コハイホラゴケ Vandenboschia ×stenosiphon
コケシノブ科 ハイホラゴケ属
※詳しい方に画像を見て頂き、標本2はハイホラゴケからコハイホラゴケの訂正いたしました。また、頂いたコメントを掲載させていただきます。2020年4月18日
標本1はコハイホラゴケでよいと思います。包膜の辺縁が切れ込んでいる状態が固定しているのであれば、何らかのランクで分けてもよいかもしれません。
標本2は、標本1とは異なる形態ですが、これもコハイホラゴケの可能性が高いと思います。ハイホラゴケの可能性はゼロとはいえませんが、形態的にはコハイホラゴケの範疇だと思います。コハイホラゴケ、セイタカホラゴケなどの雑種は形態変異の幅が大きく、“これが同じもの?”と首をかしげることがよくあります。Vandenboschia kalamocarpaハイホラゴケは、今まで見てきた範囲では、葉身があまり波打たず、どちらかといえば扁平で、切れ込みが浅く、裂片も重なり合うことは殆どありません。他方、ヒメハイホラゴケはご承知の通り、よく切れ込み、葉身は立体的で“ふわふわ”した感じがあり、標本にすると重なりあっていることがよく分かります。コハイホラゴケ、ホクリクハイホラゴケ、ミウラハイホラゴケはヒメハイホラゴケの遺伝子を半分持っていますので、多少立体的になりますが、もちろん例外もあります。ご存知の通り、雑種は必ずしも両親種の中間型ではなく、どちらか一方に良く似ている場合があります。オオハイホラゴケはどちらかといえば扁平ですが、葉身のサイズや根茎の太さがハイホラゴケとは全く異なりますので、ハイホラゴケとの区別に迷うことはないと思います。但し、セイタカホラゴケの極端に大型のものはオオハイホラゴケと、小型で切れ込みの浅いものはハイホラゴケと迷うものがあります。このような紛らわしい型は胞子を調べる必要があります。なお、ミウラハイホラゴケ、ホクリクハイホラゴケ、イズハイホラゴケは雑種起源の4倍体種ですから、倍数性が分かればそれぞれの親種(2倍体あるいは3倍体?)との区別は可能です。雑種のままと思われるミツイシハイホラゴケ、コハイホラゴケ、セイタカホラゴケは、形態的にはそれぞれミウラハイホラゴケ、ホクリクハイホラゴケ、イズハイホラゴケとの区別は困難ですが、胞子を丹念に調べることで判断するしかないと思います。
生育している環境:林内、傾斜のきつい谷沿いに露出する岩壁に群生。
観察された特徴:ハイホラゴケとヒメハイホラゴケの雑種と推定される。常緑性。葉は広披針形、葉の大きさは先ほどのハイホラゴケとほぼ同じで10~12㎝。裂片はハイホラゴケにくらべると幅が細く深く切れ込む。包膜の辺縁は多少変化はあるが辺縁は凸凹する。胞子は全体の数が少なく大きさ・形は不整。
(1)(2)(3)コハイホラゴケ、1つの胞子嚢を壊したようす
標本2 一部の胞子に有性生殖種を疑わせる胞子が観察された株
標本1が生育している場所から50mほど上部で観察。観察会の報告では最初ハイホラゴケとしましたが詳しい方に画像を見て頂きコハイホラゴケに訂正しました。2020年4月18日。
生育している環境:林内、傾斜のきつい谷沿いに露出する岩壁に群生。
観察された特徴:常緑性。葉は広披針形、葉の大きさは標本1のコハイホラゴケとほぼ同じで10~12㎝。葉柄~中軸にかけて幅の広い翼を形成。羽片は多少波打つものからあまり波打たないものまである。裂片は標本1のコハイホラゴケににくらべると幅広く切れ込みは浅い。包膜の辺縁は全縁でなめらか。
胞子の観察から:胞子数は45~60個程度確認でき、大きさ・形は歪なもの~整ったものまで見られ、雑種~有性生殖種を疑わせるものまで見られた。胞子数や胞子の大きさ・形は正常。
※ハイホラゴケの仲間は外観による区別が難しく、この標本もハイホラゴケと思われるが、小さなミウラハイホラゴケという可能性も考えなけばならない。
(1)(2)コハイホラゴケハイホラゴケ、1つの胞子嚢を壊したようす
(3)コハイホラゴケハイホラゴケ、1つの胞子嚢を壊したようす
(4)、(3)の一部を拡大
(1)コハイホラゴケハイホラゴケ、胞子上面
(2)コハイホラゴケハイホラゴケ、胞子上面