Top / 観察会レポート / 平成23年9月25日(日) 丹沢大室山


平成23年9月25日(日) 大室山方面  観察会レポート

 大室山は丹沢山塊の北に位置し、標高は1,587.6m。丹沢山塊中では蛭ヶ岳・桧洞丸につぐ標高です。今回は8月21日に台風15号が近くを通過したため、丹沢山塊の南面~東面は相当荒れていることが考えられたので、犬越路から大室山へ登るコースは取りやめ、台風の影響が少ないと考えられる北面を登ることにしました。南都留郡道志村大室指ー大室山の往復のコースでシダを観察しました。

大室指からの登り始めはスギ林の中を沢沿いに登ります。途中の岩場やガレ場ではヌリワラビ・イワトラノオ・イヌイワイタチシダ・カラクサシダ・ミヤマクマワラビなどが生えていました。
ヌリワラビの生態2011,9,25大室山
ヌリワラビ

イワトラノオの生態。2011,9,25大室山
イワトラノオ

イワトラノオの胞子のう群。2011,9,25大室山
イワトラノオの胞子のう群

イヌイワイタチシダの生態。2011,9,25大室山
イヌイワイタチシダ

イヌイワイタチシダの葉柄鱗片。2011,9,25大室山
イヌイワイタチシダの葉柄の鱗片
イヌイワイタチシダは山の低(登山口周辺)~中腹部まで普通に見られました。沢沿いの岩場に着生。

カラクサシダの生態2011,9,25大室山
カラクサシダ

カラクサシダの生態2011,9,25大室山
カラクサシダ
カラクサシダは沢沿いに流れ込む湧水のまわり岩場に、コケ類が密生する中から顔を出すように生育していました。まだ新芽が出たばかりという感じで、大きな個体(6cm)でも葉の裏面には胞子のう群を観察できませんでした。

ミヤマクマワラビの生態。2011,9,25大室山
ミヤマクマワラビ

ミヤマクマワラビの葉柄鱗片。2011,9,25大室山
ミヤマクマワラビの葉柄鱗片

少し標高が上がるとヒノキの植林地が続きます。ヒノキ林は薄暗く何も観察できませんでしたが、隣り合わせの落葉広葉樹林内では岩場を中心にイワデンダ・フクロシダ・ツルデンダ・イワヒバ・エビラシダなどがこの後、山の上部近くまで見られました。
イワデンダの生態。2011,9,25大室山
イワデンダ

フクロシダの生態。2011,9,25大室山
フクロシダ

フクロシダの胞子のう群。2011,9,25大室山
フクロシダの胞子のう群

ツルデンダの生態。2011,9,25大室山
ツルデンダ

イワヒバの生態。2011,9,25大室山
イワヒバ

エビラシダの生態。2011,9,25大室山
エビラシダ

エビラシダの胞子のう群。2011,9,25大室山
エビラシダの胞子のう群
エビラシダは山の下部~中腹部、沢沿いの岩場や岩屑混じりの斜面に2~3株の小さな群落がちらほら見られました。

ヒノキ林を過ぎるとその後カラマツおよび落葉広葉樹林になります。ナンタイシダ・ミヤマワラビ・ヒメコケシノブ・ミヤマノキシノブ・イワイタチシダが見られるようになりました。
岩場に生育するナンタイシダ。2011,9,25大室山
ナンタイシダ

ナンタイシダの生態。2011,9,25大室山
ナンタイシダ

ナンタイシダの胞子のう群。2011,9,25大室山
ナンタイシダの胞子のう群
山頂から少し下ったところの岩場や岩場の周辺の岩屑混じりの斜面に生育。大きい株は30から40cm。




樹幹に生育するヒメコケシノブ。2011,9,25大室山
ヒメコケシノブ

ヒメコケシノブの生態。2011,9,25大室山
ヒメコケシノブ

胞子のう群は先端につく。2011,9,25大室山
ヒメコケシノブ

胞子のう群は先端につく。2011,9,25大室山
ヒメコケシノブ
大室山ではヒメコケシノブはウエットな渓谷部では見られず、中腹部~山頂部まで観察できました。樹幹や垂直な岩壁面に生育。胞子のう群は葉の先端につくがまとまってつく場合と穂状につく場合が見られます。

イワイタチシダの生態。2011,9,25大室山
イワイタチシダ

イワイタチシダの葉柄と胞子のう群。2011,9,25大室山
イワイタチシダの葉柄と胞子のう群

ミヤマノキシノブの生態。2011,9,25大室山
ミヤマノキシノブ

ミヤマノキシノブの生態。2011,9,25大室山
ミヤマノキシノブ

ミヤマノキシノブの葉柄。2011,9,25大室山

ミヤマノキシノブの胞子のう群。2011,9,25大室山
ミヤマノキシノブの胞子のう群

最後の急な登りが終わるとブナの巨木が点在する横幅のある緩斜面が山頂まで広がっています。ここでは樹幹にミヤマノキシノブ・オシャグジデンダ・ヒメコケシノブ、林床や倒木上にヘビノネコザ・ミヤマワラビ。また岩上にはホソバコケシノブなどが生えていました。
倒木上に生育するミヤマワラビ。2011,9,25大室山
ミヤマワラビ

ミヤマワラビの生態。2011,9,25大室山
ミヤマワラビ

ミヤマワラビの胞子のう群。2011,9,25大室山
ミヤマワラビの胞子のう群
ミヤマワラビは林床に生育する個体よりも倒木上に生育する個体のほうが大きな株が見られました。(葉柄15~20cm、葉身20~30cm)。倒木上なのでシカの食害から免れることができたためでしょうか。

オシャグジデンダの生態。2011,9,25大室山
オシャグジデンダ

オシャグジデンダの胞子のう群。2011,9,25大室山
オシャグジデンダの胞子のう群

中軸上には多細胞の毛が生える。2011,9,25大室山
オシャグジデンダの胞子のう群と中軸上の毛
ブナの大木にオシャグジデンダが着生していました。

ホソバコケシノブは岩上にコケ類とともに生育していた。2011,9,25大室山
ホソバコケシノブ

ホソバコケシノブの裂片は羽軸に対して広い角度でつく。2011,9,25大室山
ホソバコケシノブ
ホソバコケシノブはウエットな渓谷の岩場にも見られますが、霧や雲がよく発生するところであればある程度明るく風通しのよい岩場の上にも生育するようです。

丹沢山塊は他の山に比べて花が少ないといわれることがありますが、今回の登山ではトリカブト、ヤマシロギク、ダイモンジソウ、サラシナショウマ、マツノハマンネングサ、イワギボウシ(花は終わっていました)などが目を楽しませてくれました。
ヤマトリカグト。2011,9,25大室山
ヤマトリカグト

ヤマシロギク。2011,9,25大室山
ヤマシロギク

サラシナショウマ。2011,9,25大室山
サラシナショウマ

ダイモンジソウ。2011,9,25大室山
ダイモンジソウ
樹幹や倒木上に着生する。

マツノハマンネングサ ベンケイソウ科 2011,9,25大室山
マツノハマンネングサ
樹幹に着生する。

イワギボウシの仲間。2011,8,17畦ヶ丸
イワギボウシ
樹幹や岩壁に着生する。花の色は白っぽい。葉柄にはえんじ色の斑が入る。(この写真は今年の夏、畔ヶ丸山頂付近で撮影した写真。倒木上に着生。手前のシダはシノブ)

○このコースは登山道を示す道標はほとんど無く、踏み跡もはっきりしません。木の枝や幹に巻きつけてあるテープを確認しながら登降しなければなりません。時間は多少かかりますが、箒沢から登られるほうが道および道標が整備されていてよいと思います。