梅雨の季節、ちょうど雨の中休み、畑宿-飛竜の滝周辺で雨を気にせず皆さんでゆっくりシダを観察しながら歩きました。
オオバノハチジョウシダ
谷沿いのウエットなスギ林林床で観察。やや外観の異なる個体を2株観察した。結果はどちらもオオバノハチジョウシダであった。今回は状態のよいオオバノアマクサシダを観察できなかったが、また小羽片や小頂羽片のようすを比較してみたい。
(1)オオバノハチジョウシダ、胞子上面
(2)オオバノハチジョウシダ、胞子側面
(1)オオバノハチジョウシダ、胞子上面
(2)オオバノハチジョウシダ、胞子側面
(3)オオバノハチジョウシダ、胞子上面
(4)オオバノハチジョウシダ、胞子側面
ミヤマノコギリシダ
久しぶりに再会。もともと小さな群生地であるが以前よりも多く群生しており、安心した。生育地の入り口には、最近家電などが不法投棄されていた。
ミヤマノコギリシダ
(1)ミヤマノコギリシダ、葉柄基部の鱗片
(2)ミヤマノコギリシダ、羽片
(1)ミヤマノコギリシダ、葉身裏側
(2)ミヤマノコギリシダ、最下羽片裏側の胞子嚢群
カラクサイヌワラビ
ウエットなスギ林林床に生育。小羽片基部上側の耳垂状の裂片が羽軸をあまり覆っていなかったので現地では同行の方々とカラクサイヌワラビあるいはオオカラクサイヌワラビ(カラクサイヌワラビ×ヒロハイヌワラビ)の可能性があると考えたが、胞子は正常でカラクサイヌワラビであった。
ウエットなスギ林林床に生育するカラクサイヌワラビ
(1)カラクサイヌワラビ、葉柄基部の鱗片(ピンボケ)
(2)カラクサイヌワラビ、羽片
(1)カラクサイヌワラビ、最下羽片裏側
(2)カラクサイヌワラビ、羽片裏側
(1)カラクサイヌワラビ、胞子1上面
(2)カラクサイヌワラビ、胞子1側面
(3)カラクサイヌワラビ、胞子2上面
(4)カラクサイヌワラビ、胞子2側面
(1)カラクサイヌワラビ、胞子3上面
(2)カラクサイヌワラビ、胞子3側面
(3)カラクサイヌワラビ、胞子4上面
(4)カラクサイヌワラビ、胞子4側面
ヤマイヌワラビ
畑宿周辺ではヒロハイヌワラビやヤマイヌワラビが多く、雑種のヤマヒロハイヌワラビ(ヒロハイヌワラビ×ヤマイヌワラビ)を探した。ここに載せる個体は葉が黄緑色・羽片には短柄・鈎型包膜が少し混ざるなど雑種の可能性を考えたが、胞子は正常でヤマイヌワラビであった。羽軸裏側には毛は確認できなかった。
スギ林林床に生育するヤマイヌワラビ
(1)ヤマイヌワラビ、葉身裏側
(2)ヤマイヌワラビ、羽軸および胞子嚢群
(1)ヤマイヌワラビ、胞子1上面
(2)ヤマイヌワラビ、胞子1側面
ヒロハヤブソテツ
再会できたが、3~4株で増えてはおらずあまり大きな個体には出会えなかった。
ヒロハヤブソテツ
(1)(2)ヒロハヤブソテツ、1つの胞子嚢を壊したようす
※無融合生殖種は1つの胞子嚢の中に32個の胞子を形成します。
(1)ヒロハヤブソテツ、胞子1上面
(2)ヒロハヤブソテツ、胞子1側面
(3)ヒロハヤブソテツ、胞子2上面
(4)ヒロハヤブソテツ、胞子2側面
(1)ヒロハヤブソテツ、胞子3上面
(2)ヒロハヤブソテツ、胞子3側面
(3)ヒロハヤブソテツ、胞子4上面
(4)ヒロハヤブソテツ、胞子4側面
耳垂があるナガバヤブソテツ似のシダ
⇒ナガバヤブソテツあるいは雑種(ナガバヤブソテツ×ヒラオヤブソテツ)
畑宿周辺の石組み似生育。同じ場所ではないが少し離れた石組みにはヤブソテツ(ヒラオヤブソテツ)のよい群生地がある。胞子を観察したところ、胞子嚢群はほとんど空の(不充実)胞子嚢が集まっており充実した胞子はわずかであった。充実した胞子嚢を無作為に4個観察。大小の胞子がある程度見られ雑種の可能性はあるが微妙である。
大楠山で観察した個体はナガバヤブソテツと思われますので、引き続き多くの個体を観察していきます。
(1)(2)耳垂があるナガバヤブソテツ似のシダ、1つの胞子嚢を壊したようす
(1)(2)耳垂があるナガバヤブソテツ似のシダ、1つの胞子嚢を壊したようす
※有性生殖種・雑種は一般に、1つの胞子嚢の中に62個の胞子を形成することが多いです。
オオクジャクシダ
スギ・ヒノキ林内、転石が堆積した水はけのよいウエットな谷に点在して生育。
転石が堆積した水はけのよいウエットな谷に点在して生育するオオクジャクシダ
(1)オオクジャクシダ、葉柄の鱗片
(2)オオクジャクシダ、羽片
オオクジャクシダ(羽片基部が広い楔形)
オオクジャクシダは無融合生殖種で個体変異が大きい。羽片基部が広い楔形になっていたが、胞子数30個程度・胞子の大きさ形が整い無融合生殖種でオオクジャクシダそのもの。
羽片基部が広い楔形のオオクジャクシダ
(1)羽片基部が広い楔形のオオクジャクシダ、葉柄基部
(2)羽片基部が広い楔形のオオクジャクシダ、葉身
(1)羽片基部が広い楔形のオオクジャクシダ、羽片
(2)羽片基部が広い楔形のオオクジャクシダ、胞子嚢群
(1)(2)羽片基部が広い楔形のオオクジャクシダ、1つの胞子嚢をこわしたようす
ハコネオオクジャク
オオクジャクシダとオクマワラビの雑種と推定される。オオクジャクシダが点在して生育する中に1株だけ生育。オオクジャクシダに似るが全体にぼってりした感じ。葉柄基部は淡褐色膜質の鱗片をつけるが葉柄~中軸にかけて栗色を帯びる。羽片基部はやや心形になり、胞子嚢群は葉身の上半分~1/3につき、羽片の中間につく。胞子は雑種の特徴をよく表し、大きさに大小があり形は歪なものが多く混ざる。同行の雑種に詳しい方に同定していただきました。
ハコネオオクジャク
(1)ハコネオオクジャク、葉身
(2)ハコネオオクジャク、最下羽片
(1)ハコネオオクジャク、羽片基部
(2)ハコネオオクジャク、羽片
(1)(2)ハコネオオクジャク、胞子嚢群は葉身の上半分~1/3につく
(1)(2)ハコネオオクジャク、1つの胞子嚢を壊したようす
※胞子は、大きさに大小があり形は歪で不揃いで雑種の特徴がよく現れている。