スギ樹幹に着生するホソバコケシノブか
今回観察したホソバコケシノブは、屋久島黒味岳のホソバコケシノブによく似ていて、中軸・羽軸の翼が波打ち葉身全体が縮れた感じがします。変わったホソバコケシノブです。わずかに胞子のう群をつけていたので、胞子数などを数えようと思ったのですが、不充実な胞子のうばかりでした。スギ樹幹に生育しているため乾燥気味な環境でこのような形態になったとも考えられます。改めて、よい季節に再訪したいと思います。よく見るホソバコケシノブは社(やしろ)周辺のウエットな岩壁に普通に見られますが、この形態の株は少ない(確認できたのは1地点)ので、出会われてもできるだけ採取はお控えください。
①樹幹に着生するホソバコケシノブか
キヨスミコケシノブ
大雄山では見られるが、ほかではなかなか観察することができない。
①②樹幹に群生するキヨスミコケシノブ
③キヨスミコケシノブ、中軸上の毛
④キヨスミコケシノブ、裂片の端は全縁・包膜の端は鋸歯縁
フモトカグマ
参道周辺にも群生するが、北側の沢沿いの林でもよく見られた。
アマクサシダ
アマクサシダは静岡~埼玉で観察されたが、湯河原‐小田原周辺が最もよく見られるようである。
①乾燥した林床の崖に生育するアマクサシダ
オオバノアマクサシダ
オオバノアマクサシダ羽片の先端の小羽片(頂小羽片)が発達する。
①スギ林林床に大きな葉を広げるオオバノアマクサシダ
タニイヌワラビ
ヤマイヌワラビの仲間はヤマイヌワラビ以外にヒロハイヌワラビ、タニイヌワラビが生育していた。
常緑性のタニイヌワラビは以前は参道沿いでも見られたが、北側の森で出会うことができた。
①林床に生育するタニイヌワラビ
②タニイヌワラビ、胞子のう群
シロヤマシダか
参道沿いではシロヤマシダが群生するが、鱗片の多い個体は北側の森で観察された。
緩やかに北に傾斜するスギ植林地林床に群生する。葉柄基部には黒褐色の鱗片が貼りつくようにつく。胞子のう群は短く中間につきコクモウクジャクの胞子のう群の付き方に似る。
①スギ林床に群生するシロヤマシダか
②シロヤマシダか、葉柄基部の鱗片
ヒカゲワラビ
参道沿いにもみられるが、周辺の森でも観察された。
ナガバヤブソテツモドキか
林内の石垣に生育。すぐそばにはナガバノヤブソテツやテリハヤブソテツが生育していた。テリハヤブソテツの羽片の幅が広い個体かもしれないので、改めてよい季節に訪れて胞子を観察してみたい。
①林内の石垣に生育するナガバヤブソテツモドキか
②ナガバヤブソテツモドキか、羽片の先
オオタニイノデ
この辺りの森ではイノデ・アイアスカイノデ・アスカイノデ・イノデモドキ・サイゴクイノデなどが見られる。雑種と思われるものはオオタニイノデ以外にドウリョウイノデが見られた。
観察会では最初、胞子のう群のようすをよく確認せず、アイアスカイノデではないか、と話していましたが、同行の方に胞子のう群が固まっていることを指摘され、改めてよく見てオオタニイノデであることがわかりました。
①林内に生育するオオタニイノデ
②オオタニイノデ、葉身
①オオタニイノデ、葉柄基部の鱗片
②オオタニイノデ、葉柄上部の鱗片
サクライカグマ
オシダ属の仲間はベニシダ・オオベニシダ・トウゴクシダ・キノクニベニシダ・ミサキカグマ・サクライカグマ・ナガバノイタチシダ・ヤマイタチシダ・オオイタチシダ(厚葉型・アオニ型・艶無し型)・ヒメイタチシダなどが見られた。
サクライカグマはこの辺りではあまり多くはないがときどき出会うことがある。それほどウエットではない林に生育。三角形で白緑色の葉、最下羽片の葉柄は長く特徴的なシダ。
①それほどウエットではない林に生育するサクライカグマ。
②サクライカグマ、最下羽片
ヒメイタチシダ
イタチシダの仲間はヤマイタチシダ、オオイタチシダ(厚葉型・アオニ型・艶無し型)、ヒメイタチシダが観察された。
ヒメイタチシダはそれほどウエットではない林床に生育。葉身はやや長めの五角形。葉柄基部の鱗片はほぼ黒色・やや幅のある披針形。
オオイタチシダ厚葉型
オオイタチシダ厚葉型は、林内の土壌性の崖や岩場に生育。小羽片の先に鋸歯が顕著
標本1
①林床の斜面に生育するオオイタチシダ厚葉型
標本2
④林床の斜面に生育するオオイタチシダ厚葉型
⑤オオイタチシダ厚葉型、小羽片の先
参考 イワオオイタチシダ:奥多摩古里
オオイタチシダ厚葉型と大変よく似ているので比較のために掲載した。岩壁や岩が露出する崖に生育する。土壌性の林床には生育しない。
①②岩壁に生育するイワオオイタチシダ