Top / 観察会レポート / 平成28年7月2日(土)桧原村旧甲州街道沿線
カメラの設定を間違え色合いが異なる画像が多く掲載されています。
今回の観察会ではいくつかの雑種と思われるシダが見つかり、それらを検鏡していただく機会があり、雑種と思われた個体が充実した胞子をつけているとのお話をお聞きしました。さっそく自分の目で確かめたくなり(7月18日)現地および華水の滝方面を再度訪れ、胞子を観察しました。
ハナワラビの仲間
林内ではナツノハナワラビやオオハナワラビが生育していた。
オオハナワラビ
林内では昨年出たのオオハナワラビの葉が元気よく生育していた。
オオハナワラビ、裂片の辺縁(上左、上右)
※カメラの設定を誤り発色が悪くなりました。
ナツノハナワラビ
花水の滝へ向かう林内では見られました。胞子葉は枯れていました。
ゼンマイ科の仲間
ゼンマイとヤシャゼンマイオオバヤシャゼンマイが見られました。
ヤシャゼンマイオオバヤシャゼンマイ
渓谷沿いで見られました。同じ渓谷ではヤシャゼンマイは確認できませんでしたが、河川から相当離れていてもオオバヤシャゼンマイは出現することがあります。葉の大きさは100~150㎝。
渓谷の岩場に生育するヤシャゼンマイオオバヤシャゼンマイ(上左)
ヤシャゼンマイオオバヤシャゼンマイ、羽片(上右)
コケシノブの仲間
コウヤコケシノブとウチワゴケが観察されました。
コウヤコケシノブ
コウヤコケシノブ(上左)
コウヤコケシノブ、裂片の辺縁(上右)
イワガネゼンマイの仲間
イワガネゼンマイ、ウラゲイワガネ(葉の裏面が有毛)、チチブイワガネ(葉の両面が有毛)、チチブイワガネの獅子葉typeが見られました。
林内で見られる普通のチチブイワガネ
葉の両側に毛が生え、ウエットな林内では幅の広い(5~6㎝)葉をつける。奥多摩ー桧原村あたりではよく見られる。
林内で見られるチチブイワガネ(上左、上右)
チチブイワガネ、葉の表面(上左)
チチブイワガネ、葉の表面(上右)
チチブイワガネ、羽片裏側(上左)
チチブイワガネ、葉脈(上右)
チチブイワガネの獅子葉type
観察会ではコダマイヌイワガネ(イワガネソウとチチブイワガネの雑種)としましたが、胞子を検鏡していただく機会があり、胞子は正常とのこと。再度訪れ胞子を確認しました。
観察されたチチブイワガネの獅子葉typeは、側面が高い崖の林道がきの岩屑や土砂が堆積したようなところ、北面ですが明るく、ほかの背の高い草本類と共に生育していました。
チチブイワガネの獅子葉typeは①葉の表裏両面が有毛で、②葉の辺縁が深く切れ込み葉縁がなめらかな葉は少ない。③平行脈はときどき左右の脈が合着し網目を形成。
チチブイワガネの獅子葉type標本1では胞子は正常。標本2と3では胞子は多少凹んでいる。
※標本2と3の胞子は多少凹んでいる。コダマイワガネ(イワガネソウ×チチブイワガネ)の可能性が考えられる。
狭い範囲に群生し、葉形が異なる個体がいくつか見られたので3個体の胞子を観察しました。
標本1
チチブイワガネの獅子葉type
チチブイワガネの獅子葉type、胞子のう群(上左)
チチブイワガネの獅子葉type、胞子数(上右)
チチブイワガネの獅子葉type、胞子(上左、上右)
標本2
チチブイワガネの獅子葉type(上左)
チチブイワガネの獅子葉type、葉の裏側(上右)
チチブイワガネの獅子葉type、葉脈(上左)
チチブイワガネの獅子葉type、胞子のう群(上右)
チチブイワガネの獅子葉type、胞子のう数(上左、上右)
チチブイワガネの獅子葉type、胞子
標本3
チチブイワガネの獅子葉type
チチブイワガネの獅子葉type(上左)
チチブイワガネの獅子葉type、胞子のう群(上右)
イノモトソウの仲間
オオバイノモトソウ、中軸に翼を持つオオバノイノモトソウあるいはアイイノモトソウセフリイノモトソウ、イノモトソウが見られました。
中軸に翼を持つオオバノイノモトソウあるいはアイイノモトソウセフリイノモトソウ
林内の岩場や渓谷沿いの水辺のそばで見られました。
中軸に翼を持つオオバノイノモトソウあるいはアイイノモトソウセフリイノモトソウ(上左、上右)
中軸に翼を持つオオバノイノモトソウあるいはアイイノモトソウセフリイノモトソウ、栄養葉(上左)
中軸に翼を持つオオバノイノモトソウあるいはアイイノモトソウセフリイノモトソウ、胞子葉(上右)
チャセンシダの仲間
トラノオシダ、イワトラノオ、コバノヒノキシダ、サンカクバイワトラノオなどが見られました。
イワトラノオ 内容物が飛び出した後の胞子表面
両側の山が迫る渓谷沿いのウエットな岩場では普通に見られました。
以下の胞子画像では、胞子を観察する際、圧力を加えすぎ、胞子の細胞壁が壊れ内容物(透明な楕円体)が外に出ている。さらに胞子表面を覆う辺縁に鋭い鋸歯を持つ襞が消失している。そのため胞子の形状は普通のイワトラノオと異なって見えてしまっている。2016年12月15日
イワトラノオ、胞子の内容物が飛び出した後と考えられる胞子の上面の突起のようす(上左)
イワトラノオ、胞子の内容物が飛び出した後と考えられる胞子の側面の突起のようす(上左)
イワトラノオ、胞子の内容物が飛び出した後と考えられる胞子の上面のようす(上左)
イワトラノオ、胞子の内容物が飛び出した後と考えられる胞子の側面の突起のようす(上右)
サンカクバイワトラノオ(仮称)イワトラノオ2016年12月15日訂正
付近は、上部が樹冠に覆われた岩場をへつった山道沿いで、コウヤコケシノブなどが生育する岩壁。その岩壁の基部付近に生育。葉の大きさは10~14㎝。葉身の形は披針形、葉の色は黄緑色~鮮緑色、葉の質は薄く柔らかい。2~3回羽状に分かれ、基部の羽片は羽片基部が切形の三角形に近い形になる。小羽片は切れ込みの浅い掌状で先端は鈍頭。胞子のう群は短い線形。胞子の形状は外側表面にリボン状の襞があり襞の辺縁には鋭い鋸歯がある。
今回の観察会で最初発見された方は遠くから見て羽片の形が三角形でオウレンシダのように見えたと話しておられました。
※1項上のイワトラノオの胞子と相当ようすが異なっていたので最初サンカクバイワトラノオ(仮称)とした。その後、1項上のイワトラノオの胞子が不良なものであることが分かり、サンカクバイワトラノオ(仮称)をイワトラノオに訂正した。2016年12月14日
サンカクバイワトラノオ:仮称イワトラノオ、羽片(上左、上右)
サンカクバイワトラノオ:仮称イワトラノオ、胞子:上面から見たようす(上左)
サンカクバイワトラノオ:仮称イワトラノオ、胞子:側面の突起のようす(上左)
サンカクバイワトラノオ:仮称イワトラノオ、胞子拡大:上面から見たようす(上左)
サンカクバイワトラノオ:仮称イワトラノオ、胞子拡大:側面の突起のようす(上左)
標本2
サンカクバイワトラノオ:仮称イワトラノオ、胞子数(上左)
サンカクバイワトラノオ:仮称イワトラノオ、上左画像中心部拡大(上右)
サンカクバイワトラノオ:仮称イワトラノオ、胞子拡大:上面から見たようす(上左)
サンカクバイワトラノオ:仮称イワトラノオ、胞子拡大:側面の突起のようす(上右)
メシダ属の仲間 [#z0c25ef1]
ヤマイヌワラビやヒロハイヌワラビ、ホソバイヌワラビなどが見られました。
ヤマイヌワラビ
山道沿いの林縁で黄緑色の葉が目立つ個体を観察しました。はじめヒロハイヌワラビとヤマイヌワラビとの雑種ではないかと期待したのですが、胞子を調べたところ、形・数とも問題なくヤマイヌワラビでした。
ヤマイヌワラビ、胞子数(上左)
ヤマイヌワラビ、上左画像中心部拡大(上右)
シケチシダの仲間
イッポンワラビと思われるシダが見られましたがハコネシケチシダと区別が難しいです。
ハコネシケチシダイッポンワラビ
胞子は確認していないがハコネシケチシダイッポンワラビと思われる。沢沿いの水辺近くで見られ、脇の沢から崩れて積もった岩屑の周辺に群生。葉柄には淡い褐色、膜質で披針形の鱗片がつく。葉柄は長く葉身と同じくらい。大きい葉は100㎝近くに達っし、葉は卵状楕円形、柔らかい草質、3回羽状にわかれ裂片には浅鋸歯がある。羽軸の付け根の貧弱な肉芽ができるところもある。下部の羽片では基部側で短縮する。羽片基部の小羽片には短い柄があるがそれ以外は無柄。胞子のう群は円形~楕円形、中間~やや辺縁寄りにつく。包膜無し。胞子の形状が円形に近いものも見られたのでイッポンワラビとしたが、イッポンワラビの胞子嚢群は楕円形のものが混ざらずすべて小形の円形なのでハコネシケチシダに訂正した。2019年10月24日
ハコネシケチシダイッポンワラビ(上左、上右)
ハコネシケチシダイッポンワラビ、葉柄の鱗片(上左、上中、上右)
オオシケシダ属の仲間
水辺でシケシダやオオヒメワラビが見られました。
シケシダ
胞子のう群は煎餅の柿の種状、辺縁は巻きこむ。
オオヒメワラビ
オオヒメワラビ、葉柄(上左、上中)
オオヒメワラビ、胞子のう群(上右)
ノコギリシダの仲間
キヨタキシダ
スギ林・緩やかな北斜面の林床に1本ずつ葉を付けたシダの群生が見られました。一見根茎が長く這うタイプのシダに見えました。近づくとキヨタキシダであることが分かりました。気になったので根元を掘って根茎を確かめると根茎は短く這い、葉柄の付け根には次に出る新芽の渦巻きが確認できました。普段なかなか根元を掘ることはありませんが、植物を傷つけない程度に根本を確かめることは必要なことだと思いました。
葉を1枚ずつつけるキヨタキシダの群生(上左)
キヨタキシダ(上右)
キヨタキシダ、葉柄下部(上左)
キヨタキシダ、胞子のう群(上右)
イノデの仲間
ツルデンダ、ヒメカナワラビ、サイゴクイノデ、カタイノデ、アイアスカイノデなどが見られました。ツルデンダ、ヒメカナワラビは林道沿いの日かげの石垣に生育していました。
カタイノデ・サイゴクイノデ
どちらもやや標高の高い(500~550m)スギ・ヒノキ植林地林床に生育していました。
カタイノデ(上左)
サイゴクイノデ(上右)
ヒメカナワラビ
上部は樹冠に覆われた林道沿いの日かげの高い石垣の上部に生育、少数であるが群生し、胞子は全面につけていた。
ヒメカナワラビ(上左、上右)
オシダ属の仲間
標高の低いところではオオイタチシダ(アオニオオイタチシダtype)が見られましたが、あとは標高が上がるとヤマイタチシダのみ、リョウトウイタチシダ、ミサキカグマ、標高600m付近の谷ではオシダなどが見られました。峠付近の石垣にアイノコクマワラビが生育していました。同じ石垣にはクマワラビやオクマワラビも生育していました。
アイノコクマワラビ
クマワラビとオクマワラビの雑種と推定される。胞子をつけていない葉は表面でクマワラビと同じように深く窪む。栄養葉から胞子葉への移行はほとんど葉が短縮することなくなめらかに移行しています。胞子のう群は葉身の上から2/3~1/2程度着けていました。胞子を検鏡していただく機会があり、胞子は不整とのこと。再度訪れ胞子を確認しました。胞子の形状はクマワラビやオクマワラビとは大きく異なり形はひしゃげて不定形で胞子の数も少ない。
アイノコクマワラビ(上左)
アイノコクマワラビ、葉身上部(上右)
アイノコクマワラビ、葉柄の鱗片(上左)
アイノコクマワラビ、葉柄下部の鱗片(上中)
アイノコクマワラビ、新芽(上右)
アイノコクマワラビ、葉身上部、胞子のう群をつける小羽片の葉脈(上左、上右)
アイノコクマワラビ、胞子のう群(上左)
アイノコクマワラビ、胞子のう(上右)
ウラボシ科の仲間
ミツデウラボシ、サジラン、ヒメノキシノブなどが見られました。
サジラン
サジランは水辺近くの木の幹に着生。個体数も多く観察しやすい。葉柄基部は黒く、胞子のう群は広い角度でつき。大きな個体は葉の長さが30㎝近くある。観察しやすい場所なので、観察するだけで標本採集は控える必要があります。
花など
○ミヤマナミキ:滝つぼの周りできれいな花を咲かせていました。
○ピンクのギンバイソウ
ほとんどが純白のギンバイソウでしたが、同行の方がやや明るい谷筋に咲くピンクの花に気づかれ、みんなで撮影しました。遠くからでもわかる色彩でした。
○ヤマアカガエルか
標高500m付近のウエットな苔むした林床で
観察されたシダ
○トウゲシバ
○イヌカタヒバ
○クラマゴケ
○スギナ
○オオハナワラビ、ナツノハナワラビ
○ゼンマイ、オオバヤシャゼンマイ
○コウヤコケシノブ、ウチワゴケ
○カニクサ
○イヌシダ、フモトシダ
○ワラビ
○イワガネゼンマイ、イワガネソウ、ウラゲイワガネ、チチブイワガネ、コダマイヌイワガネ
○イノモトソウ、オオバイノモトソウ
○クジャクシダ
○コバノヒノキシダ、イワトラノオ、トラノオシダ、ミタケトラノオ
○ミゾシダ
○ゲジゲジシダ、ヤワラシダ、ヒメワラビ、ミドリヒメワラビ、ヒメシダ、ハリガネワラビ
○ヌリワラビ
○クサソテツ、イヌガンソク
○イヌワラビ、ニシキシダ、ヤマイヌワラビ、ヒロハイヌワラビ、ホソバイヌワラビ、ヘビノネコザ
○ハコネシケチシダ、イッポンワラビ
○ハクモウイノデ、シケシダ、オオヒメワラビ
○キヨタキシダ
○テリハヤブソテツ、ツヤナシヤマヤブソテツ、ナガバヤブソテツ
○ヒメカナワラビ、イノデモドキ、イノデ、アイアスカイノデ、ツヤナシイノデ、サイゴクイノデ、カタイノデ、ジュウモンジシダ、ツルデンダ
○リョウメンシダ
○オシダ、オクマワラビ、クマワラビ、アイノコクマワラビ、ミサキカグマ、オオイタチシダ(アオニオオイタチシダtype)、ヤマイタチシダ、リョウトウイタチシダ、ベニシダ、オオベニシダ、キヨスミヒメワラビ
○シノブ
○サジラン、ミツデウラボシ、ヒメノキシノブ、ノキシノブ