観察会レポート/平成30年8月12日/箱根 仙石原
箱根 仙石原を歩きました。仙石原はゴルフ場が多いのですがその中に残されている林でシダを観察しました。当日は雷を伴う激しい雨にも見舞われ、一時は中断も考えましたが、雨が小やみになったのを見てみなさんで再び森へ向かいました。
トウゲシバの仲間
スギ・ヒノキが生育する森の中で2種類のトウゲシバを観察しました。この2種は混生はしていませんが近くでお互い同じような環境に生育していました。この森は周辺の山からの湧水で潤っており地質は貧栄養。そのためかトウゲシバの仲間も丈は小さく葉も細い。
普通のトウゲシバ ヒカゲノカズラ科 コスギラン属
火山砂が堆積したような地質。植物体は貧弱であるが、葉は一定の幅が有り普通のトウゲシバ。一帯に広く生育する。
(1)トウゲシバ
(2)トウゲシバ
トウゲシバ 細葉type ヒカゲノカズラ科 コスギラン属
湧水地の林床に群生。個体数は多いが1地点にまとまって生育。
(1)トウゲシバ細葉type
(2)トウゲシバ細葉type、胞子嚢
ハリガネワラビの仲間
ハリガネワラビ ヒメシダ科 ヒメシダ属
軸の太いハリガネワラビ。仙石原の森ではやや普通に見られる。
ハリガネワラビ軸細いtype ヒメシダ科 ヒメシダ属
湧水地内林床に生育。葉柄・中軸は細く直径1㎜前後で、イワハリガネワラビ程度。胞子嚢群は葉身下部では辺縁寄り・中上部では中間につく。包膜上にはイワハリガネワラビと同様に腺毛と少数の毛がつく。現地ではイワハリガネではないかとお話しましたが、胞子を観察するとハリガネワラビかハリガネワラビに非常に近い仲間と言えます。1株のみ確認。
胞子の特徴:胞子数は60個以上あり大きさ・形とも整っていて、有性生殖種。胞子はハリガネワラビに似ているが以下の点で異なる①胞子上面から見た時の襞の模様は太く見える(ハリガネワラビは襞の腺がシャープ)。②胞子表面の襞の側面には小さな穴のようなものが目立つ。
(1)ハリガネワラビ軸細いtype、葉身下部
(2)ハリガネワラビ軸細いtype、葉身中部
(1)(2)ハリガネワラビ軸細いtype、1つの胞子嚢を壊したようす
(1)ハリガネワラビ軸細いtype、胞子側面
(2)ハリガネワラビ軸細いtype、胞子上面
(1)ハリガネワラビ軸細いtype、胞子側面
(2)ハリガネワラビ軸細いtype、胞子上面
(1)ハリガネワラビ軸細いtype、胞子側面
(2)ハリガネワラビ軸細いtype、胞子上面
(1)ハリガネワラビ軸細いtype、胞子側面
(2)ハリガネワラビ軸細いtype、胞子上面
ホソバイヌワラビの仲間
どちらもウエットで薄暗い林床に生育。トガリバイヌワラビは3株程度で、根元は湧水地の水に半分浸かりながら生育。
ホソバイヌワラビ メシダ科 メシダ属
ホソバイヌワラビ
トガリバイヌワラビ メシダ科 メシダ属
(1)(2)トガリバイヌワラビ
シケシダの仲間
フモトシケシダ メシダ科 シケシダ属
標本1
最下羽片は特に発達していなかった。包膜は胞子を包み込むようにしてつき、辺縁には弱い鋸歯がある。特に包膜上の毛は確認できない。
(1)フモトシケシダ
(2)フモトシケシダ、葉身裏側
(1)フモトシケシダ、胞子上面
(2)フモトシケシダ、胞子側面
(1)フモトシケシダ、胞子上面
(2)フモトシケシダ、胞子側面
標本2
最下羽片は特に発達していなかった。包膜は胞子を包み込むようにしてつき、辺縁には弱い鋸歯がある。包膜上には突起のようなものが確認できる。
フモトシケシダ
(1)フモトシケシダ、葉柄上部
(2)フモトシケシダ、羽片下部
(1)フモトシケシダ、胞子上面
(2)フモトシケシダ、胞子側面
