アイアスカイノデ多茎形シムライノデ
オシダ科 イノデ属
シムライノデとして掲載したシダをアイアスカイノデ多茎形として訂正して再掲載いたします。2018年8月29日
(※胞子本体は正常に見えるが、表面の突起(襞)が正常であったり全くなかったりする個体)
アイアスカイノデ多茎形シムライノデ2017年5月31日撮影
※28年3月、このシダが生育する森に森林組合により多くの簡易な林道がつくられた。その造成工事に伴い、このシダを含め、造成された林道周辺のシダは土砂に埋まり、その後、表土を取り除くことにより、かろうじてこの個体を生かすことができた。一度、土砂に埋まったせいもあるのか、シダの持つ表情が1年前と変化したような気がする。
生育している環境:スギ植林地林床。イノデの仲間が多く生育する緩やかな谷で周辺にはサイゴクイノ、イノデモドキ、イノデ、アイアスカイノデ、カタイノデおよびドウリョウイノデ、ハコネイノデ、ハタジュクイノデなどが見られる。
観察された特徴:小形のアイアスカイノデの多茎形。1つの根茎がどのように分岐しているのかわからないが、葉を展開する生長点が何らかの理由で枝分かれし、複数の生長点から葉を叢生させ、多数の株が密集しているように見える。葉の大きさは35~45㎝、狭卵状披針形、葉柄の鱗片は中央が栗色で辺縁は淡褐色となる。胞子嚢群は辺縁寄りにつく。
胞子の形状について:胞子を観察すると、胞子数は60個程度確認でき有性生殖種と考えられる。胞子の形状や大きさは特に乱れていないが、胞子表面の突起(襞)乱れる。普通のアイアスカイノデと同じ形状の突起を持つ胞子や、全く突起を持たない胞子・小さい突起を持つ胞子など様々な形の胞子が見られる。
胞子の発芽のようす:胞子を播種。多数の前葉体が発芽、そのうちの1株だけしか胞子体をつけなかった。胞子体はその後1年ほどたってもう1株発芽、計2株が現在生育している。発芽のようすは悪い。
訂正とお詫び・同定してくださった方へのお礼 2018年8月29日シダの研究者の方に同株を同定して頂き、シムライノデではないことが確認されました。今後はさらに慎重に観察を行い、間違った情報を掲載しないように努めます。同定して下さった研究者の方には、わざわざ相模湖まで出向いて同定してくださり、さらに他日シムライノデの生育地を案内してくださり、シムライノデの雑種などもていねいに教えていただきました。感謝して訂正させていただきます。
常緑性。①葉柄基部の背軸側の鱗片は栗色・広披針形、向軸側の鱗片は明褐色~褐色・広披針形で、ときどき卵形の幅広の鱗片が混ざる。上から眺めると明褐色の鱗片しか見えない。②葉柄中~上部では鱗片はアイアスカイノデのような2色になる。③中軸下部の鱗片は披針形で鋸歯があり先のほうに細長く栗色が入る。④葉は中形で葉の大きさは50~60cm、緑色は濃く、光沢がある。④小羽片は卵状三角形で先端はまっすぐ尖る。⑤胞子嚢群が最下羽片から全ての羽片につき、最下羽片では羽片上部~先端にまとまってつく。⑥胞子嚢群は小羽片の辺縁寄りにつける。⑦包膜の辺縁は緩やかな波状縁。⑧胞子数は60以上確認でき、大きさの大小や歪な形のものはほとんど認められず、有性生殖種と思われる。⑨胞子の特徴は表面の突起目立たず、表面には亀甲模様が見られる。イノデの仲間はそれぞれ胞子表面が特徴的で他のイノデの仲間とは異なる特徴を示す。参考画像としてイワシロイノデ・アイアスカイノデ・カタイノデ・イノデモドキ・サイゴクイノデなどそれぞれの胞子を紹介します。
生育確認数:1地点、1株。相模湖 嵐山
(1),(2),(3)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、葉柄基部の栗色の鱗片
(1),(2),(3)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、向軸側には広披針形の鱗片に混ざって明褐色・卵形鱗片がつく
(1),(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、葉柄の鱗片
(1),(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、中軸下部の鱗片
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、葉身の中頃の羽片
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、葉身の上部の羽片
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、羽片
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、小羽片
同じ林床に生育するイノデ類の羽片比較(上左、上右)
イノデ・カタイノデ・アイアスカイノデ多茎形シムライノデ・サイゴクイノデ・アイアスカイノデ・イノデモドキ
※左から
(1),(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、最下羽片の胞子嚢群
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子側面
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子上面
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子側面
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子上面
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子側面
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子上面
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子側面
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子上面
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子側面(拡大)
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子上面(拡大)
2017年6月14日胞子播種
アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、前葉体
2018年5月22~29日 胞子観察。 同一個体で観察された多様な胞子表面の形状を持つ胞子
1株から採取した胞子嚢ごとに胞子を撮影しました。1つの胞子嚢内ではどの胞子もほとんど胞子表面の形状は同じでした。
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子側面
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子上面
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子側面
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子上面
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子側面
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子上面
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子側面
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子上面
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子側面
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子上面
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子側面
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子上面
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子側面
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子上面
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子側面
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子上面
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子側面
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子上面
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子側面
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子上面
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子側面
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子上面
(1)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子側面
(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子上面
胞子嚢の中には雑種の形状を示すものも見られた
同定してくださった研究者の方の話では、このような多茎形のイノデの仲間は雑種の可能性もあるとのお話でした。
(1)(2)アイアスカイノデ多茎形シムライノデ、胞子が乱れているものも見られた。
このシダについては、引き続き観察を続けていきたいと思います。