビ、羽片
オオシケシダ属の仲間
シケシダ、ホソバシケシダ、セイタカシケシダ、ウスゲミヤシケシダ、ミヤマシケシダ、オオヒメワラビなどが見られました。関東南部で見られるハクモウイノデはお目にかかりませんでした。
ウスゲミヤマシケシダ
こちらではハクモウイノデは一度も観察できませんでした。ウスゲミヤマシケシダとミヤマシケシダだけでした。
(1)ウスゲミヤマシケシダ
(2)ウスゲミヤマシケシダ、葉身
(1)ウスゲミヤマシケシダ、羽片
(2)ウスゲミヤマシケシダ、裂片
(1)ウスゲミヤマシケシダ、根茎の新芽
(2)ウスゲミヤマシケシダ、胞子のう群
オオヒメワラビ
(1)オオヒメワラビ
(2)オオヒメワラビ、羽片
(1)ホソバシケシダ、葉身下部
(2)ホソバシケシダ、最下羽片
(1)ホソバシケシダ、胞子のう群
(2)ホソバシケシダ、包膜(上右)
ホソバシケシダ、胞子表面(上左)
ホソバシケシダ、胞子側面(上右)
セイタカシケシダ
生育地に案内していただきました。1地点、10m四方程度の範囲に間隔をあけて群生していました。他では観察することができませんでした。
セイタカシケシダ
ノコギリシダ属の仲間
キヨタキシダとオニヒカゲワラビ、イワヤシダが見られました。キヨタキシダは樹冠に覆われ薄暗くウエットな谷沿いで群生はせず1~3株程度の群落でときどき見られました。
オニヒカゲワラビ
葉の大きさは80~120㎝と大きく、中軸・羽軸には短い毛のようなものが密生し、胞子のう群は中肋に接するようにしてつく。秋田県本荘の岩壁の渓谷や鳥海山裾野に広がるスギ植林地内で生育していました。常緑の森や高い岩壁などどちらも湿度が高く温度・湿度の変化が少ない環境で群生していました。
オニヒカゲワラビ(上左)
スギ林林床に群生するオニヒカゲワラビ(上右)
イワヤシダ
真室川方面でイワヤシダの群生地を案内していただきました。葉の長さが80㎝程度ある大きな株が樹齢を経たスギ林内の険しい渓谷沿いに群生していました。冬季は雪深いところとのことです。鳥海山の南麓の滝の渓谷や小さい株ですが秋田県本荘方面の渓谷でも見られました。
イノデ属の仲間
夏緑広葉樹の森ではサカゲイノデ、少し標高の高いところでカラクサイノデを観察しました。常緑の森広大なスギ植林地内ではサカゲイノデに加えイノデやアイアスカイノデなどが普通に見られ、このような森では雑種も普通に見られドウリョウイノデ、ホクリクイノデを観察することができました。渓谷の岩壁ではツルデンダが見られました。
カラクサイノデ
カラクサイノデ、下部葉身(上左)
カラクサイノデ、羽片(上右)
カラクサイノデ、胞子のう群
ホクリクイノデ(サカゲイノデ×アイアスカイノデ)
サカゲイノデとアイアスカイノデの雑種と推定される。両種が生育しているところでは見かけることが多い。
カナワラビ属の仲間
リョウメンシダとホソバナライシダが見られました。リョウメンシダは普通に見られますが谷で優占種になるほど群生することはありませんでした。標高がやや上がるとシノブカグマが見られました。
シノブカグマ
夏緑広葉樹林内で山道に沿って標高が上がるにつれて見られるようになりました。
シノブカグマ(上左)
シノブカグマ、葉身(上右)
オシダ属の仲間
鳥海山西側海岸線に至る広大な裾野にはスギ林等の常緑の森ではオシダ、イワヘゴ、オオクジャクシダ、キヨスニオオクジャク?そのほかキノクニベニシダ、キヨスミヒメワラビなどが見られました。雑種はフジオシダ、イノウエシダと思われる個体が見られました。湿度が高く、年間を通して湿度・温度変化が少ない常緑の森は暖かいところのシダ・寒いところを好むシダ両方のシダが見られるようです。さらに積雪の多さや海流などが多様なシダを生育させる環境を作り出しているのでしょうか。ゆっくり時間をかけて歩けばまだまだ何かいろいろなシダが見られそうな興味深い森でした。
また、夏緑広葉樹の森では谷沿いなどウエットな林床でミヤマベニシダの群生が見られました。
オオクジャクシダ
オオクジャクシダ(上左)
オオクジャクシダ、葉身(上右)
オオクジャクシダ、葉柄基部(上左)
オオクジャクシダ、葉身下部の羽片(上右)
オオクジャクシダ、羽片表面(上左)
オオクジャクシダ、羽片裏側(上右)
キヨスミオオクジャク?