(1)フモトシケシダ、胞子上面
(2)フモトシケシダ、胞子側面
ホソバシケシダ メシダ科 シケシダ属
葉身の大きさは20~25㎝。胞子を包む包膜の端は葉面に扁平に広がり、辺縁には弱い鋸歯がある。
標本1
(1)ホソバシケシダ
(2)ホソバシケシダ、羽片裏側
(1)ホソバシケシダ、胞子上面
(2)ホソバシケシダ、胞子側面
(1)ホソバシケシダ、胞子上面
(2)ホソバシケシダ、胞子側面
標本2
ホソバシケシダ
(1)ホソバシケシダ、胞子上面
(2)ホソバシケシダ、胞子側面
(1)ホソバシケシダ、胞子上面
(2)ホソバシケシダ、胞子側面
タマシケシダ メシダ科 シケシダ属
タマシケシダを観察しました。シケシダとフモトシケシダの雑種と推定されます。観察会最初にゴルフ場や別荘が立つ林の周辺の道端で出会いました。参加者のみなさんで「これはただのシケシダですね」と言いながら一応葉を採取して持ち帰りました。持ち帰って胞子を見ると、どれも乱れていて雑種であることが分かりました。特徴は①林内・林縁に生育するが葉の幅・長さ・質感・毛の少なさなどシケシダと酷似する(シケシダは畑や水田の周辺、明るい環境に生育)。②包膜の辺縁はフモトシケシダに似て細裂する(シケシダの包膜の辺縁は全縁)。③包膜上は無毛のもの、突起状のものがあるもの、毛のようなものがあるものなどが見られました。④最下羽片がやや発達していました(シケシダでもよく見られること)。
現地で生えていたシケシダの仲間はシケシダ・フモトシケシダ・ホソバシケシダの3種でしたので、シケシダ×フモトシケシダの掛け合わせと考えタマシケシダとしました。むずかしい。
(1)群生するタマシケシダ
(2)最下羽片がやや発達するタマシケシダ
標本1
(1)(2)タマシケシダ、1つの胞子嚢を壊したようす
標本2
(1)(2)タマシケシダ、1つの胞子嚢を壊したようす
ホソバフモトシケシダ メシダ科 シケシダ属
ホソバシケシダとフモトシケシダの雑種と推定される。胞子の状態を見るまでフモトシケシダではないかと思っていた。葉身が細長いのでホソバフモトシケシダとした。フモトシケシダに似ており強いて違いを上げれば胞子葉の葉身(40~50㎝)が大きいこと。
ホソバフモトシケシダ
(1)ホソバフモトシケシダ
(2)ホソバフモトシケシダ、羽片
(1)(2)ホソバフモトシケシダ、一つの胞子嚢を壊したようす
(1)(2)ホソバフモトシケシダ、一つの胞子嚢を壊したようす
オシダ属の仲間
胞子嚢群の大きなベニシダが群生。その他キノクニベニシダ、ホソバナライシダ、イヌイワイタチシダ、タニヘゴなどが生育。
タニヘゴ オシダ科 オシダ属
(1)(2)タニヘゴ
ウラボシ科の仲間 [#p34415be]
仙石原はカルデラ内にあり、年間を通して湿度が高いためか、いたるところにヒメコケシノブが生育している。数は少ないがヒメトガリバノキシノブあるいはアシガラノキシノブ、オシャグジデンダも見られた。
ヒメトガリバノキシノブあるいはアシガラノキシノブアシガラノキシノブ
ウラボシ科 ノキシノブ属
※アシガラノキシノブをヒメトガリバノキシノブあるいはアシガラノキシノブに訂正いたします。2019年7月3日
ヒメノキシノブとノキシノブの雑種と推定される。周辺にはヒメノキシノブが多く、よく見ないと通り過ぎてしまうが、目のいい方が目ざとく発見。まだ胞子の状態を観察してない。
ヒメトガリバノキシノブあるいはアシガラノキシノブアシガラノキシノブ
(1)(2)ヒメトガリバノキシノブあるいはアシガラノキシノブアシガラノキシノブ
オシャグジデンダ ウラボシ科 エゾデンダ属
(1)(2)オシャグジデンダ