染色体の様子が変なノキ×クロノキシノブ×クロノキシノブの雑種
あるいはクロノキシノブ×ナガオノキシノブの雑種
ウラボシ科 ノキシノブ属
専門家の方にこの個体の倍数性を調べていただきました。また、詳しい方からコメントを頂きました。2020年7月3日
この個体の染色体の解析結果:染色体数は2n=77 倍数性は3倍体 胞子:委縮。
解析結果と外部形態とを総合的に勘案して判断しますと3倍体でしたので、ノキ×クロと思われます。
親種はノキシノブ(2倍体)とクロノキシノブ(4倍体)の雑種と考えられますが染色体数の様子が少し変です。
ノキ×クロの親種はノキシノブ(2倍体 n=25)とクロノキシノブ(4倍体 n=50型とn=51型)でノキ×クロは2n=75型と2n=76型となります。(2n=76型は未確認)この標本は2n=77なので様子が変なノキ×クロと言えます。
親種がクロノキシノブ(4倍体 n=51型)とナガオノキシノブ(2倍体 n=26)とするならば、できた雑種のクロ×ナガオは(3倍体 2n=77)となります。また、現存が確認されていませんがナガオノキシノブ4倍体(n=52)とノキシノブ(2倍体 n=25)の組み合わせでも2n=77となります。ただし、組み合わせはあくまでも推定です。
クロ×ノキの染色体数がおかしなものか、クロ×ナガオかは染色体の観察だけでは決められません。遺伝子解析が必要です。
生育している環境:谷間の林道沿い、石垣の上にスギ林を抱えた東に開けた明るい石垣。ノキシノブ・クロノキシノブ・フジノキシノブおよびそれらの雑種が生育する石垣。
観察された特徴:根茎は長く這わず葉をまとまってつける。葉柄はやや短い(1.5㎝程度)が明瞭で黒褐色を帯びるもの淡緑色を帯びるものが混ざる。葉は15~23㎝、長紡錘形、葉は硬く質は厚く濃緑色で光沢があり、葉の辺縁は多少丸みを帯びる。フィールドでは葉は波打たずまっすぐ。(採取後はうねるように波打った。)胞子嚢群は葉の先のほうから半分程度につき中間につく。胞子は小さいものや歪なものが混ざり雑種と思われる。
クロノキシノブに似ているところ:①クロノキシノブに似て葉は固い。②葉柄は明瞭で黒褐色を帯びるものが見られる。②葉は厚く濃緑色。
ノキシノブに似ているところ:①根茎は長く這わず葉を込み合ってつける。②淡緑色の葉柄が混ざる。③光沢がある。④フィールドでは葉はほとんど波打たない。
(1)染色体数が変なノキシノブ×クロノキシノブ 4月22日撮影
(2)染色体数が変なノキシノブ×クロノキシノブ、胞子を観察した葉
(1)(2)ノキシノブ×クロノキシノブ、葉身基部 ※(1)(2)は撮影角度が異なる
(1)染色体数が変なノキシノブ×クロノキシノブ、葉柄
(2)染色体数が変なノキシノブ×クロノキシノブ、葉身上部および中軸のようす