ヤノネシダ Neocheiropteris subhastata
ウラボシ科 クリハラン属
生育している環境:照葉樹が茂る林内の岩場を流れる小さな沢のそば、林床や岩上に生育。
観察された特徴:常緑性。褐色の鱗片に覆われた根茎は長く這う。葉は胞子をつける葉とつけない葉に分かれる。栄養葉は10㎝程度で三角形、胞子葉は12~15㎝、披針形で基部は左右に張り出す。胞子葉は岩上で葉を立ち上げ生育していた。胞子嚢群は葉の裏側全体につく。1つの胞子嚢内に20~28個程度の胞子を形成。胞子は大きくすべてきれいな球形で形が整う。胞子の数からいえば無融合生殖種ではないかと考えてしまうが、いくつか胞子嚢壊して胞子を観察すると充実した胞子(成熟し中に葉緑体を形成している胞子)を含む胞子嚢では、胞子の数は少ないが観察した胞子嚢全てで胞子の大きさ・形がきれいに整い有性生殖種のような趣がある。1胞子嚢内の胞子数が少ないのは限られた広さの胞子嚢内で成長できる分の数の胞子だけが成長するのではないだろうか。
※詳しい方にお尋ねしました。以下、頂いたコメントです。
ヤノネシダもこの胞子を播いて、できた配偶体と親種の染色体数を調べて同じであれば無融合生殖といえますが、“無融合生殖種”と判断するためには1個体だけではダメで、この個体の胞子をまいて出てきたものがみな無融合生殖をしていることの確認が必要でしょう。但し、ウラボシ科で無融合生殖をするものは少なくとも日本では知られていませんので、ヤノネシダも有性生殖の胞子が何らかの原因で少なかったという可能性が高いと思います。さらに研究が必要だと思います。
成熟した胞子標本
(1)(2)ヤノネシダ、1つの胞子嚢を壊したようす
まだ成熟していない胞子標本
上の成熟した胞子を採取した葉と同じ葉から採取した。同じ葉の中でも胞子の成熟の程度が異なり、未成熟な胞子嚢では下の写真のような形態を示す。(これだけを見ると雑種のように見えるが。)
(1)(2)ヤノネシダ、1つの胞子嚢を壊したようす(胞子がまだ充実していない胞子嚢)