Top / 観察会レポート / 平成26年9月21日(日)奥多摩栃寄沢周辺
岩場や石垣で
栃寄沢のシダを観察しました。岩場や石垣ではコバノヒノキシダ、イワトラノオ、イワデンダ、ヤブソテツの仲間、ミツデウラボシ、マメヅタ、ミサキカグマ、ヤマイタチシダ、オオバノイノモトソウ、ハコネシダ、クジャクシダなどが多く見られました。
ウエットな岩壁ではオウレンシダやオオヒメワラビの仲間が多く見られました。イタチシダの仲間では、バス停付近ではまだオオイタチシダ(ツヤナシtype)が見られましたが、その後、標高を上げると姿を消しました。
ヤマイタチシダは広く見られ、リョウトウイタチシダは乾燥気味の崖の上部で観察されました。
クジャクシダ(上左)
ハコネシダ(上右)
オオヒメワラビ鱗片が多いtype
オオヒメワラビはウエットな岩壁底部・林縁によく見られました。一部の個体で中軸に黒褐色の鱗片が目立つ個体が見られましたが、ほとんどはあまり鱗片が付かない個体でした。ただ、個体によって変化が多いようです。
オオヒメワラビ鱗片が多いtype(上)
オオヒメワラビ鱗片が多いtype、葉柄(下左)
オオヒメワラビ鱗片が多いtype、葉柄の鱗片(下右)
ヤブソテツ
ヤブソテツと思われる個体が見られました。その他、ヤブソテツの仲間はテリハヤブソテツ、ツヤナシヤマヤブソテツは普通に見られました。ウエットな谷沿いではヒラオヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツ)が見られました。
ヤブソテツについてはいつも書いていますが、羽片の幅の狭いツヤナシヤマヤブソテツノ可能性があり、芽立ちの時期などを比較して調べる必要があると思います。
ヤブソテツ
ヤブソテツ、葉身基部(上左)
ヤブソテツ、葉身下部(上右)
ヤブソテツ、葉身中部(下左)
ヤブソテツ、葉身上部(下右)
ヤブソテツ、胞子のう群
ミタケトラノオ(コバノヒノキシダ×イワトラノオ)
ミタケトラノオ(コバノヒノキシダとイワトラノオの雑種と推定される)を観察しました。両種が混生しているところで見られました。1地点ですが20株程度まとまって群生していました。
両種の中間的な形態をしていますが、
- 葉の質は薄い点や裂片が丸みを帯びている点はイワトラノオに似ている。
- 羽片の色が濃緑色の点や羽片が込み合っている点はコバノヒノキシダ似である。
両種が混生しているところはたくさんありますが、ミタケトラノオは初めて観察しました。
ミタケトラノオ
ミタケトラノオ、胞子のう群(上左)
ミタケトラノオ、胞子のう群(上右)
石灰岩の岩壁で
このあたりの岩壁はほとんど白っぽい石灰岩の地層と黒色の頁岩の地層でできています。そのため石灰岩の岩壁が山道沿いに至るところに見られます。石灰岩の岩壁ではクモノスシダやツルデンダがよく見られました。数は少ないですがキンモウワラビも見られました。
キンモウワラビ(根茎・葉柄基部鱗片が濃褐色type)
この季節は写真のような色になるのかもしれませんが根茎・葉柄基部鱗片が濃褐色の個体が1株見られました。
キンモウワラビ
キンモウワラビ、胞子のう群(上左)
キンモウワラビ、包膜(上右)
クモノスシダ
石灰岩の岩壁から石垣まで広く見られました。
クモノスシダ
渓谷沿いの谷部のウエットな林床で
渓谷沿いの谷部のウエットな林床ではハコネシケチシダやヌリワラビ、キヨタキシダ、ヤマイヌワラビ、ハクモウイノデ、ウラゲイワガネ、ミゾシダなどがよく見られました。
ウラゲイワガネ
ウラゲイワガネやチチブイワガネはイワガネゼンマイにくらべ羽片の幅が広い個体が多いようです。
ハコネシケチシダ
ハコネシケチシダは上部を樹冠に覆われた渓谷沿いの狭い氾濫原の林床でよく見られました。
ハコネシケチシダ(上左)
ハコネシケチシダ、葉柄(上右)
ハコネシケチシダ、羽片(上左)
ハコネシケチシダ、胞子のう群(上右)
渓谷沿いの崖や岩壁で
渓谷沿いの岩壁ではリョウメンシダやジュウモンジシダ、イワイタチシダ、イヌイワイタチシダ、フクロシダ、ヒラオヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツ)、ホソバコケシノブなどが見られました。
御岳山周辺のチャートの岩壁などにはフクロシダがよく群生するのですが、ここではフクロシダはそれほど群生しているところはあまり見られませんでした。石灰岩の地質と関係があるのかもしれません。
イヌイワイタチシダ
イヌイワイタチシダ、イワイタチシダは両種を近くで観察することができました。イワイタチシダは中軸の鱗片も開出してつくのに対し、イヌイワイタチシダは鱗片の先がいじけたようになり袋状の部分だけがだんご状になったり先端部分いろいろな方向を向いています。
イヌイワイタチシダ(上左)
イヌイワイタチシダ、中軸上の鱗片※ピンボケですみません(上右)
ホソバコケシノブ
ウエットな切り立った岩壁ではホソバコケシノブが見られました。
ホソバコケシノブ(上左)
ホソバコケシノブ、胞子のう群(上右)
夏緑広葉樹林の林床で
渓谷からやや上の夏緑広葉樹林のガレ場の林床にはミヤマクマワラビが転々と群生しているところが見られ、ミヤマシケシダが1株確認することができました。
ミヤマシケシダ
近縁のハクモウイノデにくらべ、このあたりではなかなかお目にかからないシダです。
ミヤマシケシダ(上左)
ミヤマシケシダ、羽片(上右)
ミヤマシケシダ、葉柄基部の鱗片(上左)
ミヤマシケシダ、葉柄の鱗片(上右)
ハイホラゴケ
谷から離れ山の中腹部の岩壁の北面ではハイホラゴケが見られました。
ハイホラゴケ
ハイホラゴケ、胞子のう群(上左)
ハイホラゴケ、包膜(上右)
樹幹に着生するシダ
今回のコースでは樹幹にヒメノキシノブやビロードシダ、オシャグジデンダが群生する木がいくつか見られました。
オシャグジデンダ
オシャグジデンダは新葉が展開したばかりだと思いますが、葉の後ろには黄色の美しい胞子のう群をつけていました。幸いなことにカメラで接写できる位置に葉を広げていました。※採取は控えていただきたいと思います。
オシャグジデンダ
キノコ
花
同行の方に花の名前や特徴をいろいろ教えていただきました。
キバナアキギリ
ネナシカズラ
今回は一部険しい山道を歩きましたが、1日天気に恵まれよい観察日和でした。また機会があれば白髭神社周辺もゆっくり歩いてみたいと思います。
今回観察されたシダ
○ホソバトウゲシバ・クラマゴケ○スギナ○ナツノハナワラビ○ゼンマイ○カニクサ
○ハイホラゴケ・ホソバコケシノブ○フモトシダ・イヌシダ 〇イワヒメワラビ 〇ワラビ
○シノブ○イワガネゼンマイ・ウラゲイワガネ○タチシノブ ○ハコネシダ
○ノモトソウ・オオバイノモトソウ
○コバノヒノキシダ・トラノオシダ・イワトラノオ・オクタマトラノオ
○テリハヤブソテツ、ツヤナシヤマヤブソテツ・ヒラオヤブソテツ・ヤブソテツ・ツルデンダ・ジュウモンジシダ・イノデ・イノデモドキ・アイアスカイノデ・リョウメンシダ・ベニシダ・クマワラビ・オクマワラビ・アイノコクマワラビ・ヤマイタチシダ・リョウトウイタチシダ・イワイタチシダ・イヌウワイタチシダ・ツヤナシオオイタチシダtype3
○キヨスミヒメワラビ
○ヒメワラビ・ミゾシダ・ゲジゲジシダ・ヤワラシダ・ハリガネワラビ
○イヌワラビ・ヤマイヌワラビ・ヒロイヌワラビ・ヘビノネコザ
○ハコネシケチシダ○オオヒメワラビ・ハクモウイノデ・ミヤマシケシダ
○キヨタキシダ・ヌリワラビ
○ノキシノブ・ヒメノキシノブ・マメヅタ・ミツデウラボシ・ビロードシダ
○キンモウワラビ