良い天気で風も穏やかで絶好の観察会日和でした。大雄山の北、苅野の森を皆さんで歩きました。シカの食害を心配したのですが、イノデなど葉身の上半分を食べられていたりしましたがいろいろなシダを観察することができました。帰りにはこの地域で採れたみかんを頂きました。2020年11月28日
オオバノアマクサシダ
オオバノハチジョウシダおよびオオバノアマクサシダが生育していた。オオバノアマクサシダは側羽片の先端(頂小羽片)が長いが、葉の大きさは150㎝に達するものもみられた。
コモチシダ
観察地内では数少ない崖に生育。2地点で観察。
コモチシダ
ヒロハイヌワラビ
葉が黄ばみ枯れ始めていた。
ヒロハイヌワラビ
ヒロハイヌワラビ、羽軸裏側
タニイヌワラビ
一つのスギ・ヒノキ林林床に生育。それほどウエットではないが傾斜地と平坦面が接するような地形に線状に点在して多数生育していた。
(1)タニイヌワラビ、小羽片
(2)タニイヌワラビ、胞子嚢群
ヒカゲワラビ
スギ・ヒノキ林内、作業小屋のような建物の周りで観察。同行の方が「小屋の周りは面白いものが見つかるかも」と話されながら観察中に見つかる。同じ林内でも建物のまわりは周辺よりも緩やかな地形であったり、上部が開けていて光が差し込むなど狭い範囲で周りの森と環境が異なるのかもしれません。
ニセコクモウクジャク
一つのスギ・ヒノキ林の斜面の林床に見渡す範囲に広く群生していた。特徴的なコクモウ(黒毛)と裂片の辺縁寄りにつく胞子嚢群。革質で光沢があるややスリムな小羽片。
(1)ニセコクモウクジャク、羽片と葉柄基部の鱗片
(2)ニセコクモウクジャク、葉柄基部の鱗片
(1)(2)ニセコクモウクジャク、胞子嚢群
メヤブソテツ
メヤブソテツは照葉樹やスギが生育する林内、山道脇の足元の崖に少数の株がまとまって生育。そのほかヤブソテツの仲間は、ヤブソテツ(ツヤナシヤマヤブソテツtype、テリハヤマヤブソテツtype)、テリハヤブソテツ、ナガバヤブソテツが見られました。
(1)メヤブソテツ、葉身裏側
(2)メヤブソテツ、胞子嚢群
オオカナワラビ
写真の個体は成長した大きなオオカナワラビです。長さは80~90㎝。柄や中軸は黒味を帯びた臙脂色。林床から葉を立ち上げていました。「育ちのよいオオカナワラビ」(同行の方の表現)と一般的に普通のオオカナワラビとは外観がだいぶ異なります。
ヤマグチカナワラビかもしれない
胞子を調べていないのではっきりしたことはわかりません。ヤマグチカナワラビ(オオカナワラビとミドリカナワラビの雑種)か、葉の幅の広いオオカナワラビの可能性があります。葉は60~80㎝、厚みがあるが柔らかく濃緑色で光沢あり。葉身の幅が広く、下部の羽片は長く上部に行くに従い短くなり頂羽片は典型的なオオカナワラビほど明瞭ではありません。羽片基部上側の小羽片はミドリカナワラビに似て柄が長く「小羽片の耳の出方がなだらかで優しい感じ」(ミドリカナワラビの小羽片の説明がぴったりだったのでそのままネットから引用させていただきました。)が表れているように思いました。同行の方から、この個体の包膜の辺縁には鋸歯が確認できたとのご連絡を頂いています。
(1)(2)羽片基部の小羽片
オクマワラビの秋葉
最近切り払われた林縁の森の林床に生育。よく日の当たるところに元気よく生育していた。日当たりがよいせいか、葉の色は黄緑色。最近出た「秋葉」で胞子嚢群もまだ色づいていない。同行の方にオクマワラビやイワヘゴの秋葉について詳しく教えていただきました。オクマワラビの鱗片は一般に黒褐色であるが秋葉の鱗片は明るい色になるので注意して観察するように、とのことでした。確かに明るい褐色をしていて、クマワラビの鱗片のようでした。写真には写っていませんが倒伏した古い葉の葉柄の鱗片は黒褐色でした。
(1)オクマワラビ、秋葉の羽片
(2)オクマワラビ、胞子嚢群
イワヘゴ
葉の大きさは80㎝。葉身下部は下を向き、やや短縮する。中軸下部の鱗片には明瞭な棘上の突起がまばらにつく。同行の方から教えていただきましたが、イワヘゴの秋葉も明るい黒褐色になるとのこと、この季節、鱗片だけではイヌイワヘゴとの区別が難しくなるとのことでした。
(1)スギ・ヒノキ林林床に生育するイワヘゴ
(2)イワヘゴ、羽片
イヌイワヘゴ
葉は1mほどで大形になる。葉身下部はあまり短縮しない。鱗片はイワヘゴよりも明るい黒褐色。中軸の鱗片にはほとんど棘状の突起が見られなかった。同行の方から、イワヘゴの可能性もあるので注意して観察するようにアドバイスを頂きました。
(1)スギ・ヒノキ林林床に生育するイヌイワヘゴ
(2)イヌイワヘゴ、葉
上の(1)(2)とは別の株
(1)(2)イヌイワヘゴ、中軸下部の鱗片
ナガバノイタチシダ
やや明るいスギ・ヒノキ林林床、他の高茎草本と競うように生育する1m近い育ちのよい株が時々見られた。
(1)ナガバノイタチシダ、羽片
(2)ナガバノイタチシダ、胞子嚢群
アスカイノデ
この辺りは海岸からは相当離れているが、標高は100~200mでアスカイノデが生育していた。海のそばのように群生することはなく1株確認。生育数は少ないようである。イノデ、アイアスカイノデ、イノデモドキは普通に見られた。
(1)アスカイノデ、葉柄下部の鱗片
(2)アスカイノデ、葉柄上部の鱗片
ドウリョウイノデ
イノデとアイアスカイノデの雑種と推定される。スギ・ヒノキ林林床。イノデやアイアスカイノデが生育する林床の中で、大きく目立つ存在である。