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平成23年9月25日(日) 大室山方面 観察会レポート
大室山は丹沢山塊の北に位置し、標高は1,587.6m。丹沢山塊中では蛭ヶ岳・桧洞丸につぐ標高です。今回は8月21日に台風15号が近くを通過したため、丹沢山塊の南面~東面は相当荒れていることが考えられたので、犬越路から大室山へ登るコースは取りやめ、台風の影響が少ないと考えられる北面を登ることにしました。南都留郡道志村大室指ー大室山の往復のコースでシダを観察しました。
大室指からの登り始めはスギ林の中を沢沿いに登ります。途中の岩場やガレ場ではヌリワラビ・イワトラノオ・イヌイワイタチシダ・カラクサシダ・ミヤマクマワラビなどが生えていました。
ヌリワラビ
イワトラノオ
イワトラノオの胞子のう群
イヌイワイタチシダ
イヌイワイタチシダの葉柄の鱗片
イヌイワイタチシダは山の低(登山口周辺)~中腹部まで普通に見られました。沢沿いの岩場に着生。
カラクサシダ
カラクサシダ
カラクサシダは沢沿いに流れ込む湧水のまわり岩場に、コケ類が密生する中から顔を出すように生育していました。まだ新芽が出たばかりという感じで、大きな個体(6cm)でも葉の裏面には胞子のう群を観察できませんでした。
ミヤマクマワラビ
ミヤマクマワラビの葉柄鱗片
少し標高が上がるとヒノキの植林地が続きます。ヒノキ林は薄暗く何も観察できませんでしたが、隣り合わせの落葉広葉樹林内では岩場を中心にイワデンダ・フクロシダ・ツルデンダ・イワヒバ・エビラシダなどがこの後、山の上部近くまで見られました。
イワデンダ
フクロシダ
フクロシダの胞子のう群
ツルデンダ
イワヒバ
エビラシダ
エビラシダの胞子のう群
エビラシダは山の下部~中腹部、沢沿いの岩場や岩屑混じりの斜面に2~3株の小さな群落がちらほら見られました。
ヒノキ林を過ぎるとその後カラマツおよび落葉広葉樹林になります。ナンタイシダ・ミヤマワラビ・ヒメコケシノブ・ミヤマノキシノブ・イワイタチシダが見られるようになりました。
ナンタイシダ
ナンタイシダ
ナンタイシダの胞子のう群
山頂から少し下ったところの岩場や岩場の周辺の岩屑混じりの斜面に生育。大きい株は30から40cm。
ヒメコケシノブ
ヒメコケシノブ
ヒメコケシノブ
大室山ではヒメコケシノブはウエットな渓谷部では見られず、中腹部~山頂部まで観察できました。樹幹や垂直な岩壁面に生育。胞子のう群は葉の先端につくがまとまってつく場合と穂状につく場合が見られます。
イワイタチシダ
イワイタチシダの葉柄と胞子のう群
ミヤマノキシノブ
ミヤマノキシノブ
ミヤマノキシノブの胞子のう群
最後の急な登りが終わるとブナの巨木が点在する横幅のある緩斜面が山頂まで広がっています。ここでは樹幹にミヤマノキシノブ・オシャグジデンダ・ヒメコケシノブ、林床や倒木上にヘビノネコザ・ミヤマワラビ。また岩上にはホソバコケシノブなどが生えていました。
ミヤマワラビ
ミヤマワラビ
ミヤマワラビの胞子のう群
ミヤマワラビは林床に生育する個体よりも倒木上に生育する個体のほうが大きな株が見られました。(葉柄15~20cm、葉身20~30cm)。倒木上なのでシカの食害から免れることができたためでしょうか。
オシャグジデンダ
オシャグジデンダの胞子のう群
オシャグジデンダの胞子のう群と中軸上の毛
ブナの大木にオシャグジデンダが着生していました。
ホソバコケシノブ
ホソバコケシノブ
ホソバコケシノブはウエットな渓谷の岩場にも見られますが、霧や雲がよく発生するところであればある程度明るく風通しのよい岩場の上にも生育するようです。
丹沢山塊は他の山に比べて花が少ないといわれることがありますが、今回の登山ではトリカブト、ヤマシロギク、ダイモンジソウ、サラシナショウマ、マツノハマンネングサ、イワギボウシ(花は終わっていました)などが目を楽しませてくれました。
ヤマトリカグト
ヤマシロギク
サラシナショウマ
ダイモンジソウ
樹幹や倒木上に着生する。
マツノハマンネングサ
樹幹に着生する。
イワギボウシ
樹幹や岩壁に着生する。花の色は白っぽい。葉柄にはえんじ色の斑が入る。(この写真は今年の夏、畔ヶ丸山頂付近で撮影した写真。倒木上に着生。手前のシダはシノブ)
○このコースは登山道を示す道標はほとんど無く、踏み跡もはっきりしません。木の枝や幹に巻きつけてあるテープを確認しながら登降しなければなりません。時間は多少かかりますが、箒沢から登られるほうが道および道標が整備されていてよいと思います。