キヨスミオオクジャクかもわかりませんがオオクジャクシダのソーラスが中間につくtypeかもわかりません。残念ながらよい画像がありません。すみません。最下羽片はあまり短縮せず胞子のう群は中間についていました。ただ中軸の鱗片の色が淡褐色でした。オオクジャクシダは変異が多いのでその1形の可能性もあります。
イノウエシダ(オシダ×オオクジャクシダ)
オシダとオオクジャクシダの雑種と推定される。オシダとオオクジャクシダが生育する森で観察された。両種の特徴が現れている。成長した株は非常に大型になる。葉柄や中軸には鱗片を密生し、中軸の鱗片には鋸歯がある。小羽片の葉脈は基部では4叉~3叉し中間以降では2叉する。
イノウエシダ、中軸の鱗片(上中)
イノウエシダ、中軸の鱗片の鋸歯(上右)
羽軸に沿って胞子をつける小形のオシダ
イワヘゴを案内していただいた森で見られました。ソーラスが羽軸寄りに、羽軸に沿って1列ついています。一般に大きなオシダでは裂片の中肋に4対(8個)程度ソーラスをつける個体も見られます。この羽軸に沿って胞子をつける小形のオシダも気になったので胞子数を調べると60以上確認でき有性生殖種でオシダということだと思います。ただ、検鏡した胞子のうの中には不揃いな胞子を含むものも見られました。また機会を見て典型的なオシダの胞子を調べて比較してみたいと思います。
羽軸に沿って胞子をつける小形のオシダ(上左)
羽軸に沿って胞子をつける小形のオシダ、葉身(上右)
羽軸に沿って胞子をつける小形のオシダ、胞子のう群(上左)
羽軸に沿って胞子をつける小形のオシダ、小羽片および包膜(上右)
羽軸に沿って胞子をつける小形のオシダ、胞子表面(上左)
羽軸に沿って胞子をつける小形のオシダ、胞子側面(上右)
羽軸に沿って胞子をつける小形のオシダ、胞子表面(上左)
羽軸に沿って胞子をつける小形のオシダ、胞子側面(上右)
羽軸に沿って胞子をつける小形のオシダ、胞子上面(上左)
羽軸に沿って胞子をつける小形のオシダ、胞子側面(上右)
参考画像オシダ 胞子(山梨県北杜市)2016年9月20日
山梨県北杜市のオシダの胞子の周りの襞に緩やかな鈍鋸歯が見られるが、羽軸に沿って胞子をつける小形のオシダと同じ考えられる。
オシダ、胞子表面(上左)
オシダ、胞子側面(上右)
キノクニベニシダ
キノクニベニシダ
ミヤマベニシダ、羽片(上左)
ミヤマベニシダ、胞子のう群(上右)
ウラボシ科の仲間
鳥海山周辺では、いくつもの滝を案内していただきました。夏緑広葉樹林内ではヒメノキシノブ、ミツデウラボシ。滝の周辺は湿度も安定して高くホテイシダ、オシャグジデンダなどを観察しました。
オシャグジデンダ
夏緑広葉樹林内、谷沿いに生育する栃の木にはよく見られました。それ以外にも大木によく着生していました。
オシャグジデンダ(上左、上右)
ホテイシダ
案内していただき初めて観察しました。滝に至るエントランスで常にウエットな空気に包まれたところに生育する樹木の幹に着生していました。観察された個体は黄緑色で周辺が緩やかに波打ち、葉の質は手触りからはそんなに薄い感じはしませんでした。中肋が盛り上がり、胞子のう群のつく葉の表側でリング状に盛り上がっていました。周辺の木にはオシャグジデンダも普通に見られました。
ホテイシダ(上左、上右)
ホテイシダ、葉身および胞子のう群のつく葉の表側(上左)
ホテイシダ、胞子のう群(上右)
カラクサシダ
秋田県本荘の岩壁の渓谷ではカラクサシダが常緑の状態で見られました。昨年からの古い葉と共に今年の新芽がちょうど伸び始めていました。渓谷沿いの大きな転石の基部付近にコケ類と共に群生。
鳥海山山麓の森
鳥海山の西部、海岸まで広がる広大な裾野にはスギ植林地などが広がり、標高を上げると夏緑広葉樹の森になります。その上は1000mあたりでもう亜高山帯の様相でした。やはり北へ行くほど垂直分布は下がっていることを実感しました。
海岸線まで至る広大な裾野に点在するスギなどの植林地はで、常緑の森であること・積雪があること・海流などが関係しているのでしょうか暖かいところを好むシダと寒いところのシダが混在したいへん興味深いシダの森がありました。案内していただいたスギ林の森の林床でヤマアイを教えていただきました。ヤマアイでも藍染ができるそうです。
その上の夏緑広葉樹林の森ではブナ、タムシバ、オオバクロモジ、ヒメアオキ、エゾユズリハ、コショウノキカラスシキミ、サワダツなどが見られました。尾根沿いではナツハゼ、ホツツジ、、ウスノキなどが見られました。
エゾユズリハ(上左)
エゾユズリハ、果実(上右)
その上の亜高山帯は眺めるだけでした。1000付近の池塘ではミツガシワや木道ぞいではエゾリンドウが咲いていました。1200m付近まで案内していただきましたが
もうこの標高でクロマメノキ、ベニバナイチゴやモミジカラマツ、アオノツガザクラが見られました。
花盛りの湿原
・最初に紹介した水辺を好むヒカゲノカズラの仲間が生育していた湿原です。陽当たりのよい湿地では、オオミズゴケ、ヒカゲノカズラの仲間、ホシクサの仲間、ホザキミミカキグサ、ムラサキミミカキグサ、モウセンゴケ、アリノトウグサ、ウメバチソウ、クサレダマ、ヌマトラノオ、サワヒヨドリ、サワラン、カキラン、ミズトンボなどが見られました。近くの別の湿地ではヤナギランやサワギキョウも見られました。限られた時間でいそいで観察したのでいつかもう少しゆっくり観察したい湿地でした。サワランは細長い花柄の先に弓状の唇弁の名残をつけた長い俵状のサク果をつけていましたが、花の時期に一度訪れてみたいものです。
ホザキミミカキグサ(上左、上右)
ムラサキミミカキグサ(上左、上右)
モウセンゴケとオオミズゴケ(上左)
アリノトウグサ(上右)
おしまいに
18日から20日まで朝日が昇る頃から夕方までどっぷりシダに浸かることができました。なによりも案内してくださった方々に深く感謝します。私たちは旅で訪れるだけなのにお忙しいなか3日間案内してくださっただけでなく、事前に観察地のシダの資料・地図、3日間の日程やコースなど最適な計画を立てていただきました。案内していただいた観察地はどこももっと長く留まってゆっくりシダを観察したいところばかりでした。また機会があれば再び訪れてみたいと思います。
なお、宿泊した「四季の森しらい自然館」は鳥海山周辺の観察地や、秋田本荘や真室川方面へもアクセスがよく、公共の宿ですが親切・きれい・バリアフリー・おいしい食事で・きれいな夕日で、たいへんよい宿でした。