駿河小山から足柄峠に向かって歩きました。草花を見ながらなかなか距離が進まず、途中で引き返すことになりました。足柄峠の下りはまたの機会に歩きたいと思います。季節柄ハナワラビの仲間が目につきました。
イヌカタヒバ
陽当たりのよいところを好むせいか、川のそばの石垣に群生し、紅葉していました。またこの季節になると側枝の先にカタヒバよりも長い胞子嚢穂をつけ、また松ぼっくり状のむかご(無性芽)をつけ始めています。
(1)イヌカタヒバ、胞子嚢穂
(2)イヌカタヒバ、無性芽(むかご)
アカハナワラビ
アカハナワラビを観察しました。現地では葉の色があまり赤くなかったので雑種ではないかと思いましたが、胞子は正常でした。今年は秋が暖かかったので他の地域でも紅葉するのが遅いようです。
アカハナワラビの胞子の特徴:胞子表面のシルエットはなめらか、表面の凹み(クレーター)は大きい。(ちなみにオオハナワラビの胞子:胞子表面のシルエットは突起は多くデコボコ、表面の凹み(クレーター)は大きい。フユノハナワラビの胞子:胞子表面のシルエットはなめらか、表面の凹み(クレーター)は小さい。)
(1)アカハナワラビ、胞子頂部
(2)アカハナワラビ、胞子側面
(1)アカハナワラビ、胞子頂部
(2)アカハナワラビ、胞子側面
(1)アカハナワラビ、胞子頂部
(2)アカハナワラビ、胞子側面
(1)アカハナワラビ、胞子頂部
(2)アカハナワラビ、胞子側面
(1)アカハナワラビ、胞子頂部
(2)アカハナワラビ、胞子側面
(1)アカハナワラビ、胞子頂部
(2)アカハナワラビ、胞子側面
オオハナワラビ
葉は厚く光沢があり、栄養葉はやや上向き、ロート状(角度の緩い)に中心から葉縁に向かって葉を広げる。羽片・小羽片の辺縁には鋭い鋸歯がある。
オオハナワラビ、栄養葉上部
標本2
(1)オオハナワラビ、栄養葉
(2)オオハナワラビ
オオバノアマクサシダ 幼株
オオバノアマクサシダの幼株を観察。胞子嚢群をつけた成株は見つからなかったが、幼株はいくつか観察することができた。小さな幼株には白い虎斑模様が入り下部羽片では片側小羽片が欠け、シンメトリーではない。それに対してオオバノハチジョウシダの幼株は下部羽片で上側(前側)小羽片が欠けずシンメトリーで、白斑は見られないように思う。)※オオバノハチジョウシダは幼株の観察数が少ないこと、またそれぞれの幼株を栽培して確認していないので、断定するには個体数を多く観察すると共に栽培し観察する必要があると思います。
奈良県 十津川では白い虎斑模様が入らないオオバノアマクサシダと思われる幼株を観察しました。2019年1月2日
ちなみにフィールドでお目にかかる胞子をつける成株での2種の見分け方は、オオバノハチジョウシダ(2倍体有性生殖種)はオオバノアマクサシダ(3倍体無融合生殖種)にくらべて①最下羽片下側(後側)第1小羽片は裂片が両側につきシンメトリーで、且つ②羽片の頂小羽片は短く、発達しない。
ヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツの艶の無い個体)
ヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツの艶の無い個体)
ヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツの艶の無い個体)か。葉は革質で厚みがあり白っぽい緑色。側羽片の幅は広く、頂羽片がやや大きい。羽片の先は真っすぐなものから急に細くなりやや鎌曲するものまで見られ、真っすぐ徐々に細長くなるものはミヤコヤブソテツに間違いやすかった。胞子嚢群や包膜はほとんど飛散しておりはっきりとはわからない。現地ではそのほか、ヤブソテツ(ツヤナシヤマヤブソテツ)やヤブソテツ(ホソバヤマヤブソテツ)が見られた。
参考:照りの強いヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツ)
(1)(2)ヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツの艶の無い個体)頂羽片
標本2 スギ林床に生育
(1)(2)ヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツの艶の無い個体)
ミドリカナワラビ
(1)ミドリカナワラビ
(2)ミドリカナワラビ、葉柄
林道沿い、上部を樹冠に覆われたスギ林林床に生育。葉は光沢があり質は柔らかい革質、葉柄はピンク色お帯びた褐色で下部には赤褐色の鱗片がつく。
ミドリカナワラビ、葉身下部
ミドリカナワラビ、最下羽片後側(下側)第1小羽片
イヌイワイタチシダ
女郎の滝周辺の岩場で見られた。中軸の鱗片は開出してつく。
イヌイワイタチシダ(ピンボケ)
イワシロイノデ
山道沿いに生育。シカに食べられたのか、葉は少ししかつけていません。葉を立ち上げる。
(1)イワシロイノデ
(2)イワシロイノデ、羽片
ツヤナシイノデ
谷の小さな流れのそばに点在して生育していました。こちらはシカに食べられているようすはありませんでした。葉は地面に低く広げていました。
ツヤナシイノデ
観察会に参加された方が持参されたシダ
仙台から参加された方が地元で採集された雑種のイノデの仲間2種を持参されました。ゴテンバイノデ(アイアスカイノデ×イワシロイノデ)とホクリクイノデ(アイアスカイノデ×サカゲイノデ)を紹介します。2種は同じ林内の近くで見つかり、この林にはアイアスカイノデ、イノデ、イワシロイノデ、ツヤナシイノデ、サカゲイノデなどが生育していたそうです。
ホクリクイノデ(サカゲイノデ×アイアスカイノデ)
オシダ科 イノデ属
(1)ホクリクイノデ(写真上)とゴテンバイノデ(写真下)
(2)ホクリクイノデの葉柄(写真上)とゴテンバイノデの葉柄(写真下)
観察された個体の特徴:ホクリクイノデはアイアスカイノデとサカゲイノデの雑種と推定される。葉はやや光沢に欠ける。葉柄基部には幅の広い鱗片も混ざるが、中央に栗色が入る広披針形の鱗片がより目立つ。中軸の鱗片には鋸歯が目立つ。中軸の鱗片は披針形~毛状で基部は一部張り付くようにしてつく。胞子嚢群は辺縁寄りにつく。胞子嚢は弾けずにまとまって残る。
アイアスカイノデに似ているところは①葉柄の鱗片には栗色が入る。②胞子嚢群が辺縁寄りにつく。サカゲイノデに似ているところは①葉柄下部に幅の大きな鱗片をつける。②中軸に披針形~狭披針形の鱗片を貼り付けるようにつけたり左右横向きにつけたりする。
参考画像:鳥海山のホクリクイノデ
(1)ホクリクイノデ、葉柄下部の鱗片(背軸側)
(2)ホクリクイノデ、葉柄下部の鱗片(向軸側)
(1)ホクリクイノデ、葉柄下部の鱗片(背軸側)拡大
(2)ホクリクイノデ、葉柄下部の鱗片(向軸側)拡大
ゴテンバイノデ(イワシロイノデ×アイアスカイノデ)
オシダ科 イノデ属
(1)ホクリクイノデ(写真上)とゴテンバイノデ(写真下)
(2)ホクリクイノデの葉柄(写真上)とゴテンバイノデの葉柄(写真下)
観察された個体の特徴:ゴテンバイノデはアイアスカイノデとイワシロイノデの雑種と推定される。葉はやや光沢に欠ける。葉柄基部~中軸にかけて明るい褐色の鱗片をつけ、葉柄下部では幅の広い鱗片が目立つ。葉柄の鱗片への栗色の入り方には変化が多いが、今回観察した個体では葉柄基部~下部の鱗片には、言われればそれとわかる程度に中央に栗色が入る。葉柄中部~中軸にかけてはほとんど見分けられなかった。鱗片の辺縁には細かい鋸歯がある。中軸の鱗片は広披針形~狭披針形でいろいろな向きにつく。胞子嚢群は辺縁寄りにつく。胞子嚢は弾けずにまとまって残る。
アイアスカイノデに似ているところは①葉柄下部の鱗片にかすかに栗色が入る。②胞子嚢群が辺縁寄りにつく。イワシロイノデに似ているところは①葉柄下部に幅の大きな鱗片をつける。②中軸に広披針形~披針形の鱗片をつける。
(1)ゴテンバイノデ、葉柄下部の鱗片(背軸側)
(2)ゴテンバイノデ、葉柄下部の鱗片(向軸側)
(1)ゴテンバイノデ、葉柄下部の鱗片(背軸側)拡大
(2)ゴテンバイノデ、葉柄下部の鱗片(向軸側)拡大