Top / 観察会レポート / 平成28年4月29日(金)今熊山周辺
五日市駅から徒歩で秋川南岸を歩き沢戸橋から南方面に支流に沿って歩きました。シダはまだ若葉の色のものが多いですが、美しい葉を展開していました。アオホラゴケの仲間など再度確認したいこともあり、5月3日にも再訪しました。写真によっては4月29日と5月3日のものを載せています。
コケシノブの仲間
コウヤコケシノブ、ウチワゴケ、アオホラゴケ、ハイホラゴケなどが見られました。アオホラゴケについては普通のtypeの個体群と偽脈のようすが異なる個体群が見られました。
ハイホラゴケの仲間
1地点で観察(5月3日)。岩壁の基部、薄暗いところに生育。同じ岩壁の上部にはコウヤコケシノブ、カタヒバなどが群生。
ハイホラゴケ、葉を透視したようす(上左)
ハイホラゴケ、葉身裏側の鱗片(上右)
ウチワゴケ
倒木の幹に生育。
アオホラゴケⅠ(一般的なtype)
葉の大きさは3~6㎝。偽脈は短く、中間~辺縁寄りに1本あるいは2本が平行的につく。根茎に密生する毛は黒褐色。
(標本1)
アオホラゴケ、偽脈(上左、上中、上右)
(標本2)
アオホラゴケ、葉柄(上左)
アオホラゴケ、根茎(上右)
アオホラゴケtypeⅡ(偽脈が重なり、根茎に茶褐色の毛が生えるtype)
観察された葉は小さく大きさは2~3㎝。一般的なアオホラゴケにくらべ偽脈が重なり長くなり辺縁に1本に並んだように見える。根茎に密生する毛は茶色味を帯びる。
アオホラゴケtypeⅡ(上左)
アオホラゴケtypeⅡ、葉身(上右)
ゼンマイの仲間
秋川沿いの林床でゼンマイ、ヤシャゼンマイ、オオバヤシャゼンマイが見られました。ヤシャゼンマイは普通渓谷で水しぶきがかかるような岩場に生えているのですが、今回は川からはやや離れた林縁の林床に1株生育していました。
シケチシダの仲間
シケチシダ、タカオシケチシダが見られました。
タカオシケチシダ(上左)
タカオシケチシダ、中軸・羽軸(上右)
シケシダの仲間
ハクモウイノデやセイタカシケシダ、ミドリワラビ、オオヒメワラビが見られました。
ミドリワラビは1株のみ確認。よく似たオオヒメワラビは普通に見られる。生育場所は樹林内林床。オオヒメワラビは樹林内にも見られるが、陽当たりのよい湿原では遠くからでも目立つ大きな株で生育していました。
オオヒメワラビ
葉柄基部の鱗片は濃褐色(落ちやすい鱗片)。葉の形は卵形。中軸には全体的に鱗片がつく(落ちやすい鱗片)。羽軸の翼の幅が広い。2回羽状にわかれ小羽片は中裂する。胞子のう群は大きく馬蹄形。
オオヒメワラビ(上左、上右)
オオヒメワラビ、小羽片(上左)
オオヒメワラビ、裂片(上右)
オオヒメワラビ、胞子のう群(上左)
オオヒメワラビ、包膜(上右)
ミドリワラビ
この季節、葉の色の違いはあまりわかりませんでした。多分葉が展開したばかりのせいだと思います。葉柄基部の鱗片は褐色。葉の形はオオヒメワラビより横幅が広く広卵形。中軸と羽軸の分岐点には肉芽のような小さい鱗片がつく。羽軸には幅の狭い翼ができる。3回羽状にわかれ小羽片は浅裂する。胞子のう群は小さく三日月形、包膜の辺縁は細かく裂ける。
ミドリワラビ(上左)
ミドリワラビ、葉身(上右)
ミドリワラビ、胞子のう群(上左)
ミドリワラビ、包膜(上右)
ミドリワラビとオオヒメワラビ 羽片の比較
ミドリワラビとオオヒメワラビ(上左、上右)
ヒメシダ属の仲間
ヤマイヌワラビ、ホソバイヌワラビ、ヒロハイヌワラビが見られました。ヤマイヌワラビはスギ林林床で広く見られました。大きさには変化があり大きな株は50㎝を超える物から20~30㎝程度の個体も見られました。ホソバイヌワラビは一か所20株程度がまとまって生育。スギ林内丘陵地の末端で水が浸みだしているようなウエットなところを好むようです。ヒロハイヌワラビは標高を上げたところや岩場周辺で、比較するとややドライな環境でみられるようになりました。
ヤマイヌワラビ
ホソバイヌワラビ
湿地に群生するホソバイヌワラビ(上左)
ホソバイヌワラビ、葉身(上右)
ホソバイヌワラビ、羽軸上の刺(上左)
ホソバイヌワラビ、小羽軸上の刺(上右)
イノデの仲間
アイアスカイノデ、ツヤナシイノデ、サイゴクイノデ、イノデモドキ、カタイノデなどが谷沿いに平坦な谷沿いに見られ、観察しやすいところでした。今回は新葉が展開したばかりなので雑種の観察には時期が早かったですが、雑種の種類も多そうで、楽しめるところでした。
サイゴクイノデ
サイゴクイノデ(上左)
サイゴクイノデ、葉柄基部の鱗片(上右)
カタイノデ
カタイノデ(上左)
カタイノデ、葉柄基部の鱗片(上右)
イノデの雑種
イノデの雑種もいろいろ見られました。ハコネイノデ、タカオイノデ、アイカタイノデ、ドウリョウイノデなどが見られました。もっとゆっくり観察すればほかの雑種も見られるようなイノデのシダ谷でした。今回はまだ新葉を展開したばかりで、葉の色などはまだ若葉色で同定には不向きな個体も見られました。もう少したってから訪れたほうがよいと思われます。
タカオイノデ(ツヤナシイノデとアイアスカイノデの雑種と推定される)
ツヤナシイノデ・アイアスカイノデが共に生育するところで見られた。そばに生えているツヤナシイノデにくらべると葉は光沢がある。葉の形はアイアスカイノデにくらべると幅広で先は急に細くなる。基部鱗片には細長く中が栗色で軽く巻いた細長い鱗片と幅が広い(広卵形)大きな(2.5㎝)が混ざる(観察された個体では細長い鱗片が優勢)。
タカオイノデ(ツヤナシイノデ×アイアスカイノデ)
ヤブソテツの仲間
ヤマヤブソテツは2つのtypeが見られました。林縁や山道沿いの石垣などではツヤナシヤマヤブソテツが普通に見られました。ウエットな沢沿いの岩場や林床ではテリハヤマヤブソテツ(2地点)が見られました。そのほかテリハヤブソテツは普通に見られました。
ツヤナシヤマヤブソテツ
ツヤナシヤマヤブソテツ(上左、上右)
オシダ属の仲間
マルバベニシダやベニシダ、ミドリベニシダ、タカサゴシダ、オオベニシダ、フジオシダ(オシダ×オクマワラビ)などが見られました。ミドリベニシダもたくさん出会うことができ、ベニシダと混生しているところもありますがやや山寄り(乾燥気味)でしょうか。マルバベニシダは崖沿いの岩が露出するような険しい斜面に生育。フジオシダと思われる個体はスギ林林床でまだ若葉ですが80㎝近い葉を叢生させていました。
ベニシダ
よく茂ったスギ林林床~やや明るい林縁まで広く生育。
マルバベニシダ
渓谷に向かって片側が開けたやや明るい乾燥気味のチャートの険しい岩場の急斜面に20株程度点在して生育。
マルバベニシダ(上左)
マルバベニシダ、葉柄基部の鱗片(上右)
タカサゴシダ
生育場所は上部が樹冠に覆われたほぼ切り立った岩壁。幼株を含め2株。葉柄下部の鱗片は被針形、黒に近い。観察された個体は基部羽片下側第1小羽片が発達。葉の大きさは45~50㎝。胞子のう群は下部羽片にはつけていない。観察された個体は生育場所や個体差も考えられるが芽立ちが遅く、他のベニシダ類が葉を展開している中新芽は全く出ていなかった。
今までに関東南部では、三浦半島 や小田原西部でときどき最下羽片下側第1小羽片が発達したベニシダの仲間を観察することはありましたが、全て胞子のう群をつけない幼株で、とりあえずトウゴクシダの幼株ではないかとしていました。
タカサゴシダ(上左、上右)
参考画像
屋久島産タカサゴシダ
屋久島では中腹部(標高1000m前後)でタカサゴシダは普通に見られますが、小羽片の長さはさまざまでタカサゴシダっぽい個体~トウゴクシダに近い個体まで幅広く見られます。
タカサゴシダ、胞子のう群
タカサゴシダ、最下羽片下側第1小羽片(上左)
タカサゴシダ、胞子のう群(上右)
美しい花やカタツムリ
観察されたシダの仲間
・トウゲシバ
・カタヒバ・イヌカタヒバ
・クラマゴケ・タチクラマゴケ
・アカハナワラビ・フユノハナワラビ
・ゼンマイ・オオバヤシャゼンマイ・ヤシャゼンマイ
・ウチワゴケ・アオホラゴケ・コウヤコケシノブ
・ウラジロ
・カニクサ
・イヌシダ・オウレンシダ
・フモトシダ
・イワヒメワラビ
・イワガネソウ・イワガネゼンマイ
・イノモトソウ・オオバノイノモトソウ
・ハコネシダ
・コバノヒノキシダ
・ミゾシダ
・ゲジゲジシダ・コゲジゲジシダ・ヤワラシダ・ハリガネワラビ
・ヌリワラビ
・クサソテツ
・シシガシラ
・イヌワラビ
・ヒロハイヌワラビ・ホソバイヌワラビ・ヤマイヌワラビ
・シケチシダ・タカオシケチシダ
・ハクモウイノデ・セイタカシケシダ・オオヒメワラビ・ミドリワラビ
・キヨタキシダ
・テリハヤブソテツ、ヤマヤブソテツ
・イノデモドキ・イノデ・アイアスカイノデ・ツヤナシイノデ・サイゴクイノデ・カタイノデ・ジュウモンジシダ・ツルデンダ
・リョウメンシダ・オオカナワラビ・ハカタシダ
・オクマワラビ・クマワラビ・フジオシダ・ヤマイタチシダ・オオイタチシダ・ベニシダ・ミドリベニシダ・キノクニベニシダ・トウゴクシダ・タカサゴシダ・マルバベニシダ・オオベニシダ
・シノブ
・ミツデウラボシ
・マメヅタ
・ノキシノブ