キヨズミイノデ(サイゴクイノデ×イノデモドキ)
Polystichum x kiyozumianum
オシダ科 イノデ属
生育している環境:なだらかに傾斜した嵐山北面のスギ植林地。観察場所周辺はサイゴクイノデとイノデモドキが優勢、次にイノデ、アイアスカイノデ、カタイノデ、ツヤナシイノデ(1株)などが見られる。雑種はハコネイノデ、ハタジュクイノデ、ドウリョウイノデがやや普通に見られる。
観察された特徴:サイゴクイノデとイノデモドキの雑種と推定される。葉の大きさは40~50㎝。胞子嚢群は辺縁寄りにつき、胞子嚢は弾けず残存する。
サイゴクイノデに似ている点
1 葉の色は白っぽい緑色~黄緑色。
2 葉柄基部~下部には栗色で辺縁は淡い色の鱗片がつく。
3 胞子嚢群は辺縁寄りにつき、下部の数対の羽片では耳垂に優先してつき、耳垂の両側にほぼ規則的につく。
イノデモドキに似ている点
1葉柄・中軸の鱗片には辺縁に突起が目立つ。
2葉はやや光沢がある。
3葉身の先はやや尾状になる。
4小羽片の表面は胞子嚢群の位置で膨らむ
観察数:1地点、1株。相模湖周辺。
(1),(2)キヨズミイノデ(サイゴクイノデ×イノデモドキ)葉柄基部の鱗片
(1),(2)キヨズミイノデ(サイゴクイノデ×イノデモドキ)葉柄下部の鱗片
(1),(2)キヨズミイノデ(サイゴクイノデ×イノデモドキ)葉柄下部の鱗片
(1)キヨズミイノデ(サイゴクイノデ×イノデモドキ)葉柄下部の鱗片
(2キヨズミイノデ(サイゴクイノデ×イノデモドキ))葉柄上部の鱗片
(1),(2)キヨズミイノデ(サイゴクイノデ×イノデモドキ)中軸下部の鱗片
(1),(2)キヨズミイノデ(サイゴクイノデ×イノデモドキ)中軸中部の鱗片
(1)(2)サイゴクイノデ(左)とキヨズミイノデ(右)の葉身裏側比較
サイゴクイノデの胞子嚢群は一斉に黒く成熟しているが、キヨズミイノデの胞子嚢群は黒く熟さずあめ色になる。
(1)キヨズミイノデ(サイゴクイノデ×イノデモドキ)羽片
(2)キヨズミイノデ(サイゴクイノデ×イノデモドキ)最下羽片裏側
(1),(2)キヨズミイノデ(サイゴクイノデ×イノデモドキ)小羽片
(1)(2)キヨズミイノデ(サイゴクイノデ×イノデモドキ)羽片裏側
(1),(2),(3)キヨズミイノデ(サイゴクイノデ×イノデモドキ)、胞子嚢群
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(1),(2),(3)キヨズミイノデ(サイゴクイノデ×イノデモドキ)の胞子嚢群の変化のようす(キヨズミイノデ)
イノデの仲間では、フィールドで雑種であるかどうかを判別する基準のひとつが胞子嚢群の付き方である。雑種のイノデの仲間ではまず(1)のように胞子嚢群は瑞々しく膨らむが、中の胞子は半透明で空っぽであったり大小バラバラであったり形が歪である。正常な胞子は黒く、形・大きさが整っている。
次に雑種の胞子嚢群は(2)→(3)のように胞子嚢が弾けずそのままだんだん委縮して固まり、葉(小羽片)の裏側に、凹んだお団子を積み重ねたように残存する。雑種でないイノデ類の場合は胞子が熟すとすぐに胞子嚢が弾け中の胞子を飛散させ、葉の裏には弾けたあとの胞子嚢(開いたグローブのような形)やその残骸を残すだけとなる